一般社団法人 玉名郡市医師会立玉名地域保健医療センター 赤木 純児 院長

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クリエイティブな感性で がん治療に活路を

【あかぎ・じゅんじ】 1977 九州大学文学部卒業 1983 宮崎医科大学(現:宮崎大学医学部)卒業 1989 熊本大学大学院医学研究科博士課程修了 1992 米国立がん研究所 1995 熊本大学医学部附属病院第二外科 2000 国立病院機構熊本南病院 2010 玉名地域保健医療センター院長

 「免疫」が再び注目されている。統合医療を積極的に推し進める赤木純児院長が注目する新たながん治療を追った。

◎「免疫」の可能性

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 統合医療は免疫を増強しながら化学療法や放射線治療などを行うのが基本的なコンセプトです。

 米国では20年ほど前から統合医療に力を入れています。日本ではがんによる死亡率は増加傾向を示していますが、米国は統合医療を本格的に開始した1990年代より減少傾向。免疫の改善が重要であることを示していると考えます。

 日本では免疫への関心は、これまであまり高まることはありませんでした。「サルノコシカケ」の成分などを用いた免疫賦活剤や「養子免疫療法」などの非特異的免疫治療が試みられてきましたが、安定的な成績を残すには至っていません。

 1990年代にがんの目印である「がん抗原」が発見され、がん抗原特異的T細胞を用いたがんワクチン治療や樹状細胞療法などが登場。大きく期待されましたが。臨床効果は予想を大きく裏切るものでした。

 こうした経緯もあって医療者の多くに「免疫治療はあまり効果がない」というイメージが広がり、さらに「がん細胞を認識する免疫は存在するのか」と、免疫そのものに対する疑問も呈されるようになりました。

 状況を一変するきっかけを与えたのが免疫チェックポイント阻害薬「オプジーボ(一般名:ニボルマブ)」。近年、がんを認識するがん免疫が誘導されても、がん細胞はその働きを抑制し免疫の攻撃から逃れていることが分かってきました。オプジーボはがん免疫に対する抑制を外し、免疫細胞が本来の力を取り戻してがんを攻撃できるように助けます。

 奏効率は低いものの手術不能の悪性黒色腫(メラノーマ)や肺がんが治癒するという現象が認められています。免疫に懐疑的であった医療者の認識も、「がん治療に必要ではないか」という認識に変わりつつあります。

 私が重要だと考えているのは、免疫状態を測定しながらがん治療を行う「免疫モニタリング」。中でも、簡単に実施できる「末梢血による免疫モニタリング」に注目しています。数年前から取り組んでおり、治療成績が向上していることを実感しています。

 がん治療における免疫の重要性を知ってもらうために、日本統合医療学会に免疫部会を設立することにしました。

 5月12日(土)に「日本統合医療学会免疫部会設立記念学術講演会」をくまもと県民交流館パレア(熊本市)で開催します。学会理事長の仁田新一先生の基調講演をはじめ、大阪大学先端免疫治療学講座教授の岡本正人先生、東京クリニック副院長の照沼裕先生、山口大学医学部附属病院腫瘍センター准教授の吉野茂文先生に特別講演をお願いしています。

 10月7日(日)、8日(月)は札幌市立大学で「第22回日本統合医療学会」が開かれ、免疫療法のシンポジウムも予定しています。学会としても免疫学的評価や免疫療法はこれから力を入れていくべき領域と考えています。部会が中心となって免疫モニタリングのガイドラインをまとめるなど普及に努めていきます。

◎水素とミトコンドリア

 当院では、がん患者さんの免疫機能の向上に水素ガスと水素水を用いています。水素は細胞内のミトコンドリアの働きと深く関わっています。ミトコンドリアの主な役割は、ヒトが活動するために必要なエネルギー「ATP」をつくること。このATP産生の原料となるのが水素なのです。

 われわれが食事するのも、食物からATPの原材料である水素を獲得するのが目的だと言われています。また水素はミトコンドリアのATP産生に関与する酵素を誘導する PGC1│αを活性化してミトコンドリアの機能を増進します。

 がん細胞を攻撃する最大の兵隊がキラーT細胞です。がん患者のキラーT細胞のミトコンドリアは機能不全に陥り、本来の役割を果たすことができません。そしてキラーT細胞の細胞表面にオプジーボのターゲティング分子であるPD│1を発現するようになります。このような細胞を疲弊T細胞と呼びます。水素は疲弊T細胞のミトコンドリアを再活性化し免疫機能を回復させます。

 疲弊T細胞はアルツハイマー病や高齢者の肺炎に関与していることが分かってきました。水素による疲弊T細胞の再活性化で、がんや認知症、高齢者の肺炎を予防し、健康寿命の延伸に貢献できる可能性があります。

 水素の免疫学的効果の研究を通じて、がん治療には免疫が重要であること、免疫を高次でコントロールしているのはミトコンドリアではないかという仮説に至りました。

 これまで免疫に関与すると言われてきた漢方やサプリメント、腸内細菌が、実はミトコンドリア機能の活性化を介して免疫機能をコントロールしていることが判明しつつあります。これらのことも、その仮説を支持していると考えています。

◎人間は非物質的存在 

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 人間の体は物質だけでなく、心など非物質的なものと成り立っているということを忘れてはいけません。その両方を同時に治療するのが本当の治癒だと思います。

 この非物質なものの正体は私にとって未知なるものですが、これを軽視しない姿勢で治療していきたいと常々考えています。例えば医師と患者さんの信頼関係は最も重要視すべき非物質的なものではないでしょうか。これもどこかで、免疫のコントロールにつながっているのではないかと考えています。今後、非物質的なものと免疫との関係は重要な研究テーマになるかもしれません。

 患者さんを本当に救いたいと願うのなら、医師はあらゆる可能性を探るべきだと思います。従来の手術、化学療法、放射線治療にとどまっていていいのかと感じます。

 医療者に求められるのは、患者を本当に治したいという強い願いと、それを追い求めるためにクリエイティブなアンテナを張り巡らすこと。さまざまな治療法にチャレンジしていくことではないかと思っています。

一般社団法人 玉名郡市医師会立玉名地域保健医療センター
熊本県玉名市玉名2172
TEL:0968-72-5111(代表)
http://www.tamana-medical.com/


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