九州基幹災害拠点病院 九州医療センターに聞く 有事への備え

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国立病院機構 九州医療センター 病院長 村中 光
救急救命部長 福岡DMAT統括責任者  小林 良三

村中光(とおる)院長=1976 九州大学医学部を卒業し同放射線科入局 1992 国立病院九州医療センター放射線科医長 1998 九州大学医学部併任講師 2003 国立病院機構九州医療センター臨床研究部長 2008 同臨床研究センター長を経て2010 年から同院長 2012 国立病院機構本部九州グループ担当理事 ■医学放射線学会専門医 消化器病学会専門医・指導医 消化器内視鏡学会専門医・指導医。

小林良三救急救命部長=1979 久留米大学卒(第一外科) 久留米大学附属病院高度救命救急センター、川崎医科大学附属病院高度救命救急センターを経て、2001 国立病院機構九州医療センター救急部部長 2013 同センター感染制御部部長併任。■福岡県および福岡地域救急業務メディカルコントロール協議会委員、福岡県医師会救急災害医療対策委員会委員長、福岡市救急災害委員会委員

 1月20日午前11時30分、福岡市営地下鉄橋本駅の構内で、到着した電車の床に無色透明な液体が撒かれ、乗客が倒れるなど次々と体調不良を訴えているという設定で、本格的な災害対策訓練=平成26年度国民保護共同実動訓練が行なわれた。福岡県が国と福岡市とともに実施した大規模なテロ対策訓練で、県警や自衛隊、医療機関など43機関、およそ1千人が参加したという。訓練を明日に控え、九州医療センターの村中光院長に大規模災害への取り組みを中心にたずねた。小林良三救急救命部長=福岡DMAT統括責任者が同席した。

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村中光(とおる)院長

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小林良三 救急救命部長

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 九州医療センターは福岡県基幹災害拠点病院で、国立病院機構九州グループでは九州管内の統括が課せられています。

 国立病院機構に属するDMATの拠点は災害医療センター(東京都立川市)にありますが、立川断層が真下にあるために、東京が機能を失った時のために、西日本にもDMATの拠点を作ることになり、大阪医療センターに昨年、代替機能が置かれました。

 そしていま検討されているのが、大阪も危なくなった場合に九州にも備えておいたほうがいいだろうということで、具体的な話にはなっていませんが、うちが代替機能となる可能性はあります。

 DMATというのは、阪神淡路大震災で急性期の医療が効率よく機能しなかったという現実から、「災害現場に医師を派遣する」という考え方でつくられたものです。しかし東日本大震災では地震に加えて津波というもう1つの負荷がかかり、1千人から1千5百人の医療班が行きましたが、助けるべき人が津波にさらわれてもうおらず、有効に人助けができる状況ではなかったことが教訓の一つになっています。

 そこから学んだのは、被災されて助かった方への医療です。一週間目から十日目あたりで医療過疎になるため、早期から介入する医療が必要となります。DMATが最初に行き、その次の医療を「初期初動医療班」が担うことになります。当センターにはDMATが3チーム、初期医療班が1チーム、放射線のための医療班も別にあります。

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右の写真=上は自力で来院した傷病者への放射線スクリーニング。下は病院長室に設置された対策本部(九州医療センター=インタビュー翌日)。

 このようにして急性期から亜急性期、そして慢性期になってきますと、心のケアや慢性期疾患への介入となり、長いスパンで厚みのある関わりが必要となります。

 こういったことが東日本大震災をきっかけに整備され、システマティックに動くようになってはいます。その中で我々の病院は九州の拠点であり、当然福岡県の中核拠点でもありますので、常に有事に備えている状態です。

 当センターは、県下全域の災害拠点病院の機能を強化するための訓練・研修機能のある基幹災害拠点病院です。1997年9月以降、当センターに、九州管内の国立病院機構28病院から毎年10病院の災害従事者を招いて研修を開催しています。初期には阪神淡路大震災の教訓を基盤にした災害教育、近年では東日本大震災の経験を生かして、避難所での医療支援などの内容で研修を行なっています。さらに、そう遠くない未来には南海トラフ連動地震が想定されており、九州東沿岸の大分、宮崎、鹿児島の各県は津波による甚大な被害が予測されています。その減災のために九州グループのネットワークを機能させることが求められています。

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上の5枚は九州医療センターで行なわれた訓練の様子。上から ①救急車で搬送されてきた傷病者へのトリアージ ②赤エリア ③除染エリア=水除染 ④内閣官房や自衛隊からも記録班が来ていた ⑤除染エリア=乾式除染

 当センターでは災害対策委員会を毎月開き、平成7年の阪神淡路大震災以降、毎年2回の災害実地訓練と机上シミュレーションをして災害対策マニュアルの改訂に取り入れてきました。

 平成25年度からはメンバーを3つに分け、「災害訓練グループ」は災害対策本部における指揮調整系統の確立と現場の自律的活動を可能とするアクションカードの周知、「医療班教育グループ」は災害医療班指定者を招集し、役割やトリアージの実際、化学災害対応の知識など、医療班への啓発を行なっています。さらに「備蓄庫およびマニュアル整備グループ」では、災害マニュアルの改訂のほか、医薬品や医療備品をはじめとした、必要物資の備蓄配置や見直しを行なっています。

 医療の観点から見ますと、いわゆる地方が老齢化して、それへの取り組みは早くからされてきました。ところが今後は、都市部も急速に老齢化してきます。都市部は若い人向けのインフラにしかなっていませんから、老人が山のように取り残されるおそれが出てきます。急性期の病院が都市部にあっても構いませんが、現役を引退した人たちが、何かしらの活動をしながら新しい分化を醸成するエリアを都市の周辺につくって、そこに対しての必要なインフラを都市からうまく移行できれば、長く生きがいの持てる生活ができると思います。それには地域の特長や特性を生かす必要があり、これまでのような横並び発想ではうまくいかないでしょう。

 いつ起こるかわからない災害への100%の備えは、たぶん無理だと思います。でも起こった時に、地域の力が要素としてどう関わってくるかというのは大きいです。

 東日本大震災の時、現地の人たちがとても秩序正しかったというニュースが世界を驚かせました。大災害で社会的なインフラが全部壊れて自給自足的な状況になった時にはこうしたほうがいいという了解や理解を共有しておくことが大切です。

 政府や行政主導でシステムをつくったにしても、現実に起こってしまうと一人ひとりの行動が極めて重要なんです。いろんな状況を考えて、私は、あるいは我々はこう動くということをシミュレーションしておいたほうがいいでしょう。私たちは医療者として万が一に備えますが、そのような準備が国民一人ひとりに浸透すると、相当うまくいくんじゃないでしょうか。


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