琉球大学大学院研究科 皮膚病態制御学講座・皮膚科 高橋 健造 教授

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地域独自の皮膚疾患に臨床、研究で挑む

【たかはし・けんぞう】 北海道札幌南高校卒業1986 京都大学医学部卒業 1993 米ジョンス・ホプキンス大学留学 1997 京都大学皮膚科講師 2010 琉球大学大学院研究科皮膚病態制御学講座・皮膚科准教授 2016 同教授

 沖縄本島、南西諸島など広い地域の医療を担う琉球大学の皮膚病態制御学講座では南国ならではの皮膚疾患も多く扱う。高橋健造教授にその取り組みについて聞いた。

◎女性医師が働き続ける文化がベースに

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 当科は皮膚に関する全ての疾患に対応します。南国のため紫外線などによる悪性腫瘍のリスクも高く、皮膚の外科手術も多数手がけています。

 現在医局員は約25人と地方大学の割には恵まれています。本学医学部の場合、県内出身者の医学生が6、7割を占めます。そのほとんどが卒業後も琉球大学を含め県内の病院に残りますので現在のところ毎年、入局者がいます。大学で働く皮膚科医の人数が、ある程度保たれているおかげでみんな、自身が興味のある分野を選んで臨床も研究も極めていくことができ、モチベーションも維持できます。

 若い医局員の半数は女性。沖縄には結婚、出産後も働き続ける文化があります。医局員も、「自分たちも祖父母に育てられたので、子どもを祖父母に預けて働くことが自然なこと」だと語ります。

 育休からの復帰後には時短勤務も取り入れています。その際、医局に子連れで通えるよう専用スペースを確保。女医さんが研究や病棟の仕事などをしている間は、医局の秘書が様子を見守るなどサポートしています。2017年は当科の医局員13人に子どもが生まれました。国内の皮膚科医局では一番多かったのではないでしょうか。

 現在、宮古島、与論島与那国島、久米島には若手医師が中心となり、定期的に「出張診療」にも出かけています。離島には皮膚科開業医、皮膚科専門医がいない島もあります。出張することで、患者さんが大学病院に来る時間や経済的な負担を減らし、住民の健康を守らなければなりません。

◎皮膚がんが多発カポシ肉腫は100倍も

 当科は皮膚がんを多く扱っているのが特徴の一つです。高齢化で全国的にも、皮膚がんが増加していますが、当科の場合、年間約400件は外科手術をしています。

 紫外線によるもの、ウイルスに関係するものなど、その原因も多岐に渡ります。

 中でも注目されるのがカポシ肉腫や血管肉腫の発症が国内の沖縄県以外の地域と比較するとかなり多いこと。われわれの調査ではこの30年で、カポシ肉腫は本土と比較すると100倍余り、血管肉腫は5倍という高い数値で発症していることがわかりました。

 カポシ肉腫はヘルペスウイルス8型(HHV8)が引き起こす血管腫瘍です。カポシ肉腫の病型には古典型、エイズ関連型などの種類があります。先進国で見られるカポシ肉腫はエイズ関連型ですが、沖縄県で発症している多くの患者さんは高齢者で、昔からある古典型です。

 住民がどの程度、HHV8感染しているかを調べると、本土に比べその感染率は10倍程度とかなり多い。感染している人すべてが発症するわけではありませんが、この感染率の差が何によって起こるのかは不明です。沖縄県と本土の人間はゲノムが違うため病気の質が違うのではないかと見ています。疾患発生のメカニズム解明は当科の研究テーマの一つです。

 血管肉腫は、近年先進国で増えており、皮膚科医の間では問題視されています。原因不明で、原因がウイルスなのどうかも分かっていません。

 沖縄県では高齢者に多く発生し、診断後1年半程度で亡くなる方が多いという、予後が大変厳しい疾患。症状は頭部にできる紅斑から始まり、血管からの出血、そして出血性の死亡に至ります。ここ数年は沖縄県で年間5、6人が発症しており、人口比で考えると他地域に比べ大変多い。以前勤務していた京都大で診る血管肉腫の患者は2年に1人程度の発症。

 現在のところ特効薬はなく放射線や化学療法での治療が主です。免疫療法の研究など今後の研究が急がれます。

◎薬剤抵抗性アタマジラミ症の拡大

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 沖縄県で課題となっているのが「薬剤抵抗性アタマジラミ症」の拡大です。命に関わるというわけではありませんが、子どもから感染し、家族にうつることもあります。かゆみがありますので、掻くことで皮膚の炎症が起きたり、ストレス、不眠が起きたりすることも。また、沖縄では夏になるとプール開きの前にアタマジラミの検査。感染していると水泳には参加できませんので教育面にも影響します。

 本土ではアタマジラミの感染は医薬部外品で治療できます。しかし、本県では医薬部外品が効かない薬剤抵抗性アタマジラミの感染が広がりつつあります。

 実は世界的に見ると耐性のあるアタマジラミが主流で沖縄が世界の標準。本土は、これまで他国から離れていたので薬剤でも十分対応できたのです。

 最近、本土のアタマジラミにも沖縄と同じ抵抗性が出始めていることがわかっています。各地域の皮膚科医にアタマジラミを送ってもらい確認すると、遺伝子が沖縄のものと同じだったのです。

 欧米では新たな薬が複数販売されましたので駆除できる体制ができています。しかし、わが国では今のところ厚労省がこれらの薬の認可をしていません。沖縄県では、医薬部外品が効かないことがわかっていますので今のところ、アタマジラミ用のくしで子どもの髪に付いた卵を取り除くという対策しかできません。

 しかし、近年外国人旅行客も増加しています。このままでは本土にも薬剤抵抗性のアタマジラミが広がる可能性もあるのです。

 当科では、抵抗性アタマジラミの駆除ができる薬剤の治験にも携わり、国内への導入に向けて働きかけております。今後は、手遅れにならないうちに国が少しでも早く、抵抗性のアタマジラミへの対策を打ち出してほしいと期待しています。

琉球大学大学院研究科 皮膚病態制御学講座・皮膚科
沖縄県西原町上原207
TEL:098-895-3331(代表)
http://w3.u-ryukyu.ac.jp/ dermatology/


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