「人と人との思いを結ぶ」
デザイン会社勤務などを経て、ながさわ結納店の2代目に
5月、北九州市で行われたG7(先進7カ国)エネルギー会議。各国の大臣に「博多水引」で作られた扇梅型のボトルリボンが福岡県の土産物として贈られた。
「会議に参加したキャロライン・ケネディ駐日大使は水引に大変興味を示し、熱心に質問をされたそうです」と笑顔を見せるのは、企画から制作まで手掛けた博多水引デザイナー、長澤宏美さん。福岡市にある「ながさわ結納店」の2代目だ。
水引は、和紙をのりで固めて作る細いひも。それを組み合わせた水引細工は、結納品やご祝儀袋などに主に使われてきた。
8年前、父で水引職人として県の優秀技能者でもある宏昭さんの跡を継ぐことを決意した長澤さん。色の組み合わせや編み方次第で、花や生き物などさまざまな表現ができる水引細工の魅力に、一気に夢中になった。
しかし、家業の置かれた状況は厳しかった。婚姻率は低下し、2014年度と15年度は過去最低の5・1%。結納自体を行う人も半減し、ながさわ結納店が扱う数も減少していた。
思い悩む中、考えたのが「使える水引」「結納時以外にも飾れる水引」への用途拡大だった。「実際に見て、使わなければ、水引の良さはわからない。手に取ってもらえる商品を作りたい」(長澤さん)
デザイン会社にグラフィックデザイナーとして勤務していた経験と、「男性も気軽に使えるようなものが欲しい」「長く飾れるようなものを」などの周囲の意見を参考に試行錯誤。福岡になじみのある梅を模した「ボトルリボン」=写真を、5年前に生み出した。
この作品を、友人や知り合いの飲食店主などに見せると好反応。「購入したい」という声に応えて販売すると、口コミで人気が広まっていった。
その後も箸置きや正月飾りなど、さまざまなものを水引で制作。その独自な色とデザインは女性誌で取り上げられるなど、高い評価を受けている。
現在の課題は、輸入物など安価な水引との差別化。「手作りの水引細工は色落ちせず、耐久性も高い。水引の魅力だけでなく、手作りの良さも伝えていきたい」という。
今、長澤さんは展示会のため、全国各地を飛び回る日々。そこでの出会いが、また新たな作品づくりにつながっている。「人と人を結ぶ水引という日本の文化を、私なりの感覚で伝えていきたい」。長澤さんの挑戦は続く。
博多水引デザイナー・長澤宏美さんと九州医事新報社がコラボ!
九州医事新報社は、長澤さん制作のオリジナル「ピンクリボン」を1個700円(税別)で販売。学会の記念品としても採用された。現在、販売は終了している。