地域への恩返しのために信頼度No.1を目指して
◎急性期から在宅まで
当院は24時間365日対応可能な救急外来、急性期病棟に加え療養病棟、障害者病棟を備えているケアミックス型の病院で、関連施設に特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、グループホームを持っています。さらに当院に通院されていたもののさまざまな事情で通院困難となった在宅患者さんへの訪問診療をしています。そのため急性期から慢性期までの継続性を保つことができ、患者さんをシームレスに診ていくことが可能です。
なかなか受け入れ先のない入院透析や連携法人の関連施設への訪問診療も実施しています。また健康管理センターではPET-CTを含む人間ドックや健康診断を実施。がんの早期発見や生活習慣病の予防など、地域の方々の健康を支えているという自負があります。
◎信頼度向上
急性期で、どうしても当院で対応できない患者さんは市内の他の病院で治療をお願いすることもありますが、症状が落ち着いたら可能な限りこちらで診るようにこころがけています。あくまでもこの地域のための病院でありたいからです。
ですから遠方から当院に足を運んでもらうというよりは、この地域の人たちから「静岡徳洲会病院に行けば大丈夫」と言ってもらえるような病院にしたいですね。
この地域には、かつて総合病院がありませんでした。この地域に病院を造ってほしいという強い要望を受けて2005年に開院したのが当院なのです。
地域に望まれてできた病院なので、その恩返しのためにも今以上に病院の実力を高めなければなりません。その思いは職員全員が共有しています。職員にはいつも「なにかの件数の1位ではなく信頼度のナンバー1を目指してください」と言っています。
◎免震構造
この地域は将来南海トラフでの地震発生が予想されるため当院の建物は免震構造を採用しています。地震が発生し津波が来たら、病院も浸水すると予想されるため、建物1階部分が浸水しても病院の機能が保たれるように2階から上階に病院機能を集約しています。
ライフラインは屋上に設置していますし、避難者の受け入れも可能です。病院の建物自体が津波避難ビルとなっているのです。
◎地域連携
今後は地域で開業されている先生からの協力を得ながら、よりこの地域に貢献していかなければなりません。そのためには、急性期をより強化し、地域の先生方からの要請に応える必要があると考えています。また地域包括ケア病棟を設置し、今後さらに増加が予想される亜急性期の患者さんへの対応体制を整える予定です。
◎医療講演会
病気の治療の面で地域に貢献するのはもちろんですが、それ以前に地域の方にまずは病気にならない、させないことが何よりも重要であることをお伝えする必要があります。そのために各職種のスタッフが地域に赴く医療講演会を開催しています。この講演会は月に10回以上開催していて、ロコモ(運動器症候群)について、骨粗しょう症についてなど、毎回バラエティーに富んだテーマを設けています。
また医療以外では事務職員による高額療養費やMSW(医療ソーシャルワーカー)による介護保険の講演をしていてとても好評ですね。
◎検診
検診で早期に病気を見つけることが重要です。早く見つけられれば、完治する率も高いのです。
そのためには検査をなるべく楽にうけていただく必要があります。当院の人間ドックではバリウム検査ではなく、できるだけ内視鏡検査をするようにしています。麻酔をかけて眠っていただいている間に検査をするので、とても楽でリピーターも多いですよ。
◎院外に発信
医師だけでなく、すべての職種の職員にしてもらいたいのは院外での講演や学会に参加しての発表、論文執筆です。
自分たちがしていることをまとめて、院外に発信するということは重要です。自分たちのレベルアップにつながりますし、最終的に、それが患者さんにも還元されるのです。2016年はいろいろな学会で多くの職種が30以上の演題発表をしましたが2017年以降もこれはさらに継続していきたいですね。
◎チーム医療
多職種による合同カンファレンスを定期的に実施しています。また感染や褥瘡(じょくそう)などの院内横断的なチームが活発に活動していますので職種間の壁はありません。職員も私に対して遠慮なく率直な意見を述べてくれます。
風通しの良い良好なチーム医療が提供できれば、それが必ず患者さんにも伝わります。最終的にそれが信頼につながるはずです。
◎総合診療医
当院では急性期から慢性期、在宅に至るまでのシームレスな医療を提供しているので、総合診療医的な能力が問われます。
今後も高齢化は進みます。高齢者は合併症があることが多く、必然的に総合診療医に対する需要が高まるのです。
2018年度からの新専門医制度では総合診療医の教育が開始されます。当院はプライマリ・ケア連合学会認定後期研修プログラムVer.2と病院総合診療医学会認定施設であり、また総合診療専門医研修の基幹病院取得を目指していますので、総合診療医を目指す人は、ぜひ当院で研修を受けてもらいたいと思っています。急性期から慢性期までの一連の流れを一つの病院で学べるので、とても勉強になるのではないでしょうか。
当院は訪問診療もしていますから、自分たちが診た患者さんを在宅でも最後まで診ることも可能です。総合診療医を目指す人にとっては、良い環境だと思いますよ。
◎気持ちに寄り添う
若い医師は患者さんや、そのご家族から「先生に診てもらえてよかった」と言ってもらえるような医師を目指してほしいですね。
患者さんと向き合い、しっかり話を聞いて相手の思いをくみとることが必要です。しかし、そうは言っても若い頃は意欲が空回りしがちですし、目の前のことに精一杯で、そんな余裕がないのも事実かもしれません。でも頭の片隅に「患者さんの思いをくみ取る」ことを置いて日々の業務に励んでもらいたいと思います。
高齢者や末期がんの患者さんは常にどこで、どんな最期を迎えるかを考えています。その気持ちに寄り添うことは医療技術と同じくらい大事なことなのです。
徳洲会グループには高い志を持つ熱い医師が多いのが特徴です。私もその人たちからとても影響を受けました。日々勉強もしなければならないし、患者さんに優しくしなければなりません。そういう姿勢を学びましたね。
今は随分変わりましたが、若い頃は3日に1回当直をするなど非常に忙しく働いていました。今同じことをやるとブラック企業と言われそうですが、医師は経験値を積むことで成長できます。特に若い頃のひたむきな努力なしで一人前にはなれないと思うのです。