宮崎大学医学部病態解析医学講座救急・災害医学分野 救命救急センター 落合 秀信 教授・センター長

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多くの命をつなぐためにスピードと対応力を磨く

【おちあい・ひでのぶ】 県立宮崎大宮高校卒業 1988 宮崎医科大学医学部卒業 同脳神経外科入局 2001 米デューク大学医学部留学 2012 宮崎大学医学部病態解析医学講座救急・災害医学分野教授 救命救急センター長

 宮崎の救急医療をけん引する宮崎大学医学部附属病院救命救急センター。落合秀信センター長は、患者の安全を確保しながら研修医に裁量を与える独自の方式で専門医を育てている。

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―宮崎大学救命救急センターの特徴は。

 当救命救急センターは、20床を備え、3次医療機関として救急のあらゆる症例に対応。中等症から重症の患者に特化し、年間1800件ほどを受け入れています。救急搬送の6割は、外傷患者で、緊急手術が必要な場合は、院内の各診療科と連携しながら初期診療から集中治療までオールラウンドに対応できる体制が整っています。

 病床の余裕を確保するために、回復期に入った患者は当院の一般病床だけでなく、県内の医療施設に広く受け入れてもらっています。

 2012年4月に運航をスタートしたドクターヘリや、2014年4月に導入したドクターカーを活用して、救急現場に医師や看護師を投入し、病院前から診断・治療を開始。通常では病院に到着する前に絶えてしまう命を救うことに全力を注いでいます。特にドクターヘリは、県内全域から当院まで30分以内で移動できるため救命率の向上に有効です。年間500件程度の出動要請に応えています。

 1台しかない当院のドクターヘリが稼働している間に、別の出動要請があった場合は、宮崎空港にある「宮崎県防災救急航空センター」で備える防災ヘリに応援要請して対応しています。

 当センターの特徴の一つに救急出動要請の電話受付システムがあります。消防機関から出動要請の入電があると、ドクターヘリの運航管理室のホットラインにつながります。

 消防機関と運航管理室スタッフが話す内容は、救命救急センターの医師やナースにも聞こえるようなシステムになっており、会話に割り込んで最善の対応策を即座に決定することができます。

 さらに、防災救急航空センターにも出動要請の電話が同時中継されており、4者で同時に対応することができます。

 防災救急航空センターのパイロットと当院救急スタッフがいつでも柔軟に連携できるように、少なくとも2カ月に1度は、共同で運航訓練をしています。

―災害への備えは。

 宮崎大学医学部附属病院は、災害派遣時に迅速に出動できるように災害派遣医療チーム(DMAT)を組織しています。災害発生時のDMATへの派遣要請は、専用回線を利用して24時間体制で受け付けています。

 宮崎県は、太平洋に面した海岸線が長く、南海トラフ巨大地震が起きると甚大な災害が発生すると予想されています。また、県内の中核病院が沿岸部に集中しているため、津波が発生すると、多くの医療施設が浸水し、機能が低下すると考えられています。

 そこで、行政機関や消防と連携し、県内11の災害拠点病院を中心に新展開を協議。幹線道路が寸断された場合でも、柔軟に対応できるように県内を三つのエリアに区分。それぞれに中心となる災害拠点病院を指定し、災害発生時の救済搬送ルートの想定を陸路と空路で策定しています。

 また、後方支援を含め具体的な応急対策も確認。災害医療における組織体制の実効性と有効性の検証を重ねながら、万一の自体に備えています。

―地域との連携を強めるための取り組みは。

 当センターがある宮崎市を中心とする宮崎東諸県地区の救急救命士と救急搬送の受け入れが多い地域基幹病院で、2カ月に1度「メディカルコントロール協議会」を開催。救急隊の現場処置や病院の受け入れ対応について検証することにより、地域救急病院と救命士との連携強化・技術担保に努めています。

 全県を対象にドクターヘリの事例検討会を年2回、さらに消防士を対象にさまざまな救急処置についての研修コースを定期開催しています。地域の救急医療に関する連携強化と技術向上の場の提供も、当センターの重要な役割の一つとして取り組んでいます。

―教育にも力を入れていますね。

 当センターで学ぶ初期臨床研修中の医師の教育は、救急科専攻医である卒後3年から5年の若手の医師がまず指導医として担当。その指導医を、さらに上の先輩医師が指導する「屋根瓦方式」をとっています。

 このシステムは、教わる側にとっては身近な手本が目の前にいることで、直近の目標を立てやすく、成長のステップをイメージしやすいというメリットがあります。指導する側も、教えることで研鑽(さん)が積めます。

 後期専門研修では、5人程度で構成される主治医チームのリーダーを救急科専攻医に任せます。先輩医師メンバーを取りまとめながら主体的に救急医療を体験し、技術習得できる。救急科専攻医にとって、責任は重いものの、挑戦し甲斐がある方法でしょう。

 同時に、先輩医師たちが救急科専攻医の診療を常に見守る「バックアップ体制」が整っている仕組みとも言えます。患者を危険にさらさずに試行錯誤し、チャレンジしていけるよう考えたシステムなのです。

 この研修を受けている時期は救急科専攻医にとって、苦労の多い期間になるようです。しかし、当センターを離れ地域の中核病院に移ってからのアンケートでは、9割以上が「救急患者への対応力が身についていると感じる。自らの成長を実感できる」と、当センターでの後期研修を評価してくれています。

―今後の目標を聞かせてください。

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 救命救急の現場は、日々、緊張感にあふれています。緊迫した場面で、とっさの判断を重ねながら診断・治療し、患者が回復に向かう様子を見ることは、救命救急医として大きな喜びです。

 広がりを見せる宮崎の救急医療をより強固なものにするために、医師だけでなく、ナースや救急救命士、その他の関連職種すべてのスタッフと力を合わせ、より多くの応用力のある救命救急医を育成していきたいと思います。

宮崎大学医学部病態解析医学講座 救急・災害医学分野 救命救急センター
宮崎市清武町木原5200
TEL:0985-85-1510(代表)
http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/kyuumei/


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