大阪市立大学大学院医学研究科 整形外科学教室 中村 博亮 教授

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的確な診断と小侵襲手術

【なかむら・ひろあき】 大阪府立大手前高校卒業 1983 大阪市立大学医学部卒業 同附属病院研修医 1989 同大学院医学研究科外科学専攻整形外科学修了 英国ロンドン大学附属ハマースミス病院留学 2001 大阪市立大学大学院医学研究科臨床医学専攻感覚・運動機能医学大講座整形外科学助教授 2002 オーストラリア・アデレード大学クイーンエリザベス病院spinalfellow 2009 大阪市立大学大学院医学研究科整形外科学教室教授 2012同附属病院病院長補佐 2015 同副院長

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◎医局の特徴

 整形外科は頚部から下の運動器の障害を治療し、機能を再建する診療科で、守備範囲が広いことが特徴です。関節外科、脊椎外科、骨軟部腫瘍外科、上肢外科、小児整形外科、リウマチ外科、スポーツ整形外科、リハビリテーションなど、多岐に渡ります。当教室には、すべての領域において高い専門性を持つ医師が在籍しています。

 新専門医制度は、一つの病院だけではなく、多くの病院をローテーションしながら、さまざまな疾患を経験できるシステムになっていますが、われわれの教室では以前からローテーションシステムを導入しています。

 8年前に教授に就任した際、次の項目を重視しました。診療や研究における「多様性」と「独創性」、自身で責任を持って物事を遂行できる「自主性」、約束事やルールを守ることができる「自律性」、さらには昨今のグローバリゼーションに対応できる「国際性」です。

 中でも国際性には特に力を入れており、教室全体の英語力アップを目的に、週に一度の英語の聞き取りテストと大学院入学時のTOEIC受験を必須にしました。海外からの医学部実習生や大学院生の積極的な受け入れ、海外留学などにも取り組んでいます。

 最近の学生は、優秀な人が多いわりに、自発的に何かしようという人が少ないように感じます。もっと自主性や積極性を持って学んでほしいですね。

 また、人と直接コミュニケーションを取るのが苦手な人が多いようにも感じます。医療職は人を相手にする仕事です。医学の知識や技術だけでなく、患者さんや同僚と円滑なコミュニケーションを取ることの重要性も教えていきたいと思います。

◎高齢化と整形外科疾患

 私の専門である脊椎外科領域では、顕微鏡や内視鏡を用いた小侵襲手術に取り組んできました。

 近年は高齢者の脊椎疾患が増加しています。昔は患者さんの体へのダメージを考慮して、70代以上の患者さんに手術をするケースは多くありませんでした。

 しかし、医学の進歩によって、命にかかわるような内臓疾患が、ある程度コントロールできるようになり、寿命が延びたことから、運動器の機能障害や痛みの改善にスポットが当たるようになりました。医療機器や手技の進歩もあり、健康寿命の延伸を目的として70代以上、特に80〜90代の整形外科手術の件数が増えています。

◎医師になった理由

 私の父は内科の開業医をしていました。幼いころからその背中を見て育ったので、早い時期から医師を志していました。整形外科を選んだきっかけは、学生時代に椎間板ヘルニアの手術を受けたこと。これが大きく影響しています。

 私の腰には約12cmの手術の痕が残っています。手術後はあおむけのまま絶対安静で、3週間ベッドの上で過ごさなければなりませんでした。

 学生時代、私はラグビー部でした。ヘルニアを治して「早くラグビーをしたい」という気持ちで手術を受けました。しかし、入院中に筋力が落ちたことや、手術前のような動きができなくなったことから、術後、競技復帰は叶わなかったのです。

 手術をすればすぐに良くなるだろうと思っていたのに、手術をしたことによってラグビーができなくなってしまった。そのことに矛盾を感じ、脊椎外科に興味を持ちました。

◎椎間板ヘルニア

 現在、椎間板ヘルニア手術の所要時間は1時間程度。傷口は2cmほどで済み、遅くとも翌日には起き上がることが可能です。

 また、最近では治療をしなくても椎間板ヘルニアが体内で吸収されていくケースがあることが分かったため、手術の適応範囲も変わりました。

 神経の圧迫によって下肢の麻痺(まひ)や、排尿が困難な場合には手術適応になりますが、痛みだけの場合は、薬や神経ブロック療法などで経過を観察することになります。

 脊椎にかかわる手術は、神経に触れるので、他部位と比べると危険性が高いものです。手術で良い結果を出すためには、何よりも診断が重要になります。特に脊椎の場合は症状の発現にかかわる責任部位の診断が不適切だと、いくら高い技術を持っていても良い結果にはつながりません。

 私は自分が手術を経験しているので、手術前後の患者さんのつらさや不安な気持ちがよくわかります。昔に比べると手術のダメージは少なくなったとはいえ、患者さんの予後を考慮し、できるだけ手術をしなくても済む方法を考えながら診療しています。

 私がそうだったように、「手術をすればすぐに治る」という感覚を持つ方が多いと思います。でも、メスを入れることで組織は損傷します。修復にある程度の期間がかかりますし、傷んだ神経が完全に元に戻ることもありません。

 高齢の患者さんの中には、若いころの自分をイメージされて、手術をすればそのときと同じ状態に戻ると思われる方もいらっしゃいます。でも、そう思い通りにはいきません。医学が進歩したからといって加齢による運動機能の衰えまではカバーしきれないのです。その辺りの事情を患者さんに理解していただくためにも、インフォームドコンセントを重視しています。

◎女性医師の育成

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 整形外科というと、金づちやのみで骨を削るといったイメージが強く、力が強くないと勤務が難しいと思われがちでした。しかし、最新の医療機器を使えばそれほど力は必要ありません。

 これまで女性には敬遠されがちだった整形外科のイメージを払拭(ふっしょく)し、専門医を増やしたいと考えています。

 現在、当教室には子育て中の女性医師もいます。周囲に気兼ねすることなく仕事ができるように、妊娠、出産からお子さんが小学校に入学するまでの期間は夜間の当直を免除し、勤務時間は午前9時〜午後5時と定めるなど、マニュアルを作りました。この取り決めを教室院全員に周知し、周囲からの不満がでないように心がけています。

 具体的にどういう仕組みを整えれば、子育て中の女性医師が専門医を取得し、その資格を維持することができるのか。試行錯誤しながら、全面的にバックアップする仕組みを構築中です。

大阪市立大学大学院医学研究科 整形外科学教室
大阪市阿倍野区旭町1-4-3
TEL:06-6645-3611(代表)
http://www.med.osaka-cu.ac.jp/orthoped/


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