幅広く経験が積める科です
宮崎大学医学部では昨年、講座再編があり、外科学講座泌尿器科学分野は発達泌尿生殖医学講座泌尿器科学分野に講座名を変更した。
今年、准教授に就任した向井尚一郎氏に講座での取り組みや宮崎県の泌尿器科医療などについて聞いた。
―講座での取り組みについて。
私自身は専門領域である腎臓がんのほかに、前立腺がん、膀胱がんの治療などに携わっています。腎臓がんに関しては早期がんから進行がんまでの患者さんを診ていて、病状に応じた治療法を選択しています。
主に早期がんの患者さんには手術を選択し、多くは、腹腔鏡手術を適用しています。昨年は教室全体で腎摘除34例、腎部分切除13例、副腎摘除8例、膀胱全摘除10例、前立腺全摘除22例を腹腔鏡を用いて手術しました。
手術支援ロボット「ダビンチ」は未導入ですが、手技自体は腹腔鏡手術と同様ですので、明らかにロボットでしかできない手術であれば話は別ですが、そうでなければ、今のところは現在の器材で対応することが可能だと考えています。
腎がんが進行した患者さんには分子標的薬を用いた薬物治療を選択しています。
かつて、腎がんの薬物治療はインターフェロンを用いた免疫治療が主流でしたが、その奏効率は1割程度でした。しかし、分子標的薬の登場により奏効率は5割以上、症状が悪化しない人を含めれば、その割合はもっと高くなり、患者さんにとって良い環境になりつつあります。難点は副作用と薬価の高さです。
―泌尿器科分野の魅力とは何でしょう。
ひとくちに泌尿器といっても非常に幅広い領域をカバーしており、腎、尿管、膀胱、前立腺、精巣などのほか、副腎などの内分泌系分野、腫瘍学分野、腎臓では腎不全や腎移植にも携わることができます。
泌尿器科に入ったら、この分野しか勉強できない、ということはありません。内科系の治療、外科系の治療と幅広い経験が可能です。小児の形成外科的な分野や移植などもあり、やりがいのある領域だと思いますよ。
医局員は、みんな明るく、チームワークは抜群です。人数が少ないからといってギスギスしておらず、協力しあっています。
私たちが細心の注意を払っているのはサポート体制です。若いドクターが困っている状況は絶対に避けなければなりません。当教室では指導など万全のサポート体制を整えており、余計な心配をする必要がなく、泌尿器について学べる環境が整っています。
それなりに忙しいですが環境はいいと思います。泌尿器科に興味がある人は、ぜひ当教室を選んでほしいですね。
―宮崎の泌尿器科医療の現状を教えてください。
全国どの地域も同様だと思いますが、宮崎県においても高齢化が進んでいます。泌尿器がんの発症年齢は高めなので、宮崎でも患者さんの数は増加傾向にあります。
しかし、マンパワーが不足しており、県内の基幹病院に十分な数のスタッフを派遣できていないのが現状です。一定の手術をするには3人くらいの医師は必要ですが、それが達成できているのは、少数の病院だけなのです。
教室員の数を増やして宮崎大学を卒業した後も県内に残っていただき、宮崎県の泌尿器科医療を充実させなければならないと思っています。
―泌尿器の病気で悩んでいる人にアドバイスをお願いします。
一般の人は、どうしても泌尿器の病気について相談しにくいのではないでしょうか。症状がかなり悪化して初めて病院に来られることが多い傾向があります。
例えば血尿が出ても「特に痛くもないから」と自分で勝手に判断し、放置する人が今だにおられます。しかし肉眼的血尿は危険な兆候です。近所の泌尿器科クリニックで結構なので、我慢せずに早目に受診してくれることを願います。
宮崎大学医学部附属病院宮崎市清武町木原5200
☎0985・85・1510(代表)
http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/