山口大学大学院 医学系研究科 産科婦人科学 田村 博史 准教授

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メラトニンの抗酸化作用を応用した不妊治療の今

【たむら・ひろし】
1992年山口大学医学部卒業、同産科婦人科学入局。1999年医学博士。済生会下関総合病院、山口大学医学部附属病院講師、米テキサス大学サンアントニオ健康科学センターなどを経て、2012年から現職。

 不妊検査・治療を受ける患者の中で、加齢などによる「卵子の老化」が問題になっているという。メラトニンを活用した卵子の質向上の研究で、世界的にも注目されている山口大学の田村博史准教授に、不妊治療の今を聞いた。

―メラトニンを使った不妊治療の背景とは。

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 山口大学では年間約100人の初診患者が挙児を希望して不妊外来を受診しています。本学では不妊スクリーニング検査の後、不妊原因や治療経過、年齢などを考慮して方針を決定。タイミング療法から始め、人工授精、体外受精へとステップアップします。

 私はメラトニンを活用し、不妊患者に臨床応用するための研究を行っています。メラトニンに注目したのは20年ほど前。それ以前の1992年にはメラトニンが抗酸化作用を持ち、がんやさまざまな病気の予防、アンチエイジングといった働きがあることが報告されていました。

 卵子の周りの卵胞液中にメラトニンが高い濃度で存在することは以前からわかっていましたが、なぜ存在するのかは不明でした。そこで私はメラトニンが卵子の周りにあるのは、排卵過程で発生する活性酸素から卵子を保護するためではないかと考えたのです。

 体外受精で胚移植を行っても卵子の質の問題で受精や妊娠ができない患者さんがいます。卵胞内のメラトニンが少ないことが原因ではないかと考え、1カ月間メラトニンを服用するグループとそうでないグループとをつくり、卵胞内のメラトニンに変化があるか臨床試験を行いました。

 結果、飲んだグループの卵胞内のメラトニン濃度が約4倍に増え、細胞障害の指標となる酸化ストレスマーカーが低下。さらに、受精率、妊娠率ともに上昇という結果が出て、やはりメラトニンが卵子を守っていたのだと確信しました。

―加齢による卵子の質の低下に対する対策は。

 この試験では、卵子の質が不良の高齢女性では、十分な効果は得られていません。そこで、メラトニンによって卵子の加齢を予防できないかと考えています。

 卵子は他の組織の細胞と異なり、細胞分裂をしません。そのため生まれてから30年〜40年といった長期にわたり、卵子に加わるダメージが酸化ストレスとして蓄積されると考えました。メラトニンが分泌される夜間に睡眠をとらない不規則な生活、夜勤など夜間に明るい環境にいるような女性がこれに当たります。

 現在メラトニンの長期服用によって卵子の老化を軽減できれば、不妊治療に大きく貢献できると考え研究しているところです。マウスを使った実験では今のところ良い結果が得られており、今後はヒトに臨床応用できないかと考えています。

―メラトニンによる不妊治療の今後は。

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 山口大学では、世界に先駆けて不妊症患者に対するメラトニンの臨床応用に注目し、臨床研究を進めてきました。この研究の発表以来、世界的にも研究や臨床への応用が広がり、国内のクリニックなどでもメラトニンを使った不妊治療が行われています。

 メラトニンのサプリメントは、アメリカでは薬局やコンビニで簡単に入手できるのですが、日本では厚労省が未承認医薬品に分類しており、個人輸入も厳しくなっています。私たちは厚生局から「薬監証明」を取得した上で入手したメラトニンを使用。朝、少し眠気が残るという方もいますが、副作用はほとんどありません。

 かつては昼夜のリズムを調整するホルモンとしか思われていませんでしたが、今は不妊をはじめ糖代謝や脂質代謝、がん、自己免疫疾患の治療にも効果があるのではと言われています。研究が進めばメラトニンの可能性は、もっと広がるかもしれない。そんな期待も持っています。

山口大学大学院 医学系研究科 産科婦人科学
山口県宇部市南小串1-1-1
TEL:0836-22-2111(代表)
http://ds.cc.yamaguchi-u.ac.jp/~obgyn/


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