産業医科大学医学部 産科婦人科学 吉野 潔 教授

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女性に寄り添い問題解決 地域の発展に貢献したい

【よしの・きよし】
1991年産業医科大学医学部卒業、大阪大学医学部産婦人科入局。1998年医学博士。米NCI留学、大阪府立母子保健センター、大阪大学医学部産婦人科講師、准教授などを経て、2018年から現職。

 福岡県北九州市に位置し、大学病院として産業医学振興や産業医養成に尽力する産業医科大学。この春に赴任した産科婦人科学の吉野潔教授に、教室の役割と高齢者の多いこのエリアで近年増加傾向にある「子宮体がん」について聞いた。

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―子宮体がんとはどういった疾患なのでしょうか。

 子宮体がんは子宮内膜の奥で発症。主な原因は、女性ホルモンのエストロゲンが通常値より高く長時間体内にあることです。女性ホルモンによって子宮内膜細胞が増殖し、前がん病変からがんができる。これに対して、女性ホルモンに関係なく突然原因不明にがん細胞ができるまれなケースもあります。

 子宮体がんを発症するとがん細胞の増殖により、子宮内膜が肥厚。初期であれば1〜2cmほどの肥厚です。すでに閉経を迎えた40代後半から60代の人、肥満体型の人や妊娠・出産を未経験の人、過去に大腸がんや乳がんになった人が発症することが多い疾患と言われます。若い人でも発症することがあり、その場合は月経以外での不正出血が見られます。

 子宮体がんの検査では、まず「経腹エコー」や「経膣エコー」を行います。子宮内膜の奥の方へ細い棒を入れて子宮内膜の細胞をとる生検が、精度が最も高い診断方法です。

 がんが見つかると、手術で子宮、卵管、卵巣を全摘出します。将来、出産を希望される方にはなるべくその思いに寄り添い、がんを退縮させるホルモン「プロゲステロン」を投与するなどして子宮を温存し、産後に全摘出することを勧めています。これは再発のリスクを抑えるためです。全摘出しても再発の可能性はゼロではありませんが再発リスクの低いグループのうち術後97%の方は再発なく完治しています。

―産業医科大学での子宮がん治療の特色とは。

 当院のある北九州市は高齢化が進んでいる地域なので、来院される患者さんの多くが糖尿病やリウマチなどの合併症を抱えています。高齢者に子宮体がんが多いのは、こうした合併症や、服用している薬も関係しています。

 年間40例ほどある子宮体がんの手術では傷口の小さい腹腔鏡手術を採用しています。手術時間は約2時間。2〜3cmほどの傷が腹部に3カ所残りますが、開腹手術に比べ患者の負担が少ないことが特徴です。術後1週間ほどで退院できます。

 今後は遠隔操作が可能なロボット手術も取り入れていく予定です。今春から産婦人科領域でもロボット手術が保険適用となり、当院も現在準備段階です。ロボットを使うことで、腹腔鏡手術よりもアームの自由度が増して細部にまで手が届きます。当科での始動は来年以降になりそうです。

―今後の抱負を聞かせてください。

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 2018年度、新専門医制度が始まりました。当産婦人科の場合は、最初の2年は当院で産科・婦人科の勉強をし、3年目には、大学病院以外のプログラム連携病院で研修します。

 医療過疎地域で地域医療を学ぶため、沖縄県立北部病院でも2カ月間、交代で研修を実施しています。大学病院の最先端治療と地方での地域医療を現場で学ぶことで新たな発見ができると期待しています。

 全国的に産婦人科医になる人は減っています。北九州は人口約100万人の都市なのでもっと産婦人科医を育てる必要があると考えています。産婦人科の良さを学生たちに知ってもらうことも使命のひとつです。

 当大学の医師の中には企業の産業医となる人も多くいます。研修を通して、働く女性の健康管理や婦人科疾患に関連するようなストレスを取り除き、勤労の効率をアップさせる研究などもこれから進めていきたいと思っています。女性に寄り添い問題を解決することで、大学や企業、地域の発展に貢献していきます。

産業医科大学医学部 産科婦人科学
福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1-1
TEL:093-603-1611(代表)
http://uoeh-sanfujin.com/


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