医療と法律問題|九州合同法律事務所 弁護士 小林 洋二

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 やや順序が前後するようですが、今回は、医療機関が開示義務を負う記録の範囲について検討します。

 この点については第27 回で述べたとおり、基本的には、診療録その他患者の診療の過程で作成された記録一切です。まだカルテ開示の議論が成熟していない時代は、客観的な身体状況の記録のみが患者の個人情報であり、医師、看護師による評価は、評価した医療従事者の個人情報だとの見解もありました。しかし、現在では患者に対する評価に患者の個人情報という側面がある以上、客観的な記録と同様に開示の対象となると考えられています。また、開示できるのは自分の医療機関で作成した記録のみで、外の医療機関から入手した診療情報提供書は開示できないという医療機関もありましたが、自分の医療機関で保管している情報である以上、作成者の如何を問わず、開示義務を負います。診療記録の保管期間内かどうかも関係ありません。法律で定められた保管期間を超過していても、現実に保管している以上、開示義務を負います。

 最近たまに問題になるのは、検査、手術を撮影した動画です。CTやMRIなどの画像は、概ねデータの形で開示されるのですが、動画については、「これこれこういう場面を収録した動画があるのではないか、あれば開示されたい」と別に要求して、医療機関の方で、改めて開示するかどうかを検討するという経過になることが多いようです。

 どうしてこのようなことになるのか、わたしも十分に理解しているわけではないのですが、おそらく、医療法二一条一項九号で義務付けられている診療に関する諸記録が、同法施行規則二〇条一〇号で、「診療に関する諸記録は、過去二年間の病院日誌、各科診療日誌、処方せん、手術記録、看護記録、検査所見記録、エックス線写真、入院患者及び外来患者の数を明らかにする帳簿並びに入院診療計画書とする」と規定されていることと関係しているのではないでしょうか。つまり、エックス線写真を撮影した場合、法律上保管が義務付けられているけれども、検査や手術の動画を撮影しても、それを保管することは法律上義務付けられてはいません。そのために、動画は、法律上保管が義務付けられた診療記録とは別に管理され、開示が求められた場合でもその範囲外とする取扱が多いのではないかと思われます。

 しかし、個人情報保護法上開示義務を負うかどうかは、法的な保管義務に基づいて保有している情報か否かに左右されるものではありません。もともと、これほど画像診断が発達した今日、「エックス線写真」のみを保管義務の対象としている医療法施行規則は改められるべきだと思いますが、それとは無関係に、医療機関は保有している全ての個人情報について開示義務を負うのです。患者の検査や手術の動画がこれに含まれることは当然のことです。もちろん、その動画が、患者の診療記録と一体的に保管されているか、別に保管されているかも無関係です。

■九州合同法律事務所=福岡市東区馬出1丁目10-2 メディカルセンタービル九大病院前6階
TEL:092-641-2007


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