宮崎大学|子どもから高齢者まで内科から外科的疾患まで
― 幅の広さが皮膚科の魅力 ―
―教室の特長と魅力についてお話しください。
皮膚科は子供から高齢者までを扱う科で、内科的疾患から外科的なものまでとても幅広いです。皮膚のがん、悪性腫瘍は顕微鏡で病理も確認しますし、後療法―抗がん剤や放射線治療などのすべてをケアできるのが皮膚科です。
手術が終わればあとは閉じるだけという考え方の先生もおられるかもしれませんが、皮膚は3層構造になっていて、私たちや形成外科では1層ごとに3回縫います。3層縫合といって、大きな針と糸で1回縫うだけよりもキズはきれいになります。縫合部の緊張が減りますからね。
―若い医師に望むことは。
研修を終えたあと、まずは皮膚科専門医をとってほしいですね。
最初の段階は幅広く、ポピュラーな病気をきちんと診られて、手術もできるようになり、それから皮膚病理にも親しんでほしい。見た目だけでは診断できない皮膚疾患でも皮膚の生検―皮膚を5mmから1cmくらい切り取って、それを薄く切って染色し、病理診断を行います。これは皮膚がんの診断にも大切なことで、悪性腫瘍か良性腫瘍かで治療方針がずいぶん変わってきます。
大学病院に紹介される難しい患者さんをしっかり診てまた生検をし、治療方針を立てることができ、そして経過、予後まで判断できる医者になってくれたらと思います。
―大学に残った理由は。
私の出身は鹿児島県志布志市で、30年前は医者が少なかったので、宮崎医大(現宮崎大学医学部)を卒業したら故郷に帰って貢献しようと思っていました。親は医療関係ではありませんでしたが、私の進もうとした道に賛成してくれていました。
外科系の医者になるつもりでいて、皮膚科を選んだのは、冒頭にも言いましたが、子供からお年寄りまで、そして内科と外科の両方の面があり、全身を診られるからです。
どうにか一人前になれたと思って、2000年の終わりごろに開業する準備をしていましたが、経験したことのない症例に出会ったことが、大学に残ったきっかけです。また、皮膚がんの研究をやりたいと思っていたこともあります。これは大学でしかやれないですからね。それと、若い先生が成長していく姿を見られるうれしさもあります。今年も皮膚科専門医の試験に3人が合格して、本当によかったなあと思いました。
―宮崎県を皮膚の専門科はどう見ますか。
まずは紫外線ですよね。農業と畜産の盛んな県ですから、屋外で仕事をされる方が多く、顔に皮膚がんの初期のような症状が出やすいです。そのため3年前に公開講座で、紫外線の予防について市民に呼びかけました。
九州全域で見ますと、やはり南に行くほど紫外線の影響は大きくなります。私は留学で1年間、米国のマイアミに行きました。向こうの人は肌が白いのに日光浴が好きです。日焼け止めで保護しているつもりかもしれませんが、宮崎では70歳から80歳くらいで顔面に皮膚がんの初期症状が出てくるのに対し、米国の人は10年から20年くらい早いようです。
―皮膚科の将来は。
これからの皮膚科領域は、がんに対する分子標的薬のような最先端の治療がどんどん導入されると思います。
私が研修医のころは軟膏医とよばれたこともありました。それもむろん大事なことで、今はそれにプラスして、内服や注射などの新しい治療法がいっぱい出てきています。研究がさらに進んで、10年後は今とは違う治療がさらに出てくるでしょう。そのために若い医師をたくさん育てたいですね。
―ストレス発散には何を。
どちらかといえば仕事中毒、ワーカホリックですが、高校時代からずっとバドミントンをやっていて、8年前から宮崎大学医学部バドミントン部の顧問もやっています。1週間か2週間に1度、2時間程度ですが汗びっしょりになって、ストレスが発散するのはやはり気持ちのいいものですね。