九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

診療も病院経営も常に全力で

独立行政法人国立病院機構 横浜医療センター鈴木 宏昌 院長(すずき・ひろまさ)1985年横浜市立大学医学部卒業。国立横浜病院、横須賀共済病院、JA神奈川厚生連相模原協同病院などを経て、2019年から現職。横浜市立大学医学部臨床教授兼任。  2019年から、国立病院機構横浜医療センターの院長として病院経営に取り組んでいる鈴木宏昌氏。「診療も病院経営も常に全力」と話す。これまで麻酔科医が不足する現場の立て直しに奔走してきた経験は、今どのように生かされているのか。 獣医師志望から医師へ  「そもそも医師志望ではなかった」と話す鈴木院長。高校では獣医師を目指していたものの、獣医学部受験は不合格に。進学先に選んだのは、東京農工大学農学部だった。 しかし、大学に入学してからも、進路への迷いを感じていた。「大学入学した翌年から、共通1次試験が開始されることになり、獣医学部も4年制から6年制になるなど、大学の制度が変更になったのです。そこで、もう一度、受験に挑戦しようと思い立ちました。しかも、同じ6年間学ぶのであれば、医学部に進みたいと思ったのです」 医学部卒業後は、麻酔科を選んだ。「麻酔科医は、患者さんの状態を常に一定に保ちながら、執刀する外科医、その他のスタッフとコミュケーションをとり、手術を円滑に進めていく。手術に欠かせない、いわば〝調整役〟というところに魅力を感じました」 新研修制度発足で麻酔科医が不足  キャリアを積む中で大きな出来事となったのが、2004年度に始まった「新医師臨床研修制度」だ。診療に従事しようとする医師は、2年以上、指定された病院で臨床研修を受けることが義務化されたのだ。これにより大学の入局者がいなくなり、しかも2年間は新人が来ないという非常事態になったのである。 「困った大学側は、各病院から一斉に医師を引き上げてしまったのです。特に、麻酔科医は顕著でした。その結果、多くの病院で手術ができないという事態に陥ってしまったのです」 手術ができることは、病院の利益に直結する。「麻酔科医がいないと外科医は手術ができません。手術ができないとなると、病院は積極的に患者さんを受け入れることができなくなってしまう。どこの病院も悪循環を起こしていました」 鈴木院長は、それまでいくつかの病院の立て直しに貢献してきた。その手腕を買われ、麻酔科医が不足していた神奈川県内の病院に次々と赴任。「立て直しに取り組んで、分かったことがあります。それは麻酔科医がしっかりと対応できれば、外科医が安心して手術でき、経営的に好循環が生まれるということです」 ある病院では、順調に手術が行えるようになったことが、黒字転換への大きな要因になったという。麻酔科医という存在が病院経営に与える大きさを、改めて知ったという。 日々、変化し続ける  2009年、国立病院機構横浜医療センターへ。麻酔科医として手術の質を高めていったという。当時3000件弱だった手術件数は、今では6000件近くと、ほぼ倍の数となった。副院長となった2016年、手術室は若手の医師に任せる体制を取った。 「副院長になったのは良いタイミングだったと思います。いつまでも古い人間がトップでいるより、進化するためには若い医師に任せたほうがいい。変化が大きい今の時代は、医療のあり方も、医師である私たちも、スピードを持って変わっていかなければならないと思います」 今後は地域との連携もさらに強めていきたいと語る。「地域の開業医の先生との情報共有などを密に進めていきたいと思っています。当院が所有するドクターカーも、地域のために運用回数を増やしていきたいですね。地域医療支援病院としての役割を果たすための課題は、まだたくさんあります」 独立行政法人国立病院機構 横浜医療センター横浜市戸塚区原宿3―60―2 ☎️045―851―2621(代表)https://yokohama.hosp.go.jp/

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高度急性期医療維持のため積極的な設備投資を

諏訪赤十字病院 梶川 昌二 病院長(かじかわ・しょうじ)1980年信州大学医学部卒業。同附属病院、長野県立木曽病院、諏訪赤十字病院副院長などを経て、2018年から現職。諏訪赤十字看護専門学校長兼任。  諏訪湖を臨む場所に建つ諏訪赤十字病院。長きにわたって、高度急性期医療を軸としながら災害医療や救命救急、周産期医療などに取り組んできた。今後の高齢化や人口動態を踏まえ、将来的な病院のあり方はどう変わるのか、現在の取り組みと展望を聞いた。 ─地域における役割は。  長野県の諏訪医療圏は、人口が19万人ほどです。地域がん診療連携拠点病院、地域医療支援病院などの認定を受け、地域の基幹病院としての役割を担っています。高度急性期医療においては、長野県のみならず、医療圏を越えて、幅広く対応している状況です。   これまでに設備投資も積極的に行ってきました。PET─CTやダビンチ、IMRT(強度変調放射線治療)などの最新装置を導入。鏡視下手術センター設置に続いて、2019年には手術室を二つ増やし、9室になりました。一つはTAVI(経カテーテル的大動脈弁置換術)に対応できるハイブリッド手術室、もう一つはロボット手術にも対応できる手術室になっています。   地域周産期母子医療センターでは、NICU(新生児集中治療室)、GCU(回復治療室)を備えています。少子化で産婦人科が縮小している中、この地域の周産期医療を担っていきたいと思います。 高額な投資が続いており、経営的には難しい状況が続いています。しかし、高度医療の充実を図るためには必要であると捉えています。材料費を見直すなど、ほかの部分を調整し、安定的な経営を目指していきたいと思います。 ─地域連携を強化されています。  諏訪医療圏の救命救急センターとして、24時間365日断らない医療を目指しています。中でも地域から期待されているのがドクターカーの運用です。諏訪市との運用協定を結ぶだけでなく、諏訪市や岡谷市、茅野市など6市町村で構成される諏訪広域連合と連携し、要請を受けて搬送しています。   近隣には中央道や峠などがあって規模の大きな交通事故も発生するため、そのような際には一人でも多くの患者さんが助かるよう、全力を注いでいます。   さらに、地域の医療機関との連携を進めています。現在は紹介率が100%弱、逆紹介率が100%超の状況で、かかりつけ医との連携が欠かせません。   その中で、精神科の医師が充実している当院に期待が寄せられています。認知症疾患の医療センターの認定も受ける方向で準備をしており、地域包括ケアの中核として機能していければと考えています。   新たなエネルギーシステムも導入しました。2018年3月に管理棟を新築。その際、この地域特有の温泉熱を利用し、下水熱などの地熱を利用したエネルギーセンターを1階に設置。省エネルギー化も実現できました。 ─今後の展望について。  2019年9月、中央道「諏訪湖サービスエリア」へのスマートインターチェンジ設置が承認されました。完成すると当院へのアクセスが非常に良好になるため、救急搬送も含め、広域の医療に貢献できると思っています。   2022年度、当院は赤十字に移管して100周年となります。これから先の100年を目指した病院づくりをする必要があります。地方都市は、人口動態や経済状況の見通しが厳しいのが実情。この地域の活性化のためにも、当院が地域医療の中心的な役割を担えたらと願っています。   当院は、24時間の勤務体制で、年間の病床稼働率が96%以上あり、非常に忙しい職場になってしまっています。働き方改革の波も迫ってきています。職員がゆとりを持って充実した仕事ができるよう、少しでも職員満足度の高い病院づくりを進めていけたらと思っています。 諏訪赤十字病院長野県諏訪市湖岸通り5─11─50☎0266─52─6111(代表)http://www.suwa.jrc.or.jp/

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アクティビティーを上げ、理想の病院をつくる

八戸市立市民病院今 明秀 院長(こん・あきひで)1983年自治医科大学卒業。倉石村国保診療所所長、青森県立中央病院救命救急センター外科、川口市立医療センター救命救急センター、八戸市立市民病院救命救急センター所長などを経て、2017年から現職。  ドクターヘリやドクターカーを導入し、地域の急性期医療に大きく貢献している八戸市立市民病院。その救急システムをほぼ1人で構想し、実際に立ち上げたのが今明秀氏だ。現在は院長として、救急医療だけでなく地域の人口減少問題なども念頭に置きながら、魅力ある病院づくりに取り組んでいる。 ―ドクターヘリを導入した経緯について教えてください。  私はへき地医療を充実させたいと考え、2004年、当時当院唯一の救急専従医として赴任しました。それ以前、当院の救命救急センターは医療体制が十分に整っておらず、青森県全体でも同じような状態でした。何かあっても「仕方ない」と諦めることが多かったのです。私はそのような状況を解決したいと思い、ドクターヘリを導入するための活動を開始しました。 しかし、ヘリに乗る医師やスタッフの確保、地域の理解、そして法律の整備など、乗り越えるべき壁はさまざま。いざ導入できそうな段階になっても、病院間や行政面での調整の部分で難航しました。 それでも関係各所の協力を得て、2009年から当院でドクターヘリを運用することが決定。現在は年間で約500件の出動があり、病院前救護に大きな役割を果たしています。 ―さらにドクターカーも運用していますね。  日没や天候の問題などがあり、ドクターヘリでの救護には時間的な隙間が生じます。それを解決するため、2010年にドクターカーを導入しました。ドクターヘリが出動できない場合や、機動性がより求められる場合はドクターカーが現場へ出向き、救急隊と協力して必要な処置を行います。 また、2016年に手術機能を備えたドクターカー「V3」の運用を開始したことで、さらに病院前救護が円滑になりました。例えば、患者さんを乗せた救急車が当院へ向かう途中にドクターカーと合流、そこで初期治療している間に「V3」が駆けつけ、高度治療を施すという作戦も行っています。現在、ドクターカーの出動回数は年間約1500件、V3は緊急度が高い場合のみ出動するため年間約3件です。 ―職員の教育については。  病院の将来を決めるのは、若い医師や看護師の「アクティビティー」。仮に少ない人数でも、若者の元気があれば、病院の体力や魅力を上げることができます。 このアクティビティーを上げるためには教育が不可欠と考え、当院では講義や実習に重きを置いて後進の育成に取り組んでいます。「若干時間がかかっても容認しながら育てる」ことを意識していますね。 また、初期研修の募集人員19人のうち2人は産婦人科プログラムで受け入れています。これは産婦人科医の減少を食い止めると同時に、救急医療も身につけた医師を増やす狙いです。 お産時に予期せぬ緊急事態が発生しても対応できるよう、研修では救急医療もしっかりと学んでもらっています。 ―今後の展望について聞かせてください。  現在、地方は人口減少が顕著です。その要因はさまざまですが、中でも若者の流出が大きい。地元に仕事がないため、都会へ行かざるを得ません。つまり、人口減少に歯止めをかけるには、まず地域内での就職先の確保が重要です。 当院では総勢約1500人が働いており、すでに雇用面で大きな役割を担っています。しかし、地域のためには、さらに前へ進みたい。その施策の一つとして、当院に関わるすべての人から「病院が元気になるアイデア」を募集し、今まで誰もしたことがないチャレンジ、改革をしたいと考えています。 病院の魅力にさらに磨きをかけることで、今後も医師や職員が数多く集まり、地域全体が盛り上がることを期待しています。 八戸市立市民病院青森県八戸市田向3─1─1☎0178─72─5111(大代表)http://www.hospital.hachinohe.aomori.jp/

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ドクターカーを導入し地域医療の未来に貢献する

南砺市民病院清水 幸裕 院長(しみず・ゆきひろ)1982年富山医科薬科大学医学部(現:富山大学医学部)卒業。米ピッツバーグ大学がん研究所研究員、京都桂病院消化器センター・消化器内科部長、南砺市民病院副院長兼内科部長などを経て、2014年から現職。  地域医療を担う病院として、急性期から回復期、在宅まで一貫した医療提供を行っている「南砺市民病院」。さらなる地域医療への貢献を果たすため、2020年4月までに県内初となるドクターカー専用車両の導入を調整中だ。現在の取り組み、今後の方針などを清水幸裕院長に聞いた。 ―病院での取り組みと、特徴を教えてください。  〝確かで温かい医療〟を目標に掲げる当院で、現在取り組んでいるのが「臨床倫理」です。  アメリカではすでに確立されている分野で、日本でも医学教育のコアカリキュラムに最近指定されました。医療の現場では、さまざまな方針決定の場面があります。例えば延命治療はどうするのか、治療方針と異なる希望が患者や家族から挙がった場合どう対処するか、その決定には難しいものがあります。  その決定は、これまで医師の経験値に頼るところが大きかったのですが、当院ではエビデンスを含め、考え方の道筋を理解した上で決定することが重要と考えました。法律の専門家、倫理哲学の専門家に外部委員を依頼し、〝患者の意向を最大限に尊重した医療のケア〟に、職員全員で取り組んでいます。  また、総合診療医が多く在籍していることも特徴の一つです。各診療科との垣根もなく、専門医と連携をしやすいよう、病院の仕組み自体を工夫しています。 ―ドクターカーの導入を予定されています。  関係機関と調整を図っている段階です。2020年4月までに消防無線、エコー、血液分析装置、輸液緊急セットなどを装備した四輪駆動車を予定しています。導入を決意した理由は大きくは二つあります。  一つ目は救急を充実させることでの地域医療への貢献です。救急の場合、医師との接触が1秒でも早ければ生存率が高くなる可能性があります。消防指令センターからの依頼を受け、救急車と同時に当院の総合診療医が直接現場に出向くことができれば、その場での有効な救命医療が可能になるのです。もし当院で受け入れ困難な患者の場合には、近隣病院へ依頼するといった、速い判断と処置ができるようになります。  二つ目の理由は「看取(みと)り」への対応です。在宅での看取りを希望される患者さんやご家族は多いのですが、自宅でいざ緊急事態が起きると、結局救急車を呼ばれることが少なくありません。  パニックに陥っている状況の中で、一般の方に冷静な判断は難しく、このような時こそドクターカーが赴くことで「臨床倫理」に基づいた適切な判断が行えると考えています。  3次救急のドクターヘリは富山県にありますが、地域密着型のドクターカーの運用は初めての試みです。導入に当たっては、院内の医師の調整、消防指令センターや救急隊、警察との連携、ドクターヘリとの兼ね合いなど、各機関との調整が大切なところです。 ―今後は。  ドクターカーをはじめ、「必要だ」と判断したことは、たとえ前例が無くても、利益が厳しくても実現していこうと考えています。  今後の地域医療を考えると、病院機能の再編なども必要になる可能性が高いと感じています。20~30年後を見据えて、5年後から病棟の一部建て替えも予定しています。職員の意見も大いに取り入れたいと、現在意見をヒアリング中です。  私自身がチャレンジングな研究を続けてきた経験から、職員にも志を高く、前向きに働ける環境をつくることができたらと思います。医療の質を保っていくためには、医師はもちろんですが看護師や技師を含め職員全員のレベルアップが必要不可欠です。  患者さんを第一に、職員も大切に。そして新しいことにもチャレンジする病院であり続けたいと思います。 南砺市民病院富山県南砺市井波938☎0763―82―1475(代表)http://shiminhp.city.nanto.toyama.jp/

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健全な経営基盤の確立と働き方改革のバランスを

県立広島病院 平川 勝洋 院長(ひらかわ・かつひろ)1977年広島大学医学部卒業。広島大学大学院医歯薬学総合研究科教授、広島大学副学長、広島大学病院病院長、広島県病院事業局顧問などを経て、2019年から現職。  広島大学病院長、広島県病院事業局顧問などを歴任し、この4月に就任した平川勝洋院長。自治体病院に求められる役割、また、これからの病院の体制や働く環境の整備について、早くも動き出した「改革のビジョン」を語ってもらった。 ―4月に院長に就任。力を入れているのは。  救急、小児、周産期、精神医療など、高度医療、政策医療に力を入れている病院です。その中でも救急については、昨年の救急車の受け入れが年間6000件。さらにはドクターカーを導入し、要請があればドクターが現場に出動して対応しています。まだ導入して1年たっていないこともあって明確な救命率などのデータは出ていませんが、引き続き救急の充実に努めます。 また、がんゲノム医療連携病院に昨年指定を受けました。もともと緩和ケアを含めて、歴史的にもがん治療には実績がある病院です。がんゲノム医療については、岡山大学が中核拠点病院として組織づくりが進んでいます。6月から保険収載されることで患者は確実に増えてくるのではないかと思います。 ―大きな病院が集中しているこの地域での役割は。  市内には、この県立広島病院、広島大学病院、広島市民病院、広島赤十字・原爆病院などがあります。それぞれ切磋琢磨しつつ、今後の人口減を考えると役割分担が必要だと感じています。 これらについては、広島県健康福祉局が中心となって地域の機能分化の改革を進めています。私たちも、今のままの体制でよいのか考えていかなければならないと思っています。 例えば、当院は外来患者が多いのですが、本当に高度医療を必要とする患者さんを診ていく必要があります。 実は、昨年実施したアンケートの結果によると、この病院を「かかりつけ医」として捉えている患者さんも多いのです。情報を発信し、患者側の意識も変えていかなければならないと実感しています。 さらに、在院日数が非常に短くなったので、この4月に病床数を減らしました。効率的な人員配置という意味でも、どのような効果があるか、プロジェクトチームをつくり試行錯誤しているところです。 今後さらに在院日数が短くなれば、もっとベッドを減らしていく必要があるかもしれません。これまでのように「なるべく早期の退院を進めていく」というだけでは、病床管理に限界がきます。経営者として、きめ細かな分析をしながら実行すべき時代になっていると感じています。 ―就任の挨拶で働き方改革にも言及されました。  健全な安定した経営基盤の確立、そして働き方改革のバランスをとりながら整備していくことが必要です。「県民に愛され信頼される」を理念にしながら、働いている人もハッピーである。その環境整備が私の使命であると思っています。 スタッフの配置については、例えば検査技師や薬剤師にしても本当に適正な人数なのか、見直しているところです。 仕事は増えていますが、本当にやるべきことは何か。事務にしてもICTを導入すれば省略化できて効率性が上がるのかなど、各部署で話し合っています。 この病院では4年ほど前から、各職場でテーマを決めて実践する「改善活動」に取り組んでいます。すでに土台はありますので、もっと発展できればと思っているところです。 医師のことについて言えばもう少し人員が欲しい診療科もありますが、広島大学の協力によって維持しています。当院は県立病院ですので、人材の支援の役割があります。県立安芸津病院(東広島市)、あるいは都市圏から離れている地域への診療のサポートが必要です。経営とのバランスをとりながら、対応していきたいと思います。 県立広島病院広島市南区宇品神田1―5―54☎082―254―1818(代表)http://www.hph.pref.hiroshima.jp/

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「安心とつながりの拠点」となる病院を目指して

横浜市立市民病院 石原 淳 病院長(いしはら・じゅん)1979年慶應義塾大学医学部卒業、同大学病院小児科、都立清瀬小児病院循環器科、横浜市立市民病院小児科医長・副病院長などを経て、2013年から現職。  横浜市立市民病院は横浜市の基幹病院として、がん、救急、感染症を中心に、高度医療から小児医療、周産期医療など、地域に必要な医療を提供している。2020年5月には、新病院がオープンする予定。より一層の医療提供体制の充実が期待されている。 ―病院の役割について教えてください。  横浜市立市民病院は、市や関係機関と連携し、①がん診療、②24時間365日の救急対応、③感染症医療、④小児・周産期医療など政策的医療を積極的に担っています。 なかでも感染症医療は、県内唯一の第一種感染症指定医療機関になっており、感染症病床も26床と国内でもトップクラス。県内の感染症医療における中核的役割を担っています。 また、市民に良質な医療を提供していくために、医療人材の育成に力を入れています。育成の対象者は、当院に限らず、地域医療機関、介護関連に至るあらゆる地域の医療関係者です。そうした医療人材の育成とともに、地域連携のネットワークを整備していくなど、地域医療全体の質の向上にも貢献できるように努めています。 ―新病院の構想について。  新病院の基本理念は「安心とつながりの拠点」です。「安心」は、良質な医療を提供するだけではなく、救急や災害・染症対策など、市民の安心な生活を守るということです。新病院では、これまで以上に需要が見込まれる救急医療、小児・周産期医療、がん対策に関する機能を強化します。 救急医療では「断らない救急」を目指し、救急病棟を増床するとともに、病院敷地内に併設される救急ワークステーションやドクターカーとも連携し、横浜市の救急医療体制の一翼を担っていきます。小児・周産期医療については、NICU・GCUを増床するとともに、分娩室を6室整備する予定です。 病床については多床室を現在の6人床から4人床とし、個室割合を今の倍以上に増やします。これにより患者ニーズに即した良好な環境を提供するとともに感染症対策を含めたより効率的な運用が可能です。 がん対策では、手術室を15室に増やし、最新の高精度リニアックの導入や外来化学療法室の拡充、がんサロンの設置などを行ないます。また、がんゲノム医療にも積極的に取り組みます。災害への対応も強化しています。診療棟を免震構造とし、物資の確保も含め、災害拠点病院の機能を7日間維持できるよう備蓄・整備を行ないます。隣接の三ツ沢公園とも連携し、大規模災害時にも市民に安心を提供できる体制をつくります。 一方「つながり」は、患者さんやご家族が退院後の生活を視野に入れて、安心して入院治療を受けられるよう、地域の医療機関はもちろん、在宅医療や介護、行政機関などと今まで以上に積極的に連携していくということです。管理棟に大講堂を整備し、地域医療関係者との研修会や講演会を開催したいと考えています。さらには、市民の健康管理などに関する情報を、積極的に発信していくつもりです。これからの病院は、医療だけではなく市民生活の拠点でもあるべきだと考えています。 ―病院長が目指す病院像とは。  かつては「病院らしくない病院」という表現が流行したこともありましたが、市民が当院に求めているのは、最先端で安全、確実な医療です。高度急性期医療を掲げるのであれば、機能面においては極めて「病院らしい病院」であることが必要ではないでしょうか。 そのため新病院では、さらに高度で先進的な医療の提供に努めます。 これらを実現するために、自分たちにも厳しい目を向ける必要があるでしょう。市民がわれわれに求める安心、信頼できる病院に向かって、一丸となって取り組んでいきたいと思っています。 横浜市立市民病院横浜市保土ケ谷区岡沢町56☎045─331─1961(代表)https://yokohama-shiminhosp.jp/

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