福岡県医師会定例会見 インフルエンザワクチン接種事業ほか

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松田 峻一良 会長

福岡県医師会の定例記者会見が9月17日開かれ5つの事項が報告された。会見の冒頭、松田峻一良会長=写真=は帝京大学病院における多剤耐性アシネトバクター菌感染問題について「健康な人への病原性は低いので県民のみなさまには冷静な対応をお願いしたい。また、現段階での警察による捜査は、医療現場の萎縮を招き医療の崩壊につながりかねない。国民の利益にもならないため大変憂慮している」と発言した。会見要旨は以下の通り。

1.今年度のインフルエンザワクチン接種

10月1日から始まる接種に使用するインフルエンザワクチンは3価。A/H1N1 (pdm) 、A/H3N2、B型の3種の株で製造する。供給量は最大2937万本で成人5874万人分に相当する。昨年のように優先接種対象者は定めない。ただ、昨年の流行をみると若年層、基礎疾患保有者、妊婦がハイリスクグループであることに変わりはない。インド、オーストラリア、ニュージーランドでは新型インフルエンザの流行が続いている。日本では全国的な流行は見られないが散発的に集団発生が報告され注意喚起が必要だ。

季節性インフルエンザは香港で流行しており、病床が不足する事態になっている。国内でも9月6日から11日の1週間に小学校5施設、幼稚園と中学校各2施設がインフルエンザにより休校(園)、学級閉鎖されている。小集団での発生が散見されており今後ある程度の流行を覚悟した方が良いだろう。

2.日本脳炎の予防接種について

平成17年5月30日付で厚生労働省は日本脳炎ワクチン接種と重症の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)に因果関係があると判断したため日本脳炎ワクチン(マウス脳由来)の積極的接種勧奨を行わないよう勧告した。

平成21年6月2日付で新たなワクチンとして「感想細胞培養日本脳炎ワクチン」が第1期予防接種に使用するワクチンとして位置づけられたが、供給予定量が使用量に満たないこと、ワクチン使用経験の少なさから積極的接種勧奨、第2期での使用ワクチン適用は見送られた。

平成22年4月より第1期の標準的な接種期間に該当する者に対し、積極的勧奨を再開した。その後、8月27日付で「予防接種実施規則」の一部改正が交付され、同日施行された。改正点は

  • a.日本脳炎予防接種第2期のワクチンとして乾燥細胞培養ワクチンを適用する
  • b.勧奨差し控え期に第1期接種を受けなかった方への救済措置を設けるとなっている。

日本脳炎患者の発生数は集団接種の継続により年間10人程度まで減少したが勧奨差し控え期の05年頃から、やや増加傾向にある。

3.生活習慣病と特定検診、特定保健指導の実施状況

高齢者の医療の確保に関する法律に基づき平成20年度から「特定健康診査・特定保健指導制度」が開始された。実施主体の保険者は、年度ごとの実施状況を社会保険診療報酬支払基金に報告されることとされ、この度これらの報告が取りまとめられた。集計の対象は3519保険者。平成20年度特定健康診査の対象者数は約5190万人、受診者数は約1900万人で特定健康診断の実施率は38.3%だった。

性・年齢階級別の実施率は40~50歳代で高く、性別では特定健康診査は男性が42.3%、女性が34.3%で男性が高かった。男性は60歳未満で高く、60歳以上で低い傾向が見られた。女性は年齢による受診率に大きな差は認められず、65~69歳の年齢階級で最もなかった。

保険者の種類別の実施率は、組合健保、共済組合で高く、市町村国保、国保組合、全国健康保険協会、船員保険において低いという二極構造となっており、後者の実施率向上のための取り組み強化が必要である。被用者保健は、いずれも男性より女性の実施率が低く、被扶養者に対する受診機会の確保、充実が必要である。

4.妊婦検診における成人T細胞白血病の母子感染予防対策について

福岡県は、成人性T細胞白血病(ATL)を引き起こすヒトTリンパ球向性ウイルス1型(HTLV-I)の母子感染を予防するため来年度から妊婦スクリーニング検査を公費助成することを決めた。患者さんだけでなく医療関係者向けのパンフレットも用意されており、陽性と判明した場合には十分に配慮して告知するようにしている。母乳を介して母子感染が成立することを説明した上で、人工乳か短期母乳哺乳(生後3カ月まで)を勧めている。ただし、一律に母乳哺乳中止を強要することがあってはならない。最終的には本人の意思、自主性にゆだねることが肝要である。

日本は先進国で唯一のHTLV-I 浸淫国(キャリアは推定108万人)で国が率先して取り組むべき課題である。特に九州、沖縄から大都市圏への分布拡散の傾向がみられ、速やかに対策を講じるべきである。

5.平成22年度診療報酬改定影響調査の結果

当医師会は1月から福岡県メディカルセンター保健・医療・福祉研究機構(医福研)と共同で「レセプト集積事業」を実施した。分析対象はことし1~6月分までのレセプトで、8月末までに計151の医療機関から提出されたものでデータは匿名化されている。内訳は病院が102(DPC病院21施設を含む)、診療所(有床診療所11施設を含む)診療報酬改定の影響調査や医療計画策定の基礎資料とするのが目的である。

この度、4~6月分のデータの収集、分析を行ったのでその結果を公表する。結果は以下の通り。

入院、特に急性期を担うDPC病院の入院1人1日単価上昇が顕著であるのに対し、診療所の外来については1人1日単価の減少という実態が明らかになった。診療所における再診料の引き下げと手術料、入院料等に診療報酬の重点的な配分がされたことによるものだと推測される。

また、全体の収入である総点数でみると病院が入院3.5%増、外来1.3%増、診療所は入院2.2%減、外来0.3%増となっている。この点においても病院に手厚い改定であったことが分かる。今回、病院に手厚い改定を行ったのは勤務医の負担軽減という目標があったためである。今回の調査で負担軽減につながる、あるいは負担軽減のための活動を実施していることを条件にした加算項目の算定を行っている病院医療機関が全体の32.3%。病院における勤務医負担軽減の取り組みに関する改定項目の算定が功を奏しているようだ。

福岡県医師会としては、今回の勤務医の負担軽減策により、実際に負担が軽減され救急、小児、産科、外科等の医療現場の手助けとなることを望む。崩壊しつつある地域医療を再生するには、大規模病院だけでなく診療所や中小病院を含めた全体の底上げが不可欠だと考えている。


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