大阪市立大学大学院医学研究科 呼吸器内科学 平田 一人 教授

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患者と一緒に病気と闘う

【ひらた・かずと】 1978 大阪市立大学医学部卒業 1979 同大学院第一内科学1専攻 1983 同助手 1987 カナダシャーブルック大学医学部薬理学教室ポスドク(文部省在外研究員) 1996 大阪市立大学医学部第一内科学教室(現:大阪市立大学大学院医学研究科呼吸器内科学)講師 1999 同助教授2006 同教授 2012 大阪市立大学病院副院長

 「肺がんや気管支喘息(ぜんそく)・COPD(慢性閉塞性肺疾患)といった特定の疾患だけでなく、呼吸器疾患全般を診ることのできる、オールラウンドプレイヤーを育成したい」と語る平田一人教授。「患者さんのために」新しい治療法や診断法を追究し続ける医局の今後の展開を聞いた。

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―患者さんの傾向を教えてください。

 外来は気管支喘息やCOPDの患者さんが中心です。肺がんや間質性肺疾患、呼吸器感染症、慢性呼吸器不全も多く見られます。

 入院で見ると、呼吸器内科の病床46床のうち約8割は肺がん患者が占めています。

 当院は、2011年に睡眠センターを開設し、われわれ呼吸器内科と耳鼻咽喉科、内分泌・骨・リウマチ内科の3科が協力し、睡眠時無呼吸症候群(SAS)を専門とした診断と治療に取り組んでいます。

 患者さんは夜間に息が止まる、昼間の極度の眠気、いびきが大きい、仕事効率の低下などの症状を自覚したり、家族に指摘されて来院されます。1泊2日で終夜睡眠ポリソムノグラフィー(PSG)検査をおこない、診断、治療へとつなげていきます。

 糖尿病、高血圧といった生活習慣病や、虚血性心疾患、脳血管障害などを合併して発症し、相互に悪化させている場合が多いため、他科と連携して診断をできるのは当センターの大きな強みです。

―医局の特徴は。

 30年ほど前から、主にCOPDの患者を対象として、薬物療法や在宅酸素療法、運動療法を含めた呼吸器リハビリテーションにも力を入れています。

 COPDが重症化すると、呼気が十分に排出されず、息苦しさを助長するため、ゆっくり長く息を吐く呼吸法などを、理学療法士による指導や教材のビデオで学びます。

 入浴や着替え、ちょっとした階段を登ることもきついという重症の方には、息を吐きながら軽めの運動をしていただきます。

 当医局の外来医師は全員が呼吸器専門医の資格を持ち、呼吸器疾患に関するあらゆる検査が可能です。

 診断名がつかないまま紹介されてくる患者さんの場合は、それまでの治療法や薬剤を確認し、適切な診断を下します。

 特に肺がんでは、組織を採取して遺伝子変異の有無を把握し、分子標的治療などを導入しています。

 また、当医局では約40年前から、気管支喘息の治療法として減感作療法を取り入れています。ごく少量の抗原を皮下注射することでアレルギー反応を抑制する欧米では一般的な治療法ですが、国内で実施している医療機関は多くありません。

 アナフィラキシーを起こすリスクがある治療ですが、われわれは注射の位置や薬剤の量などを慎重に判断し、安全性に配慮して治療を進めてきました。

 国内でも近年、花粉症に対する舌下免疫療法や小児の食物アレルギーへの経口減感作療法などが広がってきています。

―国立がん研究センターの調べでは肺がんの5年生存率は39・1%。

 保険適用の分子標的治療が普及したことから、予後は良好になってきました。

 1970年代後半には手術ができない肺がんの患者さんの5年生存率はほぼゼロでしたので、非常に良くなっていると言えます。

 その他、外科手術の技術が向上したことで安全性や確実性が確立しつつあることや、検診の精度が向上したことで早期にがんを発見することができるようになったことも影響しているでしょう。がん細胞の増殖を促す特定のドライバー遺伝子やがん抗原に対し、免疫寛容が起こっていないかを分子マーカーで調べた上で、手術や化学療法、放射線治療、免疫療法など集学的に施しますので、患者さんの満足度は高いと思います。

―2008年に始まった「大阪呼吸器疾患診療ネットワーク」はどのような取り組みなのでしょう。

 主に大阪市阿倍野区医師会所属の開業医との病診連携です。呼吸器の分野は全国的に専門医が少なく、消化器や循環器の専門医の数と比べても2分の1程度。呼吸器疾患をきちんと診ることのできる開業医は多くありません。

 そこで、呼吸器疾患についての知識の底上げと標準化を目的として始めました。

 年に2回、近隣の開業医約80人を集め、紹介患者に関するトピックス、治療法、新しい診断法の知識、ガイドラインに関する特別講演といった内容で開催しています。

 このネットワークに限らず、今後一層、近隣の開業医と、病診連携を通して互いに理解を深め、協力しあえたらと思っています。

―若い医師に求めることは。

 呼吸器分野の中でも、肺がんだけ、気管支喘息・COPDだけというのではなく、呼吸器疾患全般をオールラウンドに診ることのできる医師になってもらいたいと思います。

 呼吸器疾患全般を、ある程度、臨床で診ることができるのが大前提であり、プラスアルファで、自分が見つけた問題点を実験や研究を通して学術的に追究してほしいと思います。

 さらに言えば、医療は患者を助けるためにあるということを、常に念頭に置いていてほしいですね。患者と一緒に病気と闘う。その志を忘れてほしくはありません。

―そのほか、トピックは。

 7月、和歌山県立医科大学呼吸器内科・腫瘍内科と共同で「大阪・和歌山呼吸器疾患合同セミナー」を始めました。

 研究面では共同で次世代シーケンサーを用いて、耐性化を起こしている遺伝子の解析を進めています。

 この研究により酸化ストレスを受けやすい体質の人はCOPDから肺がんになりやすいことが分かりました。今は肺がんの研究だけですが、今後は肺がん以外の領域にも広げていきます。

 2018年4月27日(金)〜29日(日)に大阪国際会議場などで開かれる第58回日本呼吸器学会学術講演会の会長を務めます。

 海外から多数のゲストを招いての講演やシンポジウムのほか、各関連学会とのコラボレーション企画、本大学院卒業生でもある京都大学iPS細胞研究所所長の山中伸弥教授による基調講演も予定しています。

 参加者がさまざまな刺激を受けることができる、実りの多い学会にしていきたいと考えています。

―最後にメッセージをお願いします。

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 当院はあべのハルカス21階に「MedCity21」という健診施設を設けています。

 健診施設の医師の数は1人〜2人が一般的ですが、当施設は8人で、呼吸器内科、消化器内科、肝胆膵内科、生活習慣病、産婦人科、乳腺外科の専門医が常駐。検査の結果は、複数の医師でチェックしています。

 大阪市の施設なので健診費用も比較的安価です。大阪府の健康寿命は47都道府県中43位(2013年現在)と全国的に低いのが実情。肺がんもCOPDも保険適用のCT検査で早期に発見することができるので、定期的に受診してほしいですね。

大阪市立大学大学院医学研究科 呼吸器内科学
大阪市阿倍野区旭町1-4-3
TEL:06-6645-2121(代表)
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/kokyuki/


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