日本医師会 会長 横倉 義武

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 明けましておめでとうございます。皆さまにおかれましては、健やかに新年をお迎えになられたこととお慶び申し上げます。

 昨年4月、6年前の東日本大震災の恐怖を再び呼び起こさせるような大地震が熊本で発生しました。また、昨年は各地で台風を始め天候不順が続き、土砂災害や洪水、更には火山噴火等、さまざまな災害が相次ぎ、多くの方々が避難生活を余儀なくされました。災害はいつ起きるか分からず、万全な備えをしておくことが必要です。日本医師会といたしましても引き続き、災害対策基本法上の指定公共機関としての責務を果たしていく所存です。

超高齢社会の医療

 さて、2025年に向けて地域包括ケアシステムの構築が急務となっていますが、本年3月までには各地域で地域医療構想が策定されることになっています。各地域における住民の年齢構成や医療資源、交通アクセス等、その置かれた状況はさまざまであり、地域の特性に合わせた構想を策定するためには、地域医療を担う医師会と行政が強固な信頼関係を構築し、各地域に求められる医療の姿を共有していかなければなりません。

 わが国では、脳卒中を発症した場合、まずは医療機関に搬送されることになります。回復すれば自宅に戻り、更にリハビリや医療サービスが必要な場合は回復期病棟等や慢性期病棟等で療養を続けたり、介護が必要であれば、老健や介護施設で介護サービスを受けることもあります。

 また、自宅に帰って再び発症するようなことがあれば、再入院するといったことが繰り返されるわけですが、こうした過程においても、常に患者さんの人生を見守っていく「かかりつけ医」の役割は大変大きいものがあります。最終的に患者さんが安心して旅立たれ、また家族の方々がその患者さんを心安らかに送り出すところまでしっかりと見届けていく、こうしたことが来るべき超高齢社会における医療の姿なのではないでしょうか。

「人」を大事にする政策を

 今年は、トランプ米国大統領が誕生し、わが国でも国防問題や経済政策、社会保障を巡って活発な議論が展開されることが予想されます。政府では新たに設置した未来投資会議において、第4次産業革命として、ICTの活用により必要なサービスが必要な時に必要な人に届く、超スマート社会の実現を打ち出しておりますが、かかる状況においても必要なことは、人を大事にする政治、政策であると思います。昨年、あるシンポジウムで「国民の健康」についてさまざまな議論を交わす機会がありましたが、その過程においてこの思いを強くしました。

 資源に恵まれていない日本が、広大な土地と豊富な資源を有する超大国と互角に対応できた要因は人であり、子どもたちの健康と成長を見守りながら、健全な教育を施してきたからに他なりません。医療と教育に対して予算が回らないようであれば、あらゆる意味で国が衰退していくのは明らかであり、この二つを犠牲にするような政策は断じて行ってはなりません。

 医療政策の立案を担う厚生労働省の方々には、ぜひ医療現場の方々と実際に交流し、その実情を的確にキャッチすることで、現場の声を反映した政策の立案をされるだけでなく、財務省ともしっかり議論され、適正な社会保障財源を獲得していただきたいと思います。

 また、昨今では、過重労働による痛ましい悲劇が散見されるようになりました。医師の中には患者さんの状態が刻々と変化していく中で、夜間、人生の最期を迎えようとする患者さんを前に、勤務時間外だからと帰るわけにはいかず、何日も徹夜して診療に当たったというような経験をお持ちの方も多くおられます。

 若い医師の方たちには、患者さんに寄り添うというその心をぜひ、受け継いでいっていただきたいと思いますが、過重労働状態の中で医療を行うことは患者さんのためにはならないことは明らかです。この問題の解決のためには、より働きやすい環境整備に努めることはもちろんのこと、医師の側においても働き方に対する意識を変えていく必要があるのではないかと考えています。

高水準の医学を維持するために

 昨年10月には、東京工業大学の大隅良典栄誉教授がノーベル生理学・医学賞を受賞されました。日本人としては、前年の大村智北里大学特別栄誉教授に続く2年連続の快挙です。大隅栄誉教授は記者会見の席上、「大学の研究環境の劣化により、将来的にノーベル賞が出なくなる」と不安を述べておられました。

 臨床医学は基礎医学がベースにあってはじめて成り立つものです。日本の医学が非常に高い水準を維持できたのは、基礎医学に従事された方々のご尽力によるところが大きく、医学の将来を俯瞰(ふかん)すると、基礎医学の研究に関する環境づくりも、医療界のみならず社会全体で考えていくべき課題ではないかと感じております。

 昨年11月に、安倍晋三内閣総理大臣にお会いした際に、医療研究に優れた功績を挙げられた方々を顕彰するため「内閣総理大臣賞」の創設を要望して参りましたが、本賞の創設が実現し、医学研究に携わる先生方の励みとなることを願っています。

地域から国へ、日本から世界へ

 終わりになりますが、私は昨年10月に開催された世界医師会台北総会におきまして、世界医師会次期会長に選出いただきました。

 国民の健康寿命を世界トップレベルにまで押し上げたわが国の医療システムやノウハウを広く世界に発信していきたいとの思いで立候補いたしましたが、現在ではグローバリゼーションの進展と相まって、医療界を取り巻く多くの問題が国境を越えて立ちはだかっております。その解決に向けて、世界医師会が果たす役割はますます重要になると考えており、その責任の重さを痛感しております。

 一方、わが国においては少子高齢化に伴う医療提供体制の再構築や医師の地域偏在、診療科偏在の問題、更には医療の高度化等に伴う医療費の増大への対応など、多くの問題が山積しており、わが国の医療が進むべき道筋を早急に示す必要があると考えています。

 とりわけ熱かった昨年の夏、日本のみならず世界中をより一層熱くさせたあのブラジル・リオでのオリンピック・パラリンピックが、3年後にはこの日本で開催されることになります。開催に当たっては、外国人観光客の受け入れ態勢や熱中症対策、更にはイベント関連事故や自然災害、テロリズム等による予測不可能な傷病者への災害医療体制など、多くの課題も残されておりますが、東京都医師会始め、関係機関とも協力し、その準備を進めていく所存です。

 「地域から国へ」、そして「日本から世界へ」を目指し、日医執行部はこれからも一丸となって対応して参る所存でおりますので、皆さま方には深いご理解と格段のご支援を賜りますようお願い申し上げ、年頭のごあいさつといたします。


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