都市型病院運営は専門に特化した戦略で
都市型高層ホテルやオフィスビルが立ち並ぶ大阪・梅田の「オオサカガーデンシティ」。健保連大阪中央病院は2000年、その一角に移転・開院した。抜群のアクセスなどを生かした病院運営について、大橋秀一院長に聞いた。
―歴史を教えてください。
当院はもともと、大阪を拠点とする大同生命直営の病院でした。1944(昭和19)年、大阪の健保組合の組織である大阪連合会(現けんぽれん大阪連合会)が管理運営を継承。1976(昭和51)年、大阪連合会から全国組織の健康保険組合連合会(健保連)に運営が移りました。
建物の老朽化に伴い、2000年、現在地に移転。一般健診などに特化した都市型病院として、143床で運営しています。
―院長として注力してきたことは。
移転後、まもなく院長になりましたが、開院当初から赤字続きで経営状況は厳しいものでした。ここはJRの跡地を再開発した地区だったため近隣に住民がほとんどいなかったのです。
しかも、周辺には、300床から500床規模の病院が5カ所あります。中小規模の当院に来るような患者さんは、ほとんどいませんでした。
そこで考えた策が、より専門に特化した病院をつくることです。何を専門にするのかと考え、出た答えが私の専門分野でもある内視鏡手術でした。
理由は三つ。一つ目は、私が大阪大学の内視鏡外科学の初代の教授として、消化器を中心にした内視鏡での治療を得意としていたこと。二つ目は患者さんにとって低侵襲な治療で、入院も短期間で済むため、需要が高まっていたこと。三つ目は内視鏡手術ができる医師の数が当時はまだ少なく可能性が広がっていたこと、でした。
現在、婦人科、泌尿器科、整形外科など、さまざまな診療科が内視鏡治療に力を入れています。
婦人科は、子宮内膜症、子宮筋腫など、良性腫瘍を中心に年間約900例の手術を実施。内視鏡の割合が9割程度です。症例数は、全国でもトップクラスでしょう。
泌尿器科では、手術支援ロボット「ダビンチ」を2013年4月に大阪府内の民間病院としては、いちはやく導入。前立腺がんは、導入直後から月に3、4例の症例を手掛け、実績を重ねています。
就任した2001年ごろは、患者さんが自分でネットを利用し、症例数などを見て、病院を選ぶようになってきた時期と重なります。このため、「症例数が増加することで、口コミも広がり、また患者さんが増える」という流れができあがっていきました。院長になって2~3年で、経営的には回復の見通しが立ってきました。
―患者さんは大阪府が中心ですか。
大阪府が中心ではありますが、西は神戸、西宮、東は京都、奈良、和歌山からも来られます。
西梅田という地の利が、当院にとって優位なことの一つです。しかもJR、阪急、阪神と複数の路線の最寄り駅から近く、それぞれから歩いて7分程度。どの駅からも地下道でつながっています。
内視鏡治療に特化するため、救急は一切していません。開院当初はやっていたのですが、当院の方向性が固まった2012年からは、この分野は、大病院にお願いすることにしました。専門病院としての流れもここ2、3年で確立でき、医師の技術も上がってきていると思います。
在院日数も、平均6日を上回ったことはありません。これも全国的にもトップクラスでしょう。現在も、手術の予約が次々と入っている状態です。
―課題は何ですか。
7、8年前に問題になったのが病棟の空床の問題です。在院日数が短いため、稼働率が50%を切るようになったほどです。
対策として健康管理センターを設置するなど一般健診を強化しました。周辺には企業も多く、当院へのアクセスも良いため、利用者が増加。その結果、当初、1フロアだった健診用スペースが今は3フロアになっています。
今、当院では、一般健診を年間7万人に実施しています。これに加えて、毎年、2000人ずつ検診者が増えています。
予防医学に力を入れることで、医療費を抑制していくという考えにも合致していると思います。しかも、健診後、30%の方に、再検査の必要性があるという結果も出ています。
再検査の結果、手術の必要があれば、当院ですることもできます。健診した病院で、治療もできるということは、患者さんにとってもメリットがあると思います。
―職員に伝えていることは。
接遇の重要性はよく話しています。接遇委員会では毎月会議を開いています。
院内に投書箱を設けて、患者さんが要望を伝えやすい環境にしました。投書箱で寄せられた意見は、一つひとつの事例を、メンバーで検討し、次に生かしています。
医療も、サービス産業ですから、「患者さまはお客さま」という気持ちを持って対応してほしいと考えています。
健康保険組合連合会(健保連)大阪中央病院
大阪市北区梅田3-3-30
TEL:06-4795-5505(代表)
http://www.osaka-centralhp.jp/