福岡県医師会の定例記者会見が3月16日福岡県医師会館で行われ、松田会長をはじめとする医師会の理事から報告が行われた。話題は予防接種をめぐる最近の話題、久留米市における自殺予防対策、日本の医療を守る国民運動福岡大会、花粉情報などで、中でも東北地方太平洋地震災害対策本部について注目が集まった。
【会長挨拶】福岡県医師会 松田 峻一良 会長
まず、東北地方太平洋沖地震でお亡くなりになられた方にお悔やみ申し上げるとともに、被害に遭われた皆様に心からお見舞い申し上げます。ご存知の通り11日に発生したこの地震では我々の想像をはるかに超える事態で大変ショックを受けております。
地震・津波による被害でいくつもの町が崩壊し、映画をみているような感覚でありました。まだ行方不明者が多数いらっしゃると連日報道されていますし、それに加えて福島原発の問題も非常に重要な事態を迎えています。まだ全貌がまったく見えてない状況ですが一刻も早く人命の救助、そして復興を願ってやみません。
私も11日に東京におりまして地震を体験しました。毛布一枚と緊急の食料、水のペットボトル2本をいただき空港で一晩過ごしました。このとき水のありがたさを改めて思い知りました。今、被災地ではたくさんの方が避難所に集まり雪が降る寒い中で生活されています。どのような気持ちで生活されているのかを考えると本当に胸が痛くなります。
被災地である東北地方や関東地方だけでなく、日本全体の問題であると思いますので、福岡県医師会県下の会員の力を結集して日本医師会の下に一人でも多くの命と健康を守る為に協力していきたいと考えております。
予防接種をめぐる最近の話題(HPV、Hib、小児用肺炎球菌ワクチン)
今回特別処置としてHPV、Hib、小児用肺炎球菌ワクチンという3つのワクチンが公費負担で接種できるようになりました。しかし、小児用肺炎球菌ワクチンとHibワクチンの同時接種により6例程の死亡例が確認されたことから3月4日から接種を見合わせることになりました。死亡原因は3例が心臓病、他3名は基礎疾患が明確でなく、3月8日の専門家会議では同時接種が関与したかどうか否定も肯定も出来ないという結論となり、現在様々な情報を集めている状況です。
福岡県医師会の取り組みとしては接種が再開された段階あるいはHPVについては福岡県内どこでも県民が接種できるように明日の理事会で承認を受けたいと思っているところであります。
ヒトパピローマウイルス(HPV:human papillomavirus)とは、1983年にHPVが子宮頸がんを引き起こすというのをドイツのHarald zur Hauzen(ハラルド・ツア・ハウゼン)氏が発見し2008年にノーベル医学生理学賞を授与されています。HPVには100以上の型があり、この中の15種類ががんの発症に関しているとされます。子宮頸がんの八書には16型と18型が約70%に関係していることから子宮頸がん検診受診も非常に重要であるといえます。子宮頸がんワクチンはがんのHPVの感染を予防することが発がんの予防につながるということで開発されたワクチンです。
今回問題になっているのは需要に供給が追いつかないということです。厚労省や日本医師会から2点通達が出ております。1点は当初3月の時点で高校1年生の対象者にワクチンがいきわたる予定でしたが足りないということで当分の間、2年生になっても対象とできることになったという通達。2点目は、ワクチンの供給状況を踏まえ、当分の間初回接種者への接種を差し控え、すでにワクチンを開始した者への2回目・3回目の接種を優先するという通達でした。
副反応については1月31日の報告分までをまとめるとのべ100万人に対して製造販売業者からの報告が99人、医療機関からの報告で29人。そのうち11人が重篤となった。11人のうち専門家が分析した結果、医療的に即対応が必要な状態は2例のみでした。
巷に問題になっている失神をきたすなどの症状を断定できるものはないということで、どのように予防するかというとあらかじめ痛みに対する情報を提供すること、あるいは座位や寝た状態で注射をすることで防いでいこうという方針で継続的に事業を続けていきます。
福岡県医師会東北地方太平洋地震災害対策本部設置について
3月14日(月)緊急の役員会を開いて福岡県医師会の災害対策本部を設置致しました。その際に福岡県の医師会としてどのような支援・対応ができるのだろうかということを話し合いました。その結果、基本的には日本医師会と連動して情報が分散してバラバラな行動にならないように一元的な対応ができるように日本医師会との連携を主体において活動を展開していくということになります。
ご存知のようにDMATも初日から活動を開始しましたが、現地に行ってそのまま戻ってくるという状況になっております。日々刻々と状況が変わっておりますが、地震当初から検死をするドクターが足りないということで、速やかに検死医の募集を各郡・市の医師会を通じて行い、現在7名の登録があります。
日本医師会の災害医療チームJMATについては医師1名看護師2名事務1名をひとつのチームとして活動します。各都道府県医師会でチームを形成し日本医師会に登録します。登録数は全国で100チームを予定しており、福岡県医師会でも速やかにチームを形成し登録をおこなってまいります。
登録後の動きとしては被災地と日本医師会が連携を取り、派遣するJMATを調整し都道府県医師会に伝達し連絡のあった該当JMATが支援活動を実施するという流れになります。福岡県医師会では派遣の要請があるまでに警察署へ通行証発行の手続きや、必要な資器材、携行食料品等の調達といった準備も行います。日本医師会からの連絡で九州ブロックは茨城県へ派遣することになります。九州全体で支援の方法を話し合いバラバラにならないよう情報を共有し団結していきたいと思います。
また、義援金の問題については日本医師会の連絡に従いできるだけ取りまとめて支援させていただきたい。派遣する医療関係者への支援の問題については福岡県医師会独自で派遣される医療関係者への支援を検討していきたいと考えております。
長期化すると慢性患者さんの搬送や受け入れについての問題もあります。九州は被災地から遠いこともありますので、しっかり情報を把握した上で万全な受け入れ態勢を整えていけるよう取り組みたいと思います。全ての支援にあたっては日本医師会と互いにしっかり情報を共有し団結して支援していくことが重要となります。
日本の医療を守る国民運動福岡大会について
3月14日に行われた「日本の医療を守る国民運動福岡大会」ではTPPの問題についてなどの決議がありました。我々医療関係者の中には外国資本の参入が皆保険制度を守っている我々の医療界にとってプラスになるのかどうか、以前から市場原理の導入を求められてきた経緯があります。このTPPを契機にそれを後押しする総合特区の問題、自由診療の拡大、保険診療の縮小につながるのでないかという懸念があります。
医療関連の30数団体が集まり福岡大会を開催しました。決議では「医療に市場原理主義が導入されれば、わが国の優れた公的医療保険制度は崩壊し、二度と取り戻すことができなくなる。そのため、国民皆保険制度の下、いつでも、どこでも、だれでもが公平に受けることが出来る医療を、これからも断固守り続けていく」という内容が満場一致で決議されました。
福岡県における花粉情報システムについて
花粉症患者を対象として花粉症の予防・治療を目的とした花粉情報システムを福岡県医師会のホームページで公開しております。期間は1月31日~4月30日(報道期間は2月1日~4月15日)までです。スギ花粉の飛散状況は2月の後半にピークを迎えています。まだまだ飛散が多い状況で天候に左右されています。寒い日が続いた後15度前後の日が続くと多く飛散するという状況です。雨の日は飛散が抑えられ、風の日は多くなるという傾向です。福岡県医師会のホームページアクセス状況を見ると福岡県内、九州各県ともに例年より多くアクセスされており、今年は花粉が多いという一つの裏づけとなっていると思います。
- 福岡県医師会ホームページ
- https://www.fukuoka.med.or.jp/
- 花粉情報ページ
- https://www.fukuoka.med.or.jp/kafun/kafun.htm