琉球大学大学院医学研究科 女性・生殖医学講座 青木 陽一 教授

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より良い環境を整備するために

【あおき・よういち】 1984 新潟大学医学部卒業 同産婦人科入局 1991 米国ハーバード大学マサチューセッツ総合病院MGH Cancer center 2001新潟大学医学部産婦人科講師 2006 琉球大学医学部女性・生殖医学講座教授

 琉球大学女性・生殖医学講座では産科・婦人科医療の中でも特に腫瘍、生殖内分泌、周産期医療に注力している。

 青木陽一教授に沖縄県の産科・婦人科医療の現状や講座の特徴などを聞いた。

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◎沖縄県の産科・婦人科医療事情

 沖縄県の人口10万人あたりの産科・婦人科医師数は全国平均より高いのですが、問題は地域間の医師偏在です。県南部は充足しているが、北部や離島は不足している状況です。

 この地域偏在を解消するべく、沖縄県立北部病院(名護市)、石垣島にある沖縄県立八重山病院(石垣市)という県北部と離島の病院に今年から教室員を派遣しています。

 地域連携が比較的スムーズなのも沖縄県の産科・婦人科医療の特徴でしょうか。沖縄県は本土と違い、対応できないからといって患者さんを他県に搬送することは困難です。「絶対に県内で医療を完結しなければ」という意識が強く、それがスムーズな地域連携へとつながっているのかもしれませんね。

◎子宮頸がんを減らすために

 沖縄県は子宮頸がんの罹患率、死亡率が毎年、全国ワースト3に入っています。当院は沖縄県がん診療連携拠点病院ですし、このような状況は早急に改善しなければと考えています。

 検診率は全国平均より高いのですが、20代から40代の子宮頸がんの高発症世代の受診率が低いことが問題です。

 この世代にもっと検診を受けてほしいとの思いで、毎年9月に子宮頸がん検診を推進するための市民公開講座を開催しています。

 地道な啓発を続けて受診率をさらに高め、子宮頸がんになる患者さんを1人でも減らすことが私たちの願いです。

 2013年、厚生労働省はHPVワクチン(子宮頸がん予防ワクチン)の積極的接種勧奨の中止勧告をしました。摂取後に一部の方に疼(とう)痛などの副反応が出たというのが、中止勧告をした理由です。しかし、日本産科婦人科学会の研究では、ワクチンと副反応の因果関係を示す科学的根拠が得られていません。

 このような日本の状況に対し、WHO(世界保健機関)は、日本を名指しで非難しています。

 HPVワクチンの接種は子宮頸がん予防のために必須です。日本産科婦人科学会では、副反応で苦しむ方に万全の対応をした上で、接種再開を望むとの理事長声明を出しましたし、多くの産婦人科医も早期の再開を望んでいます。

◎広がる治療の選択肢

 2014年に子宮頸がんの妊婦さんに対し、胎児を残したまま子宮頸部を切除し、子宮体部と膣をつなぐ手術をしました。国内では大阪大学に次ぐ2例目の手術です。手術は成功。患者さんは5カ月後に無事出産しました。

 通常、妊娠中に子宮頸がんになると子宮を全摘出する必要があります。そうするとその時のお子さんだけでなく将来の妊娠もあきらめるしかありません。

 他の方法としては、がん進行リスクを承知で、出産するまで待つか、抗がん剤を投与するしか方法がありません。ただ、抗がん剤の胎児への影響の有無は、はっきりわかっていません。

 手術の場合は、そうしたリスクはありません。妊娠中に子宮頸がんが見つかった場合の治療の選択肢が広がったと言えるのではないでしょうか。

◎周産期、生殖内分泌領域の取り組み

 当院の周産母子センターは地域周産期母子医療センターに指定されています。24時間体制で切迫早産、産科救急に対応しています。もし早産した場合は、NICU(新生児集中治療室)でケアを実施します。また他科と連携し、疾患を合併した妊婦への対応をしています。

 生殖内分泌領域では、できるだけ自然妊娠に近い形の妊娠を目指しています。どうしても妊娠が難しい場合は、体外受精をメインにした生殖補助療法を実施しています。

◎女性医師支援

 現在医局員は24人。そのうちの約7割は女性。20代、30代が中心で特に生殖内分泌領域は全員が女性です。

 常時4、5人の医師が産休、育休を取得しています。私はそんな人たちに「出産しても必ず仕事に復帰してほしい」と言っています。

 10年ぐらい前は、復帰後、外来で時短勤務する方が多かったのですが、最近はサブスペシャルティ取得を目指したり、大学院に進んで研究に励んだりする人が増えました。みなさんバイタリティーにあふれていて、われわれ男性医師も「がんばらねば」という気持ちになりますね。

 教室員にはいつも「患者さんの近くにいてよく話を聞いてください」「診断、治療に関して絶えず疑問を持って、分からないことは自分で調べて、どうしても分からなければ聞いてください」と言っています。

 患者さんに寄り添うこと、探求心を持つことは医師としての基本です。そんな医師を1人でも多く育てることが私の使命だと感じています。

◎課題解決のために

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 かつて沖縄県は「健康長寿の県」として知られていました。しかし、近年は、食生活や生活習慣の変化により、肥満率が増加しています。

 妊婦さんの中にも肥満によるⅡ型糖尿病の人が目立つようになってきました。そうした方への対応が今後の課題となってくるでしょう。

 妊婦健診を一度も受けずに出産する人が多いのも、沖縄県の周産期医療の特徴だと言えるでしょう。特に沖縄北部地域でその傾向は顕著です。また低出生体重児の出生率も沖縄県は全国ワースト1位です。

 これらの問題の解決を目指して、私たちは調査・研究を進めています。沖縄県内の産婦人科医療の環境を良くすること。それが私たちに課せられたミッションだと思っています。

琉球大学大学院医学研究科 女性・生殖医学講座
沖縄県中頭郡西原町上原207
TEL:098-895-3331(代表)
http://www.ryukyu-obgyn.jp/


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