意欲ある人に看護の道を
■学生受入開始から40年
この学校の前身である「医療法人原病院付属高等看護学院」が、各種学校の看護婦養成所として認可を受けたのは1975(昭和50)年。1976(同51)年に1回生を受け入れました。
准看護師、当時は准看護婦と言いましたが、その資格を持った人に教育をし、グレードアップさせて、正看護師にするというのが当校の役割。学生は、准看護師として働きながら、2年課程の内容を3年かけて学ぶ、昼間の定時制です。
第2次世界大戦(1939〜1945)が終わったばかりの日本の医療は「量」の時代。看護職養成では、より早く、より多くの看護の担い手を育てることが必要とされていました。准看護師が数多く誕生し、診療所や医療法人病院の看護の担い手は、主に准看護師だったのです。
しかし、1975年ごろになると、量よりも「質」が求められるようになってきました。原土井病院理事長の原寛先生が、准看護師を正看護師にする当校をつくったのは、ちょうどそのタイミング。時代の要請でもあったと思います。
■医療の高度化の中で
当学校の教育理念は「博愛」。その精神のもとに、真に社会に貢献し得る人材を育成することを目標としています。
さらに、その根底には、「経済的に恵まれない若者にも、看護師への扉を開く」という思いがあります。
近年、看護大学がどんどん増えています。医療が複雑化、高度化する中で、それは必要なことだと思います。ただ、問題は学費。私たちの学校には、経済的理由で看護大学に進学できなかったり、進学しても中退せざるを得なかったりした人も入学してきます。
当校でかかる学費は3年間で約200万円。働きながら、自分で授業料を払って正看護師の資格を取ることができる。志があれば、看護師になれる。それがこの学校なのです。
さらに、1991(平成3)年からは、原学園ナイチンゲール奨学基金として、年間4〜5人の看護学生に月額2万5千円を支給しています。卒業時に〝借金〞を抱えて社会に巣立つことがないよう、返済義務のない奨学金です。
■授業はiPadで
学生の入学時の平均年齢は25〜26歳。40代、50代の受験者もいます。看護師国家試験の合格率は毎年全国平均を上回り、ここ5 年間の実績は99%。全員合格まで、あと一歩というところです。
5年前に紙の教科書を廃止し、iPadと電子ブックのテキストでの授業に切り替えました。学生全員がiPadを持ち、メモや付箋貼りも、その中でしています。
今は、電子カルテの時代になっていますから、学生時代にIT機器に慣れておくのは大切なことだと思いますね。導入のときに心配した国家試験合格率の低下もありませんでした。
当校は、講師陣も充実しています。九州大学・福岡大学の名誉教授、大きな病院の病院長を務めた人...。隣接の原土井病院に常勤・非常勤で来ている方たちに講義をお願いしています。私も専門の消化器外科や概論などの講義を担当しています。
■病者の友となる優しさを持って
ここの学生さんは、みんな熱心ですよ。働きながら通学するのですから、体はきついと思いますが、本当によく努力しています。
私は学生に、「即戦力で、かつ病者の友となる優しさを持った看護師」になってほしいと願っています。
准看護師の経験がありますから即戦力にはなり得るでしょう。難しいのは、優しさの部分です。
看護師の仕事は、きれいごとばかりではありません。私も医師として看護師の仕事を見てきましたが、本当に、きついと思います。それでも、病者の友となる覚悟と強さを持った、優しい看護師を養成したい。理論ばかりの看護師では、本当の看護師とは言えないと思います。
■3年課程の定時制看護専門学校も準備中
看護大学の新設だけでなく、准看護師の養成施設の閉校が相次いでいます。そこで原学園では、2017年4月に、3年課程の定時制看護学校を設立しようと準備を始めました。高校卒業後、正看護師になるために3年課程の内容を4年間かけて学ぶ昼間の定時制看護学校です。
看護師になる夢を、経済的理由だけで断念させない。現在の原看護専門学校と、新設予定の学校で、意欲ある若い人が働きながら学べる場を堅持していくつもりです。
大東佐枝美 副学校長にも聞いてみた!
Q. 看護師と准看護師、具体的にどう違いますか?
A.業務上明確な線引きはありませんが、物事を判断し、遂行する能力を、より求められるのが看護師だと思います。(准看護師の定義に医師又は看護師の指示を受けて、とあります)
Q. その力をつけるために、学ぶことは?
A. 准看護師になるために学ぶ方法論に、根拠を持たせることがまず第一です。「こういう時には、こうしましょう」というのが方法論。その理由まで理解するということです。また在宅の患者さんを診る時やチーム医療の中で、統合的に見て、判断し、行動する力も求められています。看護師のカリキュラムには統合分野が盛り込まれていますし、当校でも、その分野の養成に力を入れています。
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