山陰労災病院 大野 耕策 院長

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2023年新病院完成 次の50年に向けて

【おおの・こうさく】 岐阜県立岐阜高等学校卒業 1974 鳥取大学医学部卒業 神奈川県立こども医療センター・ジュニアレジデント 1976 鳥取大学医学部附属病院脳神経小児科(医員/助手) 1980 九州大学医学部附属癌研究施設(医員/助手) 1981 鳥取大学医学部附属病院助手 講師 1986 米国ノースカロライナ大学脳と発達研究所客員研究員 1988 鳥取大学医学部脳神経小児科分野助教授 1993 同医学部生命科学科神経生物学講座教授 2001 同医学部脳神経小児科分野教授 2007 同医学部副学部長 2013 同名誉教授 独立行政法人労働者健康安全機構山陰労災病院院長

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◎病院新築工事

 当院は1963(昭和38)年に開院しました。当初から使っている病院建物は築54年。2018年には、新築工事を始める計画です。

 2023年完成予定の新病院は、まだ設計段階ですが、これまでなかったICUを設置し、救急医療のさらなる充実も図ります。またハイブリッド手術室も造る予定です。

 2014年には先行して、エネルギー棟が完成しています。2階部分に電源を設置しているので、万が一、津波で浸水したとしても電力がダウンすることはありません。

 現在の病院建物は1階だけでも3カ所、出入口があるため、患者さんの出入りをコントロールできているとは言い難い状況です。

 当院は高齢の患者さんが多く、認知症の方などが外に出ていったとしても把握しづらい状況です。新病院は患者さんの安全を第一に考えた設計にしなければなりません。そこで、出入口は1カ所に集約。セキュリティーシステムも入れます。

 個室は当初、全病室の40%ぐらいにしたいと考えていましたが、実際は25%ぐらいに落ち着きそうです。しかし、4人部屋でも、それぞれのスペースに仕切りをつけるなど、ある程度プライバシーを配慮した設計にする予定です。

◎「一億総活躍社会」実現のために

 政府は「一億総活躍社会の実現」を目指しています。

 そのためには、女性や高齢者はもちろん、病気がある人も働ける社会の仕組みを整えなければなりません。

 労働者健康安全機構では「治療と就労の両立支援事業」に取り組んでいます。

 この取り組みでは両立支援コーディネーターが、就労を希望する患者さんと治療している医療機関、事業所の間に入り、仲介・調整役を務めます。

 例えば脳卒中などで体の一部にマヒが残っていても、活躍できる場が必ずあります。病後や病気の治療をしながらでも働ける社会をつくっていくことが私たち労災病院の使命なのです。

 機構はこれまで、「がん、糖尿病、脳卒中、メンタルヘルス」の4分野の「治療と就労の両立支援マニュアル」を作成してきました。私たち山陰労災病院はこの内、がん、糖尿病、脳卒中の方々の支援を担うべく、事例を集め、支援のあり方について検討を始めています。

 治療と就労の支援については医学部のカリキュラムにも組み込まれています。当院に研修に来れば、治療・就労の両立支援について学ぶことが可能です。

 病気で気持ちが落ち込んでいたとしても、社会に参加することで目標が生まれ、生活に彩りが生まれます。責任が生じる、人に期待されるということは人間にとって大きなエネルギーになるものです。

 病気の人、障害のある人を含めた日本人すべてが活躍できる社会こそが本当の意味での「一億総活躍社会」ですし、これからの日本で求められてくることでしょう。

◎生き残りをかけて

 当院は「断らない救急」を掲げています。

 かつては救急車の年間受け入れ台数が地域最多でした。しかし、近年は鳥取大学医学部附属病院が救急に力を入れるようになり、ドクターヘリやドクターカーを導入。当院は2番手となってしまいました。

 現況を打破するためにも「断らない救急」をもっと徹底しなければなりません。救急の受け入れ態勢の見直しが急務です。

 また7対1病棟の施設基準を満たすためには重症患者の割合を25%以上にしなければなりません。そのために入院直後からベッドコントロールをして、在院日数を短縮する必要があります。

 急性期を脱した患者さんは早期に地域包括ケア病棟に移っていただく。リハビリが必要な患者さんは地域の回復期リハ病院に転院してもらう。そうしないと今後、急性期病院は生き残れない時代になるでしょう。

◎接遇能力向上のために

 職員の接遇教育に力を入れています。患者さんに信頼される、選んでもらえる病院になるためには、医療技術の高さ、設備の充実と同じぐらい接遇能力の高さが求められると思うのです。

 当院の放射線部の患者満足度は全国の労災病院31病院の中で中の下にありましたが、放射線部職員が接遇インストラクターの資格を取り、部内での接遇の研修とチェックをすることで2年後には上位に上がってきました。接遇能力の向上のための努力を全部門に拡大しつつあります。

◎発達障害児を支援

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 私は発達障害がある子どもたちを支援する活動をしていて、地域の学校や家庭からの教育相談に乗っていますし、当院に来てもらってもいます。

 この活動を通じて、少しでも発達障害が原因で起こる学習の遅れや対人関係のトラブル、不登校が少なくなるようにしていきたいですね。

 発達障害と呼ばれる人の中には、好きなこと、自分が興味のある分野、領域に対しては、ものすごく集中力を出すことがあります。ものすごい才能を発揮する人もたくさんいるのです。

 しっかり学校に行き、社会に出て就労ができれば、それは「障害」ではなく「個性」です。

 昔は学校の先生が「発達障害だから病院に行かせてください」と生徒の保護者に言うと保護者は拒否反応を示していました。しかし今は、私と学校の先生方との信頼関係が構築され、「大野先生のところに行けば勉強ができるようになって、友達もできるようになるから行かせてみてください」という言い方をしてくれるようになりました。そうすると、みなさん抵抗なく来てくれるようになりました。

 私は当院を引退後、発達障害の人のためのクリニックを開業し、80歳まで仕事を続けようと思っています。子どもが引きこもると親もつらいはずです。発達障害で学校に行かれない子が減り、つらい思いをする親子が少しでも少なくなるように、これからも努力を続けていきたいですね。

独立行政法人 労働者健康安全機構 山陰労災病院
鳥取県米子市皆生新田1-8-1
TEL:0859-33-8181
http://www.saninh.johas.go.jp/


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