九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

がん治療と急性期医療を柱にまい進したい

独立行政法人労働者健康安全機構香川労災病院吉野 公博 院長 (よしの・きみひろ)1977年岡山大学医学部卒業。米ニューヨーク大学留学、香川県立中央病院、住友別子病院、香川労災病院脳神経外科部長、副院長などを経て、2017年から現職。  地域医療構想により、香川県では中讃、西讃地域が西部構想区域として一つになり、さらなる専門性の追求、機能分化が必要不可欠となった。就任当初から変わらず、「がん治療と急性期医療」を柱に掲げる吉野公博院長に、現状と今後の取り組みについて聞いた。 ―スーパーICUの稼働状況は。  急性期医療やがん治療を担う病院として、手術室や医療機器、ICUなどインフラの整備に多くの費用を投入してきました。地域医療構想で、医療圏が変わり、西部構想区域という形になりました。中讃から西讃までエリアが広がりましたが、当院の果たすべき役割は変わらないと思っています。 2018年、ICUの改修を行い、「スーパーICU(特定集中治療室)」となりました。施設的な規模だけではなく、臨床工学技士(CE)が少なくとも1人は、ICUに常駐という要件があります。人員と設備の基準をクリアし、現在は8床が稼働しています。 また、2019年の6月に手術支援ロボット「ダビンチ」を導入しました。当院は香川県地域がん診療連携拠点病院ですが、五つある拠点病院等の中で、ダビンチを導入してないのは当院のみでした。通常は500床、600床の病院が持つ機器で、404床の当院に導入するのはどうかという意見もありました。しかし、手術の件数も多く、思い切って導入を決めました。 泌尿器科が主体となり、ダビンチで手術を行っています。今後は外科でも腹部の手術に活用していきたいと考えています。 ―今後の方向性は。  診療報酬の改定や地域医療構想などで目まぐるしく、5年先、もっと言えば1年先の状況も明確に分からない時代です。しかし、だからこそ、小手先の改革に走るのではなく、これまで通り、「がん治療と急性期医療」を柱に進んでいこうと思います。 回復期リハビリ病棟や地域包括ケア病棟をつくることは考えていません。私たちがその役割を担わなくても、回復期以降の患者さんを受け入れてくださる病院が地域にあり、以前から連携を組んで治療を進めてきました。回復期リハ病棟のある病院、リハビリを強みとされている病院などと、連携を確立しています。   もちろん課題はあります。地域医療構想でエリアが広がったとはいえ、私たちがカバーしている人口は20万〜25万くらいでしょう。団塊の世代が85歳を超える時期には、もっと人口が減ります。今後どのように再編されるのか、医療業界全体の先行きは不透明ですが、インフラも人員も備えている以上、当初掲げた方針を貫きたいと思っています。 ―治療就労両立支援部とは。  労災事故が少なくなってきている今、どのようなサポートができるのか。その発想から生まれたのが「治療就労両立支援」です。当院では患者サポートセンターの中に両立支援部門を設置。特にがん患者さんが、治療と平行して仕事を継続できるように支援しています。医師や看護師、ケースワーカーなどが入り、会社の方にご理解いただきながら、就労を継続する方法を模索していきます。労働人口が減ってきている中、社会的にも意義のあるサポートだと思います。 2019年2月にはハローワークとの連携も始めました。働く意志はあるけれど、どうしても今の職種では仕事を続けられないという方がいらっしゃいます。そういう場合に、ハローワークと連携することで、「こんな仕事がありますよ」と求人情報を出してもらえるようになりました。この治療就労両立支援については、当院で治療を受けていない患者さんからの相談にも対応しています。今後も労災病院としての存続をかけて患者さんの就労支援に取り組んでいきたいと思います。 独立行政法人労働者健康安全機構 香川労災病院香川県丸亀市城東町3―3―1☎0877─23─3111(代表)https://www.kagawah.johas.go.jp/

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人口減少時代を見据え急性期から基幹病院へ

京都第一赤十字病院池田 栄人 院長(いけだ・えいと)1978年京都府立医科大学卒業。京都第一赤十字病院第一外科、同救命救急センター長、同副院長、同経営戦略室長などを経て、2017年から現職。  地域医療の拠点として、高度急性期医療をトータルで担ってきた京都第一赤十字病院。高齢化、人口減少が進む中、地域の医療ニーズが多様化し、病院運営を取り巻く環境は大きく変わりつつある。安定した経営を続けていくための手だてとは。 ─病院運営について聞かせてください。  これまでの「京都府南部最高の高度急性期病院を目指す」という目標から、今後は「京都府最高の高度基幹病院を目指す」に転換していこうと考えています。 2019年は、手術支援ロボット「ダビンチ」を導入し、循環器内科におけるカテーテルアブレーション治療を開始。さらに、頭頸部や下肢疾患に対する検査・治療を行うバイプレーン型アンギオ装置、リハビリ支援ロボットなども導入したことで、より高度な医療が提供できるようになりました。 がん診療においては、さらなる充実に向けて、2020年11月に緩和ケア病棟を開設する予定です。総合的ながん医療を提供できる体制を整え、将来は、「がんセンター」化を目指しています。 さまざまな設備投資の結果、思った以上に支出が増え、収支がやや厳しい状況になってきています。さらに、高齢化と人口減少が進み、急性期病院は新規の入院患者の獲得が難しい状況に。今後は、地域と密接な連携をとり、患者さんをリピーターとして確保していくことが必要になってきています。 それらを踏まえ、今後は多様な疾患に対応し、地域から頼りにされる〝高度基幹病院〟の役割を担っていきたいと考えています。転院された患者さんが、再び入院が必要になった際に、当院を選んでいただけるような病院像を目指さなければなりません。 ─働き方改革の取り組みについて。  時間外労働を減らすためには、賃金体系を見直す必要があります。時間内に効率良く仕事ができる能力を、正当に評価できるシステムを整えなければ、働き方改革はいびつなものになってしまうでしょう。 しかし、賃金などのシステムはすぐに改善できるものではありません。そこで、生産性が向上するための取り組みを、まずは実践していくつもりです。  一つ目は、効率良く仕事ができるよう、単純なことですが机や棚の整理整頓、そして無駄な手順などをなくす業務フローの見直しを行っていきます。二つ目は、クリニカルパスを利用して、治療や業務を〝見える化〟し、チーム医療を促進していきます。 三つ目は、タスクシフト・タスクシェアの浸透です。人員を増やせない以上、多職種が相互支援しながら、横断的に対応できる体制の整備を、早急に進めているところです。 ─今後の展望は。  志を同じくする病院と医療の質を高めながら協力するのが、私たちの目指す地域連携です。患者情報を共有するために、地域の先生方と一緒にカンファレンスを行い、患者さんの状況を理解した上で、受け入れていただくようお願いしています。 一つの病院ですべてのことができる時代ではありません。基幹病院を目指す以上、「病気だけではなく、患者さんの一生をみていく」という気持ちが必要です。このようなシステムづくりを今のうちに進めていかなければ、これからの人口減少時代に、生き残っていけないのではないかと危機感を持っています。 当院は「愛」「誠」「夢」の三つの精神を掲げています。「愛」は優しさ、思いやりや利他の精神、「誠」は正しく公平な医療の遂行や迅速な対応、「夢」は目指す夢を持つこと。効率的な経営だけを考えるのではなく、医療人として大切なこの三つの精神を、心得として持ち続けることが大切だと思います。 京都第一赤十字病院京都市東山区本町15―749 ☎075―561―1121(代表)http://www.kyoto1-jrc.org/

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「こども病院」ならではのケアで母と子に安らぎを

兵庫県立こども病院中尾 秀人 院長(なかお・ひでと)1978年神戸大学医学部卒業。同附属病院、兵庫県立淡路病院(現:兵庫県立淡路医療センター)、姫路赤十字病院などを経て、1994年県立こども病院入職、2017年から現職。  国内2番目の小児専門病院として開設され50年。小児がん医療、小児心臓、小児救命救急の各センターと総合周産期母子医療センターの機能を併せ持つ。ここで四半世紀を歩んできた中尾秀人院長が抱く思いとは。 ―こども病院が母体の総合周産期母子医療センターです。役割は。  リスクに対応した周産期管理や治療を行うだけでなく、状況に応じて最善の選択ができる環境を整えています。主たる使命は五つ。一つ目は、超早産児の医療。妊娠28週未満や体重1000㌘未満の超低出生体重児に、長期的展望に立ったケアを行います。赤ちゃんが大人になる過程において円滑に成人期医療に引き継げるよう、移行期医療の見通しを立てます。 在宅酸素療法や在宅人工呼吸管理などの医療的ケアが必要となる赤ちゃんもいます。地域や家庭で過ごすには多くのサポートが必要ですから、各時期に適切に受けられるようコーディネートしなくてはならない。その出発点としての役割も大きいですね。 二つ目は、ハイリスク多胎児の医療。胎児期早期から一貫して周産期管理を行います。リプロダクティブ・ヘルス/ライツ(性と生殖に関する健康/権利)の発達で三つ子や四つ子は減っているものの、50人に1人は多胎児。特有の問題が顕著なため、関連部門と協力して解決しています。 三つ目は、出生前診断例を含む先天疾患がある子の包括的・集学的医療。外科的治療も含めて、最善の時期の選択を考慮します。 四つ目は、いわゆる予後不良児のターミナルケア。染色体異常や致死的疾患がある子に対する緩和医療も含みます。ここで大切なのは、何が最善か、多様な選択があることへの理解を深めること。医療的ケアの子を家庭でみるのも強制ではいけない。親御さんが追い詰められないよう、さまざまな方法を示したいと考えています。 五つ目は、地域との連携。子どもが生活する地域の施設に橋渡しを行います。退院時には、ご両親の了解のもと保健所にサマリーを配布。近くのかかりつけ医を紹介します。 同じ悩みを持つ家族同士のピアカウンセリングを案内する場合も。押し付けにならないよう、時間の経過やタイミングを計るなど経験も必要です。 ―胎児に疾患が見つかった場合や、出生後の家族に対するケアは。  チーム医療の出番です。医師だけでなく臨床心理士や遺伝カウンセラーなどの意見も交え、生活につながる情報を提供します。ただ、今の医療はガイドラインやマニュアルで一定の質を保証しますが、個人の考えや価値観を尊重することとの両立は難しい。ご家族にとって大事なのは、その子が助かるかどうか。思いを理解しつつ、背景も考えて相談に当たります。 たとえ、子どもが亡くなった場合であっても、ご家族には、その時にとった方法が最善の選択だったと思ってもらいたい。1分1秒を延命する医療とは違う価値観です。ご家族が状況を受け入れられる環境づくりに留意し、グリーフケアにつなげていきたいと考えています。 課題は、マンパワー不足。これに尽きます。産科医、小児科医の不足は深刻です。現状では、より集約化を進めるしかない。人口集積地と過疎地で、医療供給体制を同じように整えるのは困難で、分娩の場所や搬送方法の再編を考えるのが現実的です。 疲弊し、他の部門に移る医師もいます。しかし、喜びの多い領域であることも事実です。しっかりと評価し、報酬という形で頑張りに応えることで、立て直せると信じたい。さらには子どもの未来を守るため、AIやIT技術の活用を進めるなど、手を打っていくしかありません。 兵庫県立こども病院神戸市中央区港島南町1―6―7☎078―945―7300(代表)http://www.hyogo-kodomo-hosp.com/

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臨床・研究ともに追究し、専門性の高い教育を目指す

滋賀医科大学医学部 産科学婦人科学講座村上 節 教授(むらかみ・たかし)1986年東北大学医学部卒業。仙台市立病院、岩手県立宮古病院、東北大学大学院医学系研究科准教授などを経て、2008年から現職。同附属病院手術部長、副院長兼任。  滋賀県唯一の医学部であり、周産期、婦人科腫瘍、生殖医療、女性医学の4分野を担う滋賀医科大学医学部産科学婦人科学講座。臨床のみならず、慢性子宮内膜炎や帝王切開術後の瘢痕(はんこん)がもたらす症候群などの研究にも積極的に取り組む村上節教授に話を聞いた。 ―講座の特徴は。  周産期、婦人科腫瘍、不妊症などを扱う生殖医療、骨粗しょう症や子宮脱などを扱う女性医学の四つの分野すべてを網羅しています。医局員を増やし、臨床、研究ともに取り組める環境を整えています。 がんの患者さんが長生きできる時代です。しかし、抗がん剤や放射線による治療を受けることで、卵巣や精巣の機能が途絶してしまう場合があります。かつては命を助けることが最優先でしたが、現在は、がんの治療をしながら社会復帰する方も多く、妊孕(にんよう)性温存を望む患者さんも増えています。木村文則准教授を中心に小児AYA世代のがん患者さんの妊孕性温存に、早くから着目。附属病院内に卵子や卵巣の凍結保存をする妊孕性温存外来を常設しました。 2015年には、がん・生殖医療ネットワークを構築し、翌年から「滋賀県がん患者妊孕性温存治療助成事業」として、全国に先駆けて医療費助成を実現しています。 ―研究と教育については。  帝王切開瘢痕症候群の研究も進めています。私を含む日本産科婦人科学会の生殖・内分泌委員会でこの疾患を全国調査したところ、帝王切開によって不妊症になっている患者さんがいることが分かりました。 これまでは、帝王切開したところにできるくぼみを縫合する手術が主に行われていました。しかし、縫合すると子宮が伸びにくくなり、次の出産で早産になる可能性があるため、私たちは子宮鏡手術で患部を焼く方法を行っています。 この帝王切開瘢痕症候群と子宮内膜症は、同じ病態なのではないかという仮説を立てています。富山で同じ治療・研究を手掛ける先生と共同研究を行っています。新たな治療法の確立や子宮内膜症の解明につながる可能性があり、今後も期待している研究の一つです。  生殖医療の分野では、木村准教授が慢性子宮内膜炎と不妊症の関係に着目。慢性子宮内膜炎の治療後に妊娠率が上昇した実例を基に、基礎的な研究を展開しています。その研究が評価され、滋賀医科大学で初めての日本産科婦人科学会のシンポジストに選ばれました。 滋賀県には日本最大の湖「琵琶湖」があります。滋賀医科大学では、その琵琶湖の水をイメージして教育理念を掲げています。 例えば、年齢や立場に関係なく先輩は自分の持っている知識や技術をすべて教える指導方針を「泉の教育」と呼んでいます。 また、チーム医療のため、毎日の患者さんの引き継ぎや週に2回のカンファレンスにはスタッフ全員が集まって情報共有。患者さんに教わりながら臨床経験を積む中で、水面に映る己の姿を確かめるように、日々自分の診療を確かめていくことを「湖面の教育」として実践しています。 ―今後の目標は。  質の高い臨床・研究の維持を続けるための人員の確保が難しいのが現状です。専門医やサブスペシャルティ資格取得の研修体制を整え、今後はより優秀な産婦人科医を育てることに貢献していきたいと思っています。 研究面は、以前から手掛けていた霊長類の子宮内膜症の研究を、滋賀医科大学にある動物生命科学研究センターで進めていきます。 当講座は初代から私まで学外出身の教授が続いています。人材育成に力を注ぎ、次の教授をこの講座から輩出できるようにしたい。それが、私の最後の務めだと思っています。 滋賀医科大学医学部 産科学婦人科学講座大津市瀬田月輪町☎077―548―2111(代表)http://www.sumsog.jp/

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公立病院の独法化を機に地域医療連携推進法人設立へ

社会医療法人北斗 北斗病院鎌田 一 理事長(かまだ・はじめ)1976年札幌医科大学医学部卒業。中村記念病院、群馬大学第一病理学教室、米カリフォルニア大学留学などを経て、1993年北斗病院を開設し、現職。地方独立行政法人広尾町国民健康保険病院理事長兼任。  北海道東部十勝管内の帯広市で、脳疾患を中心に第2次予防医療に力を注ぐ北斗病院。道内初の公立病院の独立行政法人化で注目された、広尾町国民健康保険病院と業務提携をして1年が経過。両病院のかじを取る鎌田一理事長に展望を聞いた。 ―提携の背景や経緯を。  広尾町国保病院との関係を業務提携と捉える見方もあるかと思いますが、私自身は違った意味で理解しています。これまで医療現場では70年近くをかけて、さまざまな医療改革が行われてきました。しかし現在、進められている地域医療構想、地域包括ケアシステム構築、働き方改革は、従来とは明らかに次元が異なります。 日本全国には340を超える第2次医療圏があり、規模の違いこそあれ公立・公的・民間という3種類の医療機関によって担われています。これら個々の病院の改革や統廃合を抜きにして、医療改革の実現は困難という共通認識がなければ、私たちが行う独法化や連携の意味を理解することは難しいかも知れません。 ―その真意は。  十勝管内には帯広市を含め19市町村があり、公立・公的医療機関は17、民間病院も20弱存在します。しかし、現在の数を残したまま、すべての医療機関が事業活動を継続することは不可能です。一方、統廃合の話になると公立・公的医療機関にお金を集めて施設の充実を図る計画が進行しがちですが、投入する資金はすべて税金であり、安易な実施は許されません。 民間病院の場合、私たちのような社会医療法人であれば、病院債を発行することも可能ですが、それ以外は法的整備が遅れています。こうした中で改革を前に進める方法として、ベストではないがベターなのが独法化であると私は判断し、広尾町国保病院の独法化の支援を引き受けました。 これを足場にまず、地域医療連携推進法人を、十勝管内に四つか五つぐらいのブロックに分けて設立。公立・公的病院と民間病院がまとまり、良質な医療を効率的に地域に提供することが、私たちの基本的な考え方です。 ―重視しているものは何ですか。  私たち社会医療法人北斗のミッション・ビジョンは「革新に満ちた医療への挑戦と新たなる組織価値の創造」です。 この中で語られている革新に満ちた医療とは何か。それは2015年1月20日に米国の前大統領であるオバマ氏が一般教書演説の中で「Precision Medicine」について言及したものの中に見て取ることができます。 従来型の医療(one―size―fits―all型医療)は、平均的な疾病に対する診断・治療であり、個々の患者に最適なものでは必ずしもありませんでした。「Precision M edicine Initiative」は、従来型の医療からの脱却を促し、医療・介護の革新を不可避にしてきています。 このように、IoTなどさまざまな経路を通じて集積されたビッグデータの解析により生み出されていく、革新に満ちた診断・治療は「がん・ゲノム医療の実装」そのものと言えるでしょう。 ―今後の展開を教えてください。  十勝は、日本最大の広域診療圏であり人口密度も非常に低い。しかし、このような広域診療圏においても、求められるべき医療、革新に満ちた診断・治療・介護は、地域の人々に提供されなければなりません。 この志を抱いて約30年前、日高山脈の麓まで耕作地が展開する帯広市郊外に設立したのが北斗病院です。広い土地を活用して現在、1万2000坪の敷地にサ高住・老人保健施設をオープンしました。隣接の十勝リハビリテーションセンターと有機的につながる、新たなコミュニティーづくりも構想しています。 社会医療法人北斗 北斗病院北海道帯広市稲田町基線7―5☎0155―48―8000(代表)https://www.hokuto7.or.jp/

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数々の改革を行い、3年連続の黒字化へ

岩手県立宮古病院村上 晶彦 院長(むらかみ・あきひこ)1979年岩手医科大学医学部卒業。岩手県立宮古病院消化器内科科長、岩手県立中央病院副院長などを経て、2015年から現職。岩手医科大学臨床教授兼任。  医師不足や少子高齢化などの影響により、地方の公立病院の多くは厳しい経営を強いられている。そのような中、岩手県立宮古病院は2017年から2年連続で黒字を達成した。キーパーソンは、2015年に院長として赴任した村上晶彦氏。村上院長が実施した病院改革はどのようなものか。 ―黒字化に至るまでの主な施策を教えてください。  まずは医師の確保です。2000年の時点で当院には50人の医師がいましたが、2011年は27人にまで減少。それに比例して収益も悪化していました。しかし、その後は研修医の獲得などに取り組んだことで徐々に医師が増加し、現在は38人が常勤しています。これに加え、非常勤の専門医にも来ていただくことで、以前よりも診療体制を充実させて、患者さんの受け皿を広げました。 次に大きかったのは、2 016年に地域医療支援病院の承認を受けたことです。私は約30年前にも当院で一度働いており、当時の同僚だった先生方が近隣地域で開業されています。そこで皆さんの協力を仰ぎながら、患者さんの紹介率・逆紹介率を高め、支援病院の承認を得ることができました。これにより、入院患者さんのDPC(診断群分類包括評価)係数が上がり、診療報酬も増加しました。 その他の施策としては、地域がん診療連携拠点病院としての強みを生かし、がんの手術、化学療法、放射線治療などの件数を増やしたこと。また、院長や事務長などの執行部も参加する「地域包括ケア病棟会議」を毎週開催し、患者さんに対する治療や支援策を詳細に検討していること。透析病床を9床から15床に増やしたことなども収益に一役買っています。 これらの結果、私が就任した2015年度の経常損益はマイナス約1億3000万円でしたが、翌年度はマイナス約6500万円で赤字幅が大きく縮小。そして2017年度はプラス約2000万円、2018年度はプラス約1億1000万円と2年連続で黒字を達成しました。さらに2019年度も黒字の見通しとなっています。 ―救急・災害医療でもさまざまな試みを始めましたね。  救急医療に関しては、2015年に地域の消防本部と提携し、救急車から病院に心電図を伝送できるシステムを導入。当初は1台のみの試験運用でしたが、74人の心電図を伝送、5人を心臓カテーテル治療で救命したことにより、翌年からは全ての救急車11台に導入されています。現在、当院では宮古医療圏における約82%の救急車を受け入れていますので、今後も救急医療の整備に注力したいと考えています。 災害医療ではDMATを1隊から3隊に増やし、同時に隊員の育成にも取り組んでいます。2016年の台風10号による災害や2018年の北海道胆振東部地震の時は当院のDMATが被災地で活動しました。それとは別に、私自身も2019年の台風19号で大きな被害を受けた宮古市重茂地区で訪問診療を実施。災害拠点病院として、災害医療の向上は常に意識しています。 ―今後の病院運営についてどのようにお考えですか。  東日本大震災以降、宮古には明るいニュースが少なく、どこか元気がありませんでした。そのような中、職員や地域の皆さんの協力を得て、当院が2年連続で黒字になったことには大きな意義があると感じています。今後も地域連携を大切にして、「地域になくてはならない病院」を念頭に置きながら、引き続き経営の安定化を図ります。 同時に、若い医師の育成も重要です。特に「医師の地産地消」として、県内の医学奨学生を中心に育てたいですね。これにより、岩手県全体の医師不足に対して、少しでも貢献したいと思っています。 岩手県立宮古病院 岩手県宮古市崎鍬ケ崎1─11─26☎0193─62─4011(代表)http://www.miyako-hp.jp/

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「共同」を意識して地域連携を推進する

公益財団法人 宮城厚生協会坂総合病院内藤 孝 院長(ないとう・たかし)1985年東北大学医学部卒業。財団法人宮城厚生協会坂総合病院(現:公益財団法人宮城厚生協会坂総合病院)副院長、同協会泉病院院長などを経て、2014年から現職。  前身である私立塩釜病院が開設されて以降、約100年にわたって塩釜地域の救急・急性期医療を担ってきた坂総合病院。2014年に院長となった内藤孝氏は、これまでの病院の歴史を重んじながら時代に沿った理念を掲げ、強固な地域医療連携を目指している。 ―2019年3月に病院の理念を改訂されましたね。  以前の理念は、時間の経過と共に院内で埋もれてしまっている印象がありました。そのため、改めて時代に適した分かりやすい指針を掲げたのです。 新たな理念は「わたしたちは確かな医療と共同で地域の安心を支えます」。当院はこれまで主に地域の救急・急性期医療を担ってきました。今後もその役割を果たすには、地域の行政、医療機関、住民の皆さんとの「共同」が欠かせません。それぞれの結びつきを大切にしながら、力を合わせて地域完結型の医療を実践したいと考えています。 また、理念の改訂と同時に、病院内外から意見を募って三つのビジョンを決定しました。まずは「断らない病院」、次に「人に寄り添う病院」、そして「職員が活(い)き活きと働く病院」です。当院では入院患者さんから差額ベッド代をいただかず、無料低額診療も実施してきました。今後も困難を抱えた患者さんを見守り、同時に良い職場づくりも意識したいと思います。 ―地域との連携についてお聞かせください。  当院は2007年に地域医療支援病院に指定されて以降、かかりつけ医との関係を大切にしてきました。2015年にはよりスムーズな連携を構築するため、「地域医療連携センター」を設置。ここでは患者さんの紹介、入退院支援などを地域の医療機関と協力しながら進めています。現在、塩釜地域にある開業医の約9割に登録医としてご協力いただいています。 地域住民とのつながりとしては、当院が中心となって結成した「みやぎ東部健康福祉友の会」が大きな役割を担っています。健康講座や血圧測定会などを定期的に開催することで、地域医療の向上を図るほか、当院の職員が地域の皆さんとふれあう場としても貴重な機会になっています。 ―臨床研修病院として医師の育成にも努めています。  当院は現在の臨床研修制度が始まる以前からスーパーローテート方式を採用し、専門性だけでなく総合的に診療できる医師の育成に取り組んできました。研修医は宮城県や他の東北地方に限らず、九州などからも応募があり、定員11人に対してほぼフルマッチの状況が続いています。 加えて、総合診療医の育成面では「みちのく総合診療医学センター」も挙げられます。ここでは当院と他の病院が連携し、日本プライマリ・ケア連合学会の認定を受けた研修プログラムを実施。総合診療・救急・在宅医療に加え、地域に密着した中小規模病院や診療所での医療が経験できる場を用意しています。少子高齢化や医師不足が進む地方では、総合医の需要が高まっていますので、今後も育成の分野には注力したいと考えています。 ―今後の展望は。  これまで以上に高齢者の疾患、中でもがんに対応できる医療が求められます。当院としては緩和ケアや在宅診療も充実させて、地域に住む高齢者が安心して暮らせる医療体制を整えたいと考えています。 院内に向けては、理念やビジョンを浸透させることが大切だと感じています。特に「職員が活き活きと働く病院」は重要なテーマです。職員同士が互いに認め合い、充実感を得られる環境を整えることは、結果的に患者さんの満足度向上にもつながります。職員が同じ目標を見ながら進むことで、より地域に信頼される病院を目指したいですね。 公益財団法人 宮城厚生協会坂総合病院宮城県塩釜市錦町16─5☎022─365─5175(代表)https://www.m-kousei.com/saka/

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磨き続ける強み地域で増す存在感

独立行政法人国立病院機構茨城東病院齋藤 武文 院長(さいとう・たけふみ)1981年筑波大学医学専門学群卒業、1987年同大学院博士課程医学研究科修了。1988年国立療養所晴嵐荘病院(現:国立病院機構茨城東病院)入職、米ニュー・ジャージー医科大学留学などを経て、2013年から現職。  呼吸器疾患と重症心身障害児(者)に対する医療を柱とする国立病院機構茨城東病院。この2本柱を打ち出すため、2015年からは「胸部疾患・療育医療センター」という名称を病院名に併記している。きらりと光る病院として発展を続けるため、齋藤武文院長が取り組んできたこととは。 ―地域での位置付けを。  がん、COPD、間質性肺炎のほか、肺高血圧症などの肺循環、睡眠呼吸障害、結核の診療も担っています。結核病床は陰圧ユニットで20床。救急は呼吸器疾患に特化。2019年は、年間約550台の救急車を受け入れました。 重症心身障害児(者)医療については、120床のベッドがほぼ満床。空いている病床はレスパイトを含めた短期入院に活用しています。行政の依頼で、医療従事者や医療的ケア児の支援者を対象とした研修をそれぞれ開催するなど、頼りにされているという実感があります。 当院はもともと、結核によって兵役を免除された人のためにつくられた施設です。国立結核療養所を経て国立療養所となり、現在に至ります。 私がここに勤務し始めたのは1988年。結核病床が200床ほどあった時代でした。その頃からこの病院を見てきたので、ここが呼吸器疾患診療を得意とする病院だということは、地域の多くの人に知られていると思い込んでいました。しかし、実際は若い年代の方や他の地域から移ってきた人にとっては、分かりにくかったようです。そこで、就任3年目に「胸部疾患・療育医療センター」の名称を前面に打ち出すに至りました。 現在、毎月1回、地域の大型ショッピングセンターにブースを出して、看護師などが病院のPRをしています。禁煙外来を実施していることをお知らせしたり、肺がんに関する情報をお伝えしたり。白衣体験なども実施し、呼吸器関連で気になる症状が出た時に、思い出し、頼っていただける病院を目指しています。 また、地域の開業医の先生方との連携も大事にしています。地域医療支援病院として、不定期で実施していた訪問活動を月1回の頻度に定例化。年に1回は、紹介いただいた患者さんの報告やお礼を兼ねた「連携大会」を開催し、2019年は過去最高の約130人に参加いただきました。 院内感染対策では、日立製作所日立総合病院(日立市、651床)、アイビークリニック(ひたちなか市、55床)と連携し、相互チェック、合同カンファレンスを実施。自分たちの組織では当たり前、問題ないと思っていたことも、違った視点で見ると改善の余地がある場合もある。連携することで、院内感染対策がさらに進んだと感じています。 ―今後の目標は。  まず、肺がんの手術件数を現状の1・5倍に増やすこと。さらには、間質性肺炎など難治の呼吸器疾患の診断・治療の面で、存在感を示し、貢献してきたいと思っています。 そのためにも、今まで以上に若手医師の育成を充実させたい。茨城県内で呼吸器内科を目指す若い医師たちに、学ぶ機会をしっかりと提供していきたいと思っています。もともと茨城県は人口当たりの医師数が少なく、ここ東海村はその中でも都市部と比べて医師の採用の面でハンディがある。だからこそ、これまでも人材育成に力を注いできました。 外部のエキスパートをお招きして症例検討、画像診断などを学ぶ「医師向け教育指導回診」が特に好評で、毎回、多くの医師が自己研鑽(けんさん)のために参加しています。 現在、新病棟建設計画を進めており、2022年4月には稼働を予定しています。教育システムなどのソフト面、建物などのハード面、どちらを見ても若い人にとって魅力ある施設をつくっていきたいと思います。 独立行政法人国立病院機構 茨城東病院茨城県那珂郡東海村照沼825☎029─282─1151(代表)https://ibarakihigashi.hosp.go.jp/

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