医療法人愛善会 由良病院 佐藤 由樹 院長

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精神科を核に全人的医療を提供

【さとう・よしき】 岡山県立岡山操山高校卒業 1991 鳥取大学医学部卒業 1992 広島市立広島市民病院 1996 岡山大学大学院医学研究科(精神神経病態学)卒業 エイジーン研究所 1998 香川県立中央病院神経内科 1999 尾道市立市民病院神経内科・精神科副医長 2001 希望ケ丘ホスピタル 2003 医療法人愛善会由良病院副院長 2017 同院長

 岡山県南東部医療圏に位置する玉野市は人口約6万人。高齢化率は35.3%(2015年度)と全国平均(26.3%)を上回り、認知症の患者も増加している。内科・精神科病院である由良病院でも、高齢者医療の充実に注力。地域医療への思いを佐藤由樹院長に聞いた。

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―病院の特徴などは。

 1954年に、父の幹雄(現:理事長・名誉院長)が開設。50余年の歴史があります。

 玉野市は、かつては造船で栄えた町ですが、産業構造の転換で人口が減りました。岡山市、倉敷市と近いこともあり、若い人の流出も進んでいます。

 高齢化で、当院の認知症の患者さんの割合も高くなっています。

 高齢の患者さんには合併症もあり身体科の治療も必要です。内科や整形外科を開設し、精神科疾患以外の診断、治療、リハビリテーションにも院内で対応できるようにしています。

 1.5テスラのMRIや、16列のCTといった高度医療機器を設置。内視鏡検査、心臓、腹部、頸部のエコー検査、ABI(血圧脈波)検査などの装置も揃えています。

 地域で求められているのは、慢性期で、多機能型の病院ではないかと考えています。

 入院している時、患者さんが、何か合併症を起こすたびに転院となると、患者さんや家族の負担は大きくなってしまいます。少々の身体合併症であればきちんと当院で診る。精神科を核に全人的医療を提供することが、地域医療で果たすわれわれの役割だと思っています。

―地域での取り組みは。

 住民のみなさんに健康への意識を高めてもらおうと2015年から市民公開講座を続けています。

 今年度は、認知症を年間テーマに、9回に分けて実施。10月は「車の運転はいつまで可能?」として、認知症と自動車の運転について話します。

 道路交通法の改正もあり、国の方針も認知症の方に、免許の自主返納を促す方向に進んでいます。「認知症イコール運転できない」という方針には、一概に納得はできませんが、線引きが難しいので致し方ないとも思います。当院は、認知症専門医が常勤する病院として、地域のみなさんの認知症への理解が深まるよう、情報を伝えていきます。

―今後力を入れたい分野は。

 精神科が専門ということもあり、「睡眠」には大変興味を持っています。疾患で言えば、「過眠症」や「睡眠時無呼吸症候群(SAS)」などです。

 過眠症治療は、10代〜30代の若年者の需要が多いです。日中に、耐え難い眠気に襲われますので、QOLに大きな影響があるだけでなく、事故などのリスクも高まります。

 過眠症の診断には、「反復睡眠潜時検査(MSLT)」が必要です。

 MSLTは、日中の眠気を評価する検査。脳波を測定しながら、入眠にかかった平均時間や、入眠早期に現れるレム睡眠の回数を調べます。現在、県内で検査、診断できる施設がなかなかないのが現状です。以前、検査が必要な患者さんを、県外の病院に紹介したときも数カ月待ちという状況でした。

 また、SASも注意が必要です。睡眠中に呼吸が止まり、昼間の生活に影響をおよぼすだけでなく、高血圧、糖尿病などの合併症を引き起こしかねません。

 国内には、SASだけれども気付いていない人や、受診をしていない人など、「かくれ睡眠時無呼吸症候群」の人が、200万人から300万人程度もいると言われています。男性と女性の比率は、9対1程度で男性の割合が多いようです。発症している人の多くがいびきをかく傾向にあります。SASの検査である終夜睡眠ポリグラフィー(PSG)は、必要があればその都度実施している状況です。

 当院の市民公開講座でも、SASを含めた睡眠の話題も提供しています。まずは、地域の方に、病気を知ってもらい、治療につなげたいと思っています。

―4月に院長になりました。抱負など。

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 基幹産業である造船業の不振の影響もあり、町全体が少し元気をなくしているところがあるかもしれません。

 せめて、職員には、将来に対する夢や希望を持ってもらえるような職場環境を作らなければと考えています。

 そのためにも、職員が、職場に対していま何を考えているかを聞きたいと思いました。着任後に、職員と面談を実施。一人ひとりの考え、困っていることなどを聞く良い機会になりました。

 また、「何か一つは、ポジティブな提案をしてほしい」という宿題も出しました。

 おかげで、現場からは、具体的な提案ももらうことができました。

 例えば、患者さんが快適に入浴でき、介助の負担を減らせる「ミストを使った浴槽」。岡山の施設で導入していると聞き、私も見学に行きました。そこで効果を実感し、今年8月に設置しました。

 栄養課からは、オーブンの買い替え。これも、栄養課職員との話し合いで実現しました。

 職員によっては、1、2時間もの長い時間、じっくりと話ができました。これからも、現場とのコミュニケーションは大事にしたいと考えています。

 今後も、職員と共に、地域で求められているものは何かを常に念頭に置きながら、認知症などの患者さんはもちろん、身体合併症の受け入れもできる、「慢性多機能型の病院」を目指したいと思います。

2017年度 由良病院 市民公開講座

日時 テーマ
10月14日(土) 車の運転はいつまで可能? (認知症と自動車運転)
11月18日(土) 虫が見える認知症って?(レビー小体型認知症))
12月16日(土) ある日、性格が変わったら? (前頭側頭型認知症)

会場:由良病院3階 会議室 時間:午後1時~2時  講師:佐藤 由樹 院長

医療法人愛善会 由良病院
岡山県玉野市深井町11-13
TEL:0863-81-7125(代表)
http://www.yura-hospital.jp/


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