進歩が目覚ましい画像診断と放射線治療 地域に根ざしたプロを育成
病気の早期発見や治療の負担軽減を可能にする現代の画像診断と放射線治療。宮崎の放射線科医を取り巻く環境と課題、対応策を聞く。
―貴院の放射線科医を取り巻く環境は。
宮崎大学医学部附属病院の総病床数は現在632。その病床を横断的に診察・治療したり、各診療科の専門医をサポートしたりしている当放射線科の医師は、わずか17人です。
適切な高度医療を提供するためには基幹病院に一定数の放射線科医が必要です。しかし、当院では放射線科専門医が不足し、医局員が臨床に追われる日々が続いています。私の喫緊(きっきん)の課題は、放射線科専門医の増員です。
―放射線科医不足への対策にはどんなものがあるのでしょう。
近年、注目されているのは「遠隔診断」です。当院でもすでに遠隔支援システムを活用しています。病院間のバーチャルネットワーク(VPN)を介して画像を受信。宮崎大学医学部附属病院にいながら遠隔地の支援病院の患者さんに対する放射線診断が可能です。
患者さんは、遠くの病院に通う負担なく標準的な診断を受けることができる。大学側は遠方の病院に医師を派遣しなくてもよく、支援病院側は適切な診断を患者さんに提供することが可能です。
遠隔での放射線治療についても5年から10年以内には実現していきたいと準備を進めています。
―宮崎大学の放射線医学分野で学ぶ魅力をあげるとすると。
宮崎大学は、地域とのつながりが非常に強い。地域の中核病院との人材交流も活発で、診断や治療の際の連携や技術共有に地域全体で取り組んでいるのも特徴と言えるでしょう。
大学内のスタッフにも職種や診療科に関わらず「医療人材を育てよう」「宮崎に残ってもらいたい」という思いが根付いています。院内のさまざまな診療科間で情報交換や意見交換をする場が確保されていることも魅力だと思います。
「高齢化が進んでいる」という点も、見方を変えると魅力になります。例えば「fMRI(機能的磁気共鳴映像装置)」を使いアルツハイマー患者の診断・治療をして、新薬開発にもつなげていく。高齢者の割合が高いこの地域は、そんなモデル研究ができる場所でもあるのです。
―今後の研究について聞かせてください。
私が放射線科医になって30年近く経とうとしています。CTは全身に応用されるようになり、MRIの出現により撮像の自由度が格段に向上しました。通常撮影法の二次元から三次元への進化によって、局部診断は大きく変化。先進的撮影法の発展は、腫瘍の質的診断能力を向上させ、手術支援という面でも重要な判断要素となっています。
さらに、SPECT装置の発展とPETの臨床応用、さまざまな領域での画像誘導低侵襲治療の活用のほか、放射線治療の高度化と進歩は、近年著しいものがあります。
今後10年で、画像の解像度はますます向上するとともに、元素を特定する高機能画像も実用化するものと思われます。これにより、新たな画像診断法が生み出されるでしょう。
また、撮像の短時間化がさらに進むとともに、低被ばく化が進むでしょうし、放射線治療の精微化も進むと思われます。
これらの技術を柔軟かつ効果的に使いこなしていくために、私たち放射線科医は何をすべきか常に考えられる医師でありたいと思いますし、そういう医師を育てていきたいと思います。
最終的な医療診断は、人である医師が担います。テクノロジーはあくまでもツール。そこを自覚しながら、診療・研究・人材育成に励んでいきたいと思います。
宮崎大学医学部病態解析医学講座放射線医学分野
宮崎市清武町木原5200
TEL:0985-85-1510
http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/radiology/