九州合同法律事務所 弁護士 小林洋二

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医療と法律問題 34

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 前号まで、8回にわたり、主として個人情報保護法上のカルテ開示制度について述べてきましたが、今回はそれ以外の法律のカルテ開示制度をみることにします。

 旧国立病院は独立行政法人国立病院機構のもとに再編され、そこでのカルテ開示は「独立行政法人等の保有する個人情報の保護に関する法律」に従うことになりました。また、国立大学が国立大学法人として独立行政法人通則法の適用を受けることになり、その付属病院でのカルテ開示も、この法律によることになります。

 この法律によるカルテ開示は、2つの点において、個人情報保護法によるカルテ開示と異なっています。

 ひとつは、開示が拒否された場合に患者が取り得る方法です。個人情報保護法の場合、現状では主務大臣の勧告を求めるしかありませんが(前号で説明した改正部分施行後は、医療機関に対して直接的にカルテ開示請求訴訟を起こすことが可能になります)、独立行政法人が行った開示拒否の決定に対しては、行政不服審査法に基づく審査請求あるいは行政事件訴訟法に基づく取消訴訟を起こすことができます。

 もうひとつの相違点は、代理人による開示請求です。個人情報保護法の場合、「未成年者又は成年被後見人の法定代理人」、または「開示等の求めをすることにつき本人が委任した代理人」が本人に代わって開示請求をすることができるのですが(個人情報保護法二九条三項及び法施行令八条)、独立行政法人個人情報保護法の場合、前者のみが規定されています(法一二条二項)。つまり、わたしたち弁護士が患者さんの委任状をつけて医療機関にカルテ開示を求めても、「本人ではないから」という理由で拒否されることがあるわけです。

 カルテ開示請求は患者の自己情報コントロール権の問題であり、代理人による開示請求を認めない理由はありませんし、また、一般的な医療機関と独立行政法人の設置する医療機関とで取扱いが異なる理由もありません。要するに、患者本人の意思がきちんと確認できさえすればいいわけですから、その方向での改正あるいは柔軟な運用が望まれるところです。

 なお、この法一二条二項の規定は、平成25年制定の「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律」(いわゆる「マイナンバー法」)三〇条二項により、「特定個人情報」に限って、「本人の委任による代理人」を加えて読み替えることになっています。「特定個人情報」というのは、この「マイナンバー法」で創設された概念で、「個人番号をその内容に含む個人情報」をいいます。つまり、「個人番号をその内容に含む個人情報」であれば、法定代理人だけではなく委任を受けた代理人でも開示請求が可能であるということです。

 いまのところ、個人番号は診療情報の分野では利用できないことになっており、診療情報が「特定個人情報」に該当することはなさそうです。しかし、個人番号を含む情報であれば代理人でも開示請求可能なのに、個人番号が含まれていない情報は本人でなければ開示請求できないというのも、いかにも釈然としない話であり、将来的には何らかの整理が必要になるものと思われます。

 このほか、公立病院の場合には各自治体の個人情報保護条例によるカルテ開示が行われていますが、私が調べた限りでは、どの自治体も、独立行政法人におけるカルテ開示制度とほぼ同様の仕組みになっているようです。

■九州合同法律事務所=福岡市東区馬出1の10の2メディカルセンタービル九大病院前6階
☎092・641・2007


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