久留米大学 神経精神医学講座 内村 直尚 主任教授

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「心のかかりつけ医」を養成する

【うちむら・なおひさ】 福岡県立明善高校卒業 1982 久留米大学医学部卒業1986 同大学院医学研究科生理系専攻博士課程修了 1992 同大学医学部神経精神医学講座講師 2007 同神経精神医学講座教授 2011 同病院副病院長兼務 2012 同高次脳疾患研究所所長兼務 2013 同医学部長兼務 2016同副学長兼務

 睡眠障害の専門外来を日本で初めて開設するなど、先進的な治療や研究に取り組んでいる久留米大学神経精神医学講座。根底には、地域や時代が求める精神科医を養成したいという思いがある。内村直尚主任教授に新たな動きも含めて話を聞いた。

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◎講座の特徴

 地域に根差し、時代に対応した臨床家の養成が大きな役割です。

 精神科医は、妊婦さんのメンタルケアに始まり、子どもの発達障害、思春期の心の問題、そして最近は、大人の発達障害や引きこもりにも関わります。老年期の認知症、世代の区別なく必要になるうつ病やがんなどの緩和ケアと、その役割は多岐にわたります。

 私は「心のかかりつけ医」として、患者さんに寄り添う臨床家を養成したいと考えています。

 もともと、当講座は、時代にあった診療や治療をすることに力を入れています。

 例えば、1981年には日本で最初の睡眠外来をつくりました。1971年に中澤洋一教授(現:名誉教授)がつくった睡眠グループがもとになっています。

 開設当時は「眠らなくても死にはしない」というような価値観があり、睡眠時間を削って、働いたり、勉強したりするのが当たり前でした。このため、不眠症は増加するものの、それを専門的に治療する医療施設はほとんどなかったのです。

 当時、遠くは北海道から来院した患者さんもいました。

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循環器疾患入院患者における
中等度以上のうつは約6%、軽度のうつは約20%

 1983年には、コンサルテーション(相談)・リエゾン(連携)精神医学の考えに基づき、精神科以外の病棟に当講座の医師が毎週足を運んで医師や看護師などスタッフから話を聞き、相談・助言を行う「御用聞き」的なサービスを始めました。

 このリエゾンは当時、大変先進的な取り組みで、現在も続けています。このようなことを実践している大学の精神科はうちだけかもしれません。

 精神科医が御用聞きをする目的は、不眠・せん妄やうつ症状といった精神症状の軽減。それによって、身体疾患の治療をスムーズに進めたり、身体疾患の増悪を回避したりするのが狙いです。

 身体的な病気と心理的な病気が表裏一体ということは、今では多くのエビデンスで示されています。他科と一緒になって、患者さんの全体を診ることは重要なポイントです。

 リエゾンを取り入れた当初は、全診療科の医師、看護師からなかなかその必要性を理解されませんでした。しかし、病棟のスタッフの反応も良く、今では、患者さんや家族も心待ちにしてくれているようです。

 また、心的外傷後ストレス障害(PTSD)にも早くから取り組んでいます。1996年、福岡空港で起きたガルーダ・インドネシア航空機離陸事故後の乗客乗員に対する心のケアでは、当講座から医師を派遣しました。

 当時トラウマという言葉はほとんど、知られていませんでした。その後は、トラウマの専門的治療、研究の実績があるということで、大きな事件、事故が起こると、当講座への医師派遣の依頼がくる、ということが続いています。

 最近では福島原発の事故後、うちの准教授が福島県立医科大学の教授に就きました。

◎久留米版ネウボラをスタート

 今年度から久留米大学医学部および人間健康学部と久留米市が協力して、子育て支援の新たな仕組みづくりに取り組んでいます。10月以降、子育て支援センターを市内4カ所に設置。ここでは、保健師などを配置して子育て世代の相談に常に応じられるようにします。

 子どもが生まれる前から小学校入学前までの長い期間を、医療や行政が一体となってサポートするもので「久留米版ネウボラ」と考えています。「ネウボラ」は、もともとフィンランドの子育て支援のシステムで、その意味は、「相談の場」です。ご存知の通りフィンランドは福祉先進国の一つで、共働きが当たり前。このため、子育て支援においても、見習うべき点があります。

 近年、日本では妊産婦の鬱(うつ)や、親から子どもへの虐待が増えています。最近では、出産後半年が、一番虐待が多いこともわかってきました。

 背景には、核家族化が進み、相談する相手やサポートしてくれる人が少なくなっていること、共働きが当たり前となり、出産ぎりぎりまで働く人が増えているということで、ストレスを多く抱えてしまうなど、社会の急速な変化があります。

 妊娠がわかった時から、母親のメンタルを支援するネウボラがあり、そこを中心にして、地域の産婦人科医、小児科医、精神科医、行政などが連携することで、子どもの成長に合わせた切れ目のない支援ができます。

 「久留米市は、子育てに優しい町ですね」と言われるようなシステムを目指します。

◎今後力を入れること

 20年ほど前から、身体疾患と睡眠やうつとの関係の研究を続けています。

 不眠・睡眠時無呼吸症候群(SAS)やうつが、身体疾患によって引き起こされたり、逆に不眠・SASやうつが身体疾患の誘因になることもわかってきました。

 他科との共同研究も多く進めています。例えば、循環器内科では入院患者に睡眠やうつなどに関するスクリーニングを取り入れています。

 それによると、循環器疾患で入院する患者さんの58.5%はSAS。42%は不眠、26%はうつでした。つまり、睡眠障害やうつを治療しないと、多くの循環器疾患を治すことは難しいのです。

 睡眠は、発達障害の誘因の一つでもあります。小学校入学前は、10時間程度の睡眠が理想ですが、これが足りていないと、肥満、低身長、キレやすいなどといった症状に現れます。

 睡眠不足によって、前頭葉の機能が低下し、認知、記憶、意欲や集中力、感情コントロールなどの面で影響をおよぼすためです。

 日本人の平均睡眠時間は、戦後すぐに比べると、現在1時間程度短く、6〜7時間前後になっていると言われます。

 日本がもっと、睡眠の重要性を意識した社会を作るためにも、アカデミックなデータを出す研究に、今後も力を入れていきます。

◎医師国家試験対策にも"睡眠"

 睡眠の充実が、パフォーマンスに大きく影響することは、スポーツ界ではもはや常識です。

 大リーグのイチロー選手、元水泳選手の北島康介さんなどの一流選手は、試合の開始時間に合わせて起床。そうすることで、最大限のパフォーマンスすなわち実力を100%引き出します。

 本学では、2月の医師国家試験の半年前の7月に私が講義をし、学生に朝型のリズム作りを推奨します。国家試験の開始は午前9時30分。脳や体は、起床後3時間経つと、活発に動きますので、これに合わせてリズムを整えます。

 11年前から、これを続けていますが、番狂わせがなく実力通りの結果が出るため合格率にも、大変良い効果をもたらしています。

◎来春、新施設オープン

 現在、本学では基礎3号館と病院北館の新設工事を進めています。

 基礎3号館(動物センター)は、6階建て。学生が利用するスペースのほか、2階、3階には、企業との共同研究をする基礎研究室を設けます。

 病院北館は5階建て。1階には、放射線治療センターをつくります。2階からは、初期研修医、専攻医のための部屋をつくり、研修医のアメニティーを充実させようと考えています。

 いずれも、2018年2月に竣工、4月オープンを目指します。

久留米大学 神経精神医学講座
福岡県久留米市旭町67
TEL:0942-35-3311(代表)
http://www.neuropsy-kurume.jp/


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