「愛、熱、和」の精神をもとに、病める人中心の医療を
11月に最新のハイブリッド手術室が始動。地域における先進医療の拠点へ
全国にある五つの警察関連病院のうち、最大の病床数580床を誇る、大阪警察病院。
1937(昭和12)年に、警察・消防職員の福利厚生事業の一環として誕生した同院は、来年80周年を迎える。
ー警察・消防職員の福利厚生事業として始まった病院ですね
来年、創立80周年を迎えますが、かなり早い段階に職域別病院としての役割よりも、地域医療の基幹病院としての役割を担うようになりました。現在では、患者さんのうち警察関係者の割合は1%程度です。特に2012年度より大学病院本院に準ずる機能を有するDPCⅡ群病院として指定されています。
現在は診療科31科、認可病床数580床に発展しており、周辺の医療機関と連携して地域住民の健康を支える、地域医療計画の中心施設としての役割が期待されています。
地域医療連携センターを中心とする他施設との診療連携を評価され、2010年11月に地域医療支援病院として承認されており、地域医療レベルの向上を目的に、月に1度は地域医療推進委員会を開催しています。
また、3カ月ごとに開く地域医療支援病院運営委員会では、各区の医師会代表に委員を、天王寺区医師会長に委員長をお願いしており、「顔の見える関係」の構築を目指しています。
ー救急医療について、独自の試みが注目されています。
救急医療は地域から期待される最大の機能であり、当院の取り組みの大きな柱の一つに位置付けています。
1973(昭和48)年に救急センターが完成し、2年後には2次救急医療機関の承認を受けました。2008年には3次救急医療機関の認定を受けています。
潜在的な重症度にかかわらず24時間体制で受け入れるER・総合診療センターを2008年4月にスタートしました。現在は救命救急部門、心臓血管部門、脳血管部門の3部門が一体となって救命救急センターと連携しています。
救急部門の大きな特長として、救急医療先進国である米国から医師を招いて、研修医(2016年度は18人を採用)の指導をお願いしていることがあげられます。
この取り組みは、日本型ER診療モデルの確立を目的に、大阪大学大学院医学系研究科救急医学の嶋津岳士教授が中心となって進めているものです。当院以外に、大阪大学医学部附属病院と多根総合病院、大阪府立急性期・総合医療センターが参加しています。
平均1カ月交代で米国の救急医学指導医が来日し、4病院をまわりながら指導します。内容は、英語でのケーススタディーやディスカッション(週2回)、運ばれてきた患者さんを、米国の指導医が現場のリーダーとして実際に治療を指導することなど、非常に実践的なものです。
もともと、当院は13人の当直医を置いていますので、研修医の教育体制としては非常に手厚い。研修医は自分で診断してトリアージしますが、常に救命救急のドクターがバックアップしており、もう少し専門的に診る必要があれば、当直医がそれぞれの専門科で対応します。
救急受け入れ患者数は約12,000人(2015年度)で、救急車による搬入件数は5,500件以上と、毎年増加しています。
がん関連の救急が多いのも特徴かもしれません。当院は大阪府のがん拠点病院であり、救急車による搬入患者のうち、大きな割合をがん関連が占めています。
たとえば、昨年度のがん患者・年間入院数4,490人のうち、1,101人( 25%)がオンコロジー・エマージェンシー(悪性腫瘍に伴う、要緊急治療状態)による緊急入院の患者さんでした。
ー運営方針として「全人的医療」を掲げています。先生の考える「全人的」とは。
医療というのは、患者さんの身体の不調を治療するだけではなく、心の安静を取り戻すこと、もっといえばご家族にも安心していただくことが含まれると思います。結局、「患者さんの側に立って考える、判断する」ということが大事になるのでしょう。
若い医師によく話すのですが、たとえば夜遅くに体調不良の高齢の方が救急車で運ばれてきたとする。しかし、診断結果では明確な異常が認められないと出た。その時にどうすべきか。
もし、そこで「たいしたことないから帰っていいですよ」となると、患者さん本人だけではなくご家族の方も不安で眠れなくなる可能性があります。自分の身内が運ばれてきたと思えば、経過観察のため一晩は入院していただくべきです。
ー日本高校野球連盟(高野連)の副会長でもありますね。
阪神タイガースのチームドクターを務めたことが縁で野球と関わることになったのですが、選手と関わるうちに、嘱望されながら大成できなかった選手の背景に、成長期の過酷な練習や無理な試合日程があることがわかってきました。
高野連にそういった不満をぶつけているうちに、「じゃあ、いっしょにやりましょう」ということになって、断れなくなったんです(笑)。
同じような考え方を持つ、元巨人軍の桑田真澄さんと講演会を開いたこともあります。
ー急性期総合病院としての特色を生かし、診療機能を13の医療センターに集約化。各科で協働しながら先進的医療を提供していますね。
手術医療センターでは、消化器内科を含む15診療科で年間7,100件以上の手術を行います。内視鏡手術やステントグラフト大動脈瘤手術などの低侵襲手術、さらに、拡大進行がん手術、機能回復手術が中心になります。前立腺がんについては、これまで先進的治療として小線源療法を行ってきましたが、現在は手術支援ロボット「ダビンチ」を用いた手術が増えています。
今年11月に、ハイブリッド手術室が完成しました。血管撮影装置があり、手術支援機器などの高度な周辺設備を統合した最新設備です。
脳、心臓、血管系手術のほか脊椎手術にも活用されることになりますので、若い医師たちの外科領域に対する大きな興味を引き出してくれると期待しています。
一般財団法人 大阪府警察協会 大阪警察病院
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