高度急性期の基幹病院を目指し地域連携強化と人材確保を
名古屋徳洲会総合病院は病床数350。高度急性期医療の充実を図っていきたいと語る前田徹院長が目指すものとは。
◎高度急性期の強化を
―病院の特徴について教えてください。
当院は急性期、高度急性期医療を担っています。今後は高度急性期を一層強化していきたいと考えています。
救急車の受け入れ台数は年間4200台ほど。年間手術件数は約3000件です。
心臓血管外科・循環器内科では当院がある尾張北部医療圏からだけでなく、岐阜県の東濃地区、岐阜県の高山地区など広範囲の患者さんをドクターカーやドクターヘリで受け入れています。
がん医療は検診、外科手術、化学療法をしています。また2014年には緩和ケア病棟18床を開設。末期のがん患者さんなどのケアをします。
常勤医師数は55人です。徳洲会グループの病院の中でも1人当たりの医業収入が高い病院です。それだけ各医師が熱心に高度医療に取り組んでくれている証拠だと思います。
◎最先端の手術を実施
―高度な医療への取り組みについて。
当院の手術件数で最も多いのは整形外科手術です。脊椎手術の増加に伴い、OLIF(オーリフ)手術を導入しています。OLIF手術は後腹膜腔を経て腰椎椎体の側方に達する術式です。
変性側彎(そくわん)症に対する矯正力が従来の手術より高く、また神経組織を直接露出させず、間接的に除圧ができます。適切に行えば従来の手術よりも低侵襲な手術が可能です。
心臓血管外科の昨年の手術数は638件。「手術数で分かるいい病院2017」で、東海地区で名古屋第一赤十字病院に次ぐ2位、全国では15位でした。
心臓疾患に関しては、2014年のハイブリッド手術室の導入により、カテーテルを併用した治療が増加しました。昨年は経カテーテル大動脈弁置換術(TAVI)を29例実施しました。
当院では2012年には手術支援ロボット「ダビンチ」を導入。泌尿器科では昨年、前立腺がんに対するロボット支援手術を45例実施しました。
―2014年に新築移転しました。以前と変わったことは。
手術室は旧病院の4室から9室へと拡張。そのうち、1室はハイブリッド手術室です。
ICUは6床から10床へと増床、血管造影室も2室から3室に増えました。また屋上にはヘリポートを新設しました。
医療機器は「320列マルチスライスCT」と「3テスラMRI」を新たに導入しました。
新築移転がきっかけとなって年間の手術件数と救急車の搬送台数が大きく増加しています。
―これから力を入れることは。
現在の病床数が350。そこから緩和ケア病床の18床を除いた332床で、この地域の高度急性期と急性期をしっかり担っていくためには人材の確保が必要です。
整形外科を例に挙げると今年の手術件数は900件を超える見込みです。この件数を6人の医師でやっていますから1人当たりの手術件数は約150例ということになります。本当によくがんばってくれています。
80人から90人ぐらいまで医師を増員できれば、この病床数で、より充実した高度急性期、急性期医療が提供できるようになります。
◎モットーは自由と積極性
―初期臨床研修医が総合内科外来を経験できるそうですね。
初期臨床研修医の定員が来年度、3人から5人に増員、しかもフルマッチです。当院では救急件数も時間外の患者さんも多く、研修医はたくさんの症例を経験することが可能です。
初期臨床研修医には研修期間2年間を通じて救急対応だけでなく、週に1回、半日間、総合内科で一般外来を担当してもらいます。新規患者さんの問診から治療計画、診療までを経験することで、総合的な診察力が身につくでしょう。
また救急外来で担当した患者さんが入院した場合は、その患者さんを担当することができます。自分が診た患者さんのその後の経過を診ることはとても勉強になると思います。
当院のモットーは「自由と積極性」です。これは私が院長になった時に設定しました。
初期臨床研修医には自分がやりたいと思うことに積極的に取り組んでほしい。指導医のサポートも手厚くしています。
「自由と積極性」は研修医に限った話ではありません。医師、メディカルスタッフ、事務職員、当院で働くすべての人に望むことです。
私は「自分はこういうことがしたい」と言ってくる積極的な人間を応援したい。「もっと成長したい、勉強したい」そう考える人を後押ししたい。希望にできる限り応えたい。いつもそう考えています。
職員には自主的に学ぶ姿勢を身につけてもらいたいと思います。自分で医療に関する文献を読むなどして、考える習慣を身につけてほしいと思います。
自主性をもって行動し、自分の頭で考える。それで、もし失敗したとしても、そこから得るものは大きいはずです。
最先端の医療機器をそろえているのも、職員の「最先端の機器で最先端の医療を実施して困っている患者さんを救いたい」という希望をかなえるためです。
職員がやりたいことをできる環境を整備することも、私の仕事だと思っています。
◎成長を続けたい
ー医師として心がけていることは。
私は院長と整形外科部長を兼任しています。整形外科医として生きがいを感じていて、当院を頼ってくる患者さんに最適な医療を提供したいという強い思いを持っています。
整形外科医として成長を続けたいと思っているので今でも学会に参加し、発表をしています。
整形外科領域の疾患は命に直結することは少ない。医学生から見るとその魅力が伝わりにくい領域かもしれません。しかし実際に仕事にすると、とても奥が深く、面白い領域です。
整形外科の役割は障害された運動機能を正常に戻すことです。例えばひざが痛い、腰が痛いと訴える患者さんに手術をして、それが成功すれば、痛みがない元の生活に戻すことが可能です。
自分の手術が成功して患者さんが元気になって歩いている姿を見ると本当にうれしいですね。それが整形外科医のやりがいであり、面白さだと思います。
整形外科医になって30年以上経ちますが、日々勉強を怠らないようにしています。上には上がいます。絶えず高みを目指す姿勢が必要だと思っています。
時々、あと何年、手術をすべきか考えることがあります。しかし、私より10歳以上年上の多くの先輩たちが、現役でがんばっているのをみると自分も少なくとも70歳になるまでは手術をしようと思いますね。
◎広い視野を持つことが重要
―今後の目標を教えてください。
院長になって間もなく9年になろうとしています。「当院が少しでも良くなるためには何をすべきか」。就任当時はそればかり考えていました。
しかし、最近は、もっと広い視野を持って医療について考えるようになりました。必ずしも、この病院、この地域だけに医療を限定する必要はありません。医療とは病気やけがなどで困っている人に何を提供できるかが大事です。
日本という国の中で医療人として何ができるか、どうすれば役に立てるかを考える必要があると思っています。
医療法人徳洲会 名古屋徳洲会総合病院
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