九州医事新報社 - 医療・医学の〝今〟を伝えて62年

地域の医療ニーズに対応し、新病棟建設で病床を増減

独立行政法人国立病院機構 神奈川病院橋誥 壽律 院長(はしづめ・としのり)1984年慶應義塾大学医学部卒業。国立病院機構茨城東病院外科診療部長、国立病院機構神奈川病院統括診療部長、同副院長などを経て、2018年から現職。  1939年に傷病軍人神奈川療養所として開院し、一般診療、結核医療、重症心身障害児(者)医療の分野を担ってきた国立病院機構神奈川病院。現在、念願だった新病棟建設も着々と進んでいる。橋誥壽律院長に、地域における病院の役割や、今、話題となっている公立・公的病院のあり方などを聞いた。 ―公立・公的病院の再編統合について。  2019年9月に厚生労働省が公表した再編統合の検討が必要な424の公立・公的病院の一つに、当院が含まれていたことは、とても大きな出来事でした。職員も驚きましたが、患者さんや地域の方々にも、かなりのご心配をおかけしました。 しかし、よく話を聞いてみると、今回の再編統合の目的は、病床のダウンサイジング、地域全体での機能分化などを進め、地方の医療事情に合った病院運営をしていくこと。その目的に、きちんと対応していくことが、何よりも重要であると捉えました。 湘南西部医療圏は、今後、人口そのものは微減にとどまるものの、高齢者の割合が増えていくと言われています。そのことから、急性期病床よりも、今後は回復期病床が必要になってくると思われます。 当院は、2021年1月完成予定で新病棟建設工事を進めています。病床は地域のニーズに合わせてダウンサイジングします。急性期病床は140床から130床に、一方、利用者が増えることが見込まれる回復期病床は40床から50床に増床します。呼吸器科病床は結核の患者数が減っていることから、一つのフロアを呼吸器科と結核とで分けるユニット化を実現し、現在の50床から30床にと計画しています。 ―病院の建て替え工事が始まっています。  2019年の4月に、ようやく一般病棟の建て替えに着工できました。昭和40年代に建てられた病棟は、古さやスペースの狭さが懸念され、患者さんにもご迷惑をおかけしていました。2021年1月には新病棟が完成します。新病棟は、一般病棟だけでなく、手術室や中央材料室、リハビリテーション室も移転する予定です。 病院の建て替えは、3段階で進めています。最初は2014年の重症心身障害児(者)病棟で、患者さんの高齢化やニーズが拡大していることから100床から120床に増床しました。次が今回の新病棟の建設になります。最終的には、外来管理棟も建て替えを目指したいと思います。変わっていく時代のニーズに合った医療を、ハード面でも常に提供していきます。 ─地域医療における役割について。  秦野伊勢原地区において、唯一の地域医療支援病院です。その取り組みの一つとして、10年以上前から、「地域医療連携症例検討会」を年2回開催してきました。地域の医師、看護師、訪問看護師など100人ほどが集まり、紹介いただいた患者さんをどのように治療したかなど、症例をもとに意見交換し、相互理解に努めています。 政策医療である結核や重症心身障害児(者)医療の分野については、この領域 を担う医療機関が少なくなっていることもあり、今後も引き続き、当院の果たすべき役割の一つとして対応していきます。 一般診療においては、呼吸器の専門病院として、肺がんや非結核性抗酸菌症など、手術が必要であったり、治療が難しかったりする呼吸器疾患について、しっかりと取り組んでいきます。 時代が移りゆく中で最も大切なことは、あらゆる課題を客観的に見つめ、地域の医療ニーズを常に意識すること。そしてニーズの変化に合わせて医療機関も柔軟に変化していくことではないでしょうか。そして今後、それがますます求められていくだろうと感じています。 独立行政法人国立病院機構 神奈川病院神奈川県秦野市落合666―1☎0463―81―1771(代表)http://kanagawa-hosp.jp/

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持続可能な未来の地域医療を 使命を胸に、変革に挑む

社会医療法人宏潤会 大同病院宇野 雄祐 理事長(うの・ゆうすけ)1991年金沢大学医学部卒業。同第一外科、名古屋大学医学部附属病院腫瘍外科、中部ろうさい病院外科、2007年社会医療法人宏潤会大同病院入職、同外科部長、同副院長などを経て、2018年から現職。  2019年9月に開設80周年を迎えた「社会医療法人宏潤会大同病院」。宇野雄祐理事長に現状と今後の方向性を聞いた。 ―理事長になられて1年半が過ぎました。  医療・介護を取り巻く環境は、大きく変わろうとしています。特に2018年以降は、医師の働き方改革の方向性が示され、地域医療構想の実現も〝待ったなし〟の状況となっています。 私は就任後、急性期医療の高度化と、地域の包括ケアマネジメントを周囲の医療・介護施設と連携して整えていくという姿勢を改めて強化しました。 さらに職員には、患者さんに寄り添い、医療人として「その人の誕生前から最期まで、医療・ケアと安心を提供する」というミッションステートメントを提示しました。 この2年間の中期計画の重点課題には、①高度急性期医療の追求②地域包括ケアネットワークの確立③健康延伸のための予防医療を掲げ、これらを効率的に進めるための基盤強化にも力を入れています。 高度急性期医療は、人口減少に伴い需要減も予想されますが、命を救う医療として、欠かせない使命です。併せてがん診療や小児医療、救急医療なども、より充実を図ります。 地域包括ケアについては、当法人は早くから、予防も含めた包括医療の提供を大切にしてきました。すでに介護老人保健施設、訪問看護ステーションなどを展開。今後、患者さんとご家族、地域の医療・介護・福祉機関との連携を一層深め、消防など行政も含めて皆さまが何にお困りなのかしっかりと伺い、強固なネットワークを築きます。 高齢化が進む一方で現役世代が減る2040年問題の中で、国も健康寿命の延伸を取り上げています。当法人では、健診センターの役割を強化。「要精密検査」や、「経過観察」の方の病気を予防できることが、重要なポイントになると考え、健診後のフォローにも尽力しています。 救急医療では、各診療科の機能強化を図り、救急医を新たに招くなどしています。小児医療でも、新たに社会福祉法人を設立した上で、重症心身障がい児者の施設を2022年秋に開設することが決まりました。 ―2019年4月には「地域周産期母子医療センター」に認定されました。  当法人が認定されたことで、愛知県内の同センターは13カ所になりました。当法人の医療圏は南区と緑区の西部、東海市の北側です。 当法人の医療圏は、名古屋市で最も高齢化が進んでいる地域がある一方で、比較的お産が多い地域でもあります。当院は長年、小児医療に注力してきました。 高血圧や肥満、筋腫などの危険因子がある、または多胎妊娠、胎児異常などで緊急かつ高度な医療が必要な妊婦の方は、医療圏を越えて来院されます。 今回、リスクの高い妊娠や重篤なケースも受け入れ可能な病院として認定され、愛知県内の広いエリアでその存在感が増し、責任も重くなったと認識しています。 ―今後の抱負は。  当法人が大切にしている価値観に「おもてなしの心」があります。患者さんの心に思いをめぐらせ、不安を解消して、行く先をあたたかく照らすことをイメージしています。 それを実現・深化させるために、デジタル化やⅠT化を考えています。例えば、各診療科や地域の各施設・機関間で、より深く情報を共有できるシステムを構築し、診療情報を確認し合えるということだけでなく、患者さんの不安の真因を見つけ出し、一人ひとりの異なる価値観に応えられる医療を提供することを目指しています。 ハードルが高い目標ですが、新しい仕組みづくりに挑戦し、持続可能な未来の地域医療構築に貢献したいと取り組んでいます。 社会医療法人宏潤会 大同病院名古屋市南区白水町9☎052―611―6261(代表)https://daidohp.or.jp/

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「医師たちが見た 中村 哲医師」

 長く、パキスタン〜アフガニスタンで医療、人道支援活動をしてきた、PMS(平和医療団・日本)総院長でペシャワール会現地代表の中村哲医師が2019年12月4日、アフガニスタンのジャララバードで銃撃され、急逝した。福岡市で開かれた合同葬に1500人、お別れの会には5000人が参列し、その死を悼み、活動をねぎらった。医療の枠を超えたように見えた活動は「医の原点」でもあった。同じ時代を生きた医師たちが見た、「中村哲医師」を届ける。  今でも先生が私の生きる標                   認定NPO法人ロシナンテス理事長 川原 尚行 医師  「花と龍」のモデル、玉井金五郎を祖父に持つ中村哲先生は現代社会でまさに義侠(ぎきょう)心の世界を生きてこられた。私がスーダンに外務省医務官として赴任した後、困っている人を助けようと辞職しロシナンテスを設立して赴いたことも、気がつけば後を追っていたような気がします。今でも中村先生が私の生きる標(しるべ)です。訃報が届いた時には自分の魂の一部を失ったようで、震えが止まりませんでした。「私の後継者は用水路」という言葉が身にしみてきます。 行動を振り返るための指針                           九州大学総長 久保 千春 医師  先生は私の行動を振り返るための指針でした。九州大学の特別主幹教授として、2014年から年1回、学生・教職員や市民の方にご講演いただきました。病める人、苦しんでいる人や貧しい人への活動を続けておられ、会を多くの賛同者と共に、組織的に運営されていました。医学部で同級生でした。学生時代、一緒に無医村でボランティア活動をした時に「愛が大事である」と言われたのを覚えています。「飢えと渇きは薬では治せない」も印象に残っています。   大半の医師が応援していた    鹿児島県・下甑手打診療所で39年間、離島診療に当たったDr.コトーのモデル                                      瀬戸上 健二郎 医師  大半の医師は中村先生の活動に関心を持っていた。わがことのように思いながら、気持ちだけは応援していた。私も開業準備中に、島の村長に「半年」と頼まれて赴任し、40年近く引き揚げられなかった。スケールの大きさは違っても「照一隅」の思いは同じ。36年間引き揚げなかった中村先生の境遇に「似ている」と感じていた。医療だけでは問題は解決しない。いかに地域を守るかという問題に突き当たるはずで、水と食料、そして平和こそ最大の問題だったのでしょう。まさに「巨星堕つ」。 心の中に彼の思いを常に持って                           日本医師会 会長  横倉 義武 医師  先生は医師として尊敬する一人であった。新幹線の新大牟田駅で一度、お会いしたことがある。活動を医師会も支援できればと立ち話をした。昨秋、日本医師会最高優功賞を贈り、業績を全会員に知ってもらえた。その活動は誰もができることではないが、医師は心の中に彼の思いを常に持っておかねばならない。患者さんに何が最適か、実現に何をなすべきかなど、教えられることは多かった。彼ほど尽くし溶け込んでいても、襲撃された現実に衝撃を受けた。 故郷再生、希望おじさんアフガニスタン復興支援NPOカレーズの会理事長でレシャード医院(静岡県島田市)院長                                   レシャード・カレッド 医師  中村先生は1984年からアフガン難民約300万人の診療を始めました。多くの若者が応援に加わりました。設立された病院を視察し、熱心さに感銘を受けました。飢餓、衛生面、居住の解決が重要と判断し、井戸掘りを始められました。地域に夢を与え、故郷の再生、子供たちの生活基盤の安定につながりました。2014年には、ジャララバードの先生宅に宿泊し、一晩中、話を聞きました。神様のように敬われ、「カカ・ムラド」(希望おじさん)と呼ばれていました。 中村哲医師と現地事業36年の足跡 1984年 パキスタン・ペシャワール着任。前年に支援団体ペシャワール会発足1991年…

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全人的医療を提供できる呼吸器内科医を育成

産業医科大学医学部 呼吸器内科学矢寺 和博 教授(やてら・かずひろ)1994年産業医科大学医学部卒業。カナダ・ブリティッシュコロンビア大学留学、産業医科大学呼吸器内科学准教授などを経て、2016年から現職。産業医科大学病院呼吸器内科診療科長、同呼吸器病センター部長兼任。  北九州近郊の中核医療機関として、診療・教育・研究に取り組む産業医科大学。呼吸器内科医が不足する中、良質な呼吸器内科専門医を一人でも多く養成しようと尽力する矢寺和博教授に、教室運営の現状や医師の育成方針について話を聞いた。 ─教室運営の現状は。  3次救急が中心ですので、コモンディジーズよりも高度で集学的治療を必要とする疾患を扱うことが多いです。この1、2年は、専門医制度の変更や働き方改革の影響を受け、教室運営にも変化が表れてきています。  2018年にスタートした新専門医制度では、医師の地域偏在などを解消するために、一部の都道府県・診療科において基本領域ごとの専攻医の採用人数に上限が設けられています。福岡県もその対象になっているため、希望する人数の採用が難しくなってきました。 しかし、呼吸器内科医は依然として不足。北九州市近郊には医師不足の地域があります。医師の偏在を解決しようとするのであれば、県ではなく地域で考えるべきです。このままでは逆に、地域医療の崩壊につながりかねないと懸念しています。 診療範囲は北九州市内のみならず、東は山口県の周南地域、西は遠賀・中間地域までカバーしています。遠方は週1回の訪問で済むように調整したり、逆に患者さんを当病院に送っていただいたり、十分ではありませんが、二重、三重のバックアップ体制を敷いて対応しています。 また、呼吸器疾患の受け入れ窓口を一本化しようと2015年に開設した「呼吸器病センター」が定着してきたことも大きい。事前に患者さんの症状の詳細を把握できるようになり、緊急度を考慮した効率の良い診察が可能になりました。 ─医師の育成は。  北九州市は、高齢の一人暮らしの患者さんが多い地域です。高齢者は一つの病気でバランスが崩れることがよくありますので、身体的な治療に終始せず、患者さんがどこでどのように生活しているのかまで考慮し、全人的医療を提供するよう指導しています。 呼吸器内科医は、呼吸器疾患の病態を評価できる知識が必要です。また、自ら治療するか、他の診療科の専門医にお願いするかの判断も必要になってきます。 さらに、近年注目されている肺がん治療薬の免疫チェックポイント阻害薬は、全身に副作用が出る可能性があり、がんの治療だけを行えばよいという時代ではなくなってきています。これからは内科医として、全人的な対応ができるスキルがより重要になってくるでしょう。 呼吸器内科医である前に一人の内科医であり、内科医である前に一人の医師であることを、若い医師たちにも忘れないでいてほしいと思っています。 一方、呼吸器内科、呼吸器内視鏡、気管支鏡、感染症、アレルギーなど、可能な限り専門医資格を取得するよう指導しています。資格を取得することで、医師としての自信を得られますし、それを維持しようとモチベーションアップにもつながります。 ─今後の展望は。  医師が働きやすく、やりがいを感じる環境を整えていきたいと思います。 女性医師が、出産や育児でキャリアを断絶することなく、安心して働けるように取り組んでいます。また、北九州市内の病院に医局から3〜5人ほど派遣して、診療のサポートを行うことができる環境が、地域医療と医師の働き方の両面で理想的ではないかと考え、実現に向けて構想を練っています。 プロフェッショナルの世界は実力主義です。若い医師には、医師としての実力をしっかりと身に付けて、私を含め、先輩医師たちを超えていってくれることを期待しています。 産業医科大学医学部 呼吸器内科学福岡県北九州市八幡西区医生ケ丘1─1☎093─603─1611(代表)https://www.uoeh-u.ac.jp/kouza/kokyuki/

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九州ブロックにおけるアスベスト関連医療を担う

独立行政法人労働者健康安全機構 長崎労災病院 アスベスト疾患ブロックセンター吉田 俊昭 センター長(よしだ・としあき)1979年長崎大学医学部卒業、同大学熱帯医学研究所内科入局。長崎労災病院内科部長、同副院長などを経て、2018年から現職。  大きな社会問題となったアスベスト健康被害に対して、2005年から診断・治療、患者への支援を行っているアスベスト疾患センター。九州で中心的な役割を果たしているのが長崎労災病院アスベスト疾患ブロックセンターだ。吉田俊昭センター長は、設立からこれまで、アスベスト疾患と向き合っている。 ―アスベスト疾患とは。  アスベストは「石綿」といわれる天然の鉱物繊維で、代表的なものにクリソタイル(白石綿)、クロシドライト(青石綿)、アモサイト(茶石綿)があります。耐熱性、耐薬品性、絶縁性などの特性を持ち、安価であることから工業用材料としてあらゆる業種で利用されてきました。わが国では1950年代から吹き付けアスベストの使用が中止される1970年代半ばまで、主に建築材料として広く使用されていました。 大気中に飛散したアスベストを吸い込むと繊維が肺の中に残り、肺が線維化する石綿(アスベスト)肺、肺がんや悪性胸膜中皮腫などの原因となります。わが国で大きな社会問題となったのは、兵庫県尼崎市にあるアスベストを用いていた機械メーカー工場の従業員や工場周辺住民の死亡が、2005年6月に報じられてからです。 この事態を重く見た政府は、同年「石綿障害予防規則」を制定するとともに、24の労災病院に「アスベスト疾患センター」を立ち上げました。当院もその一つであり、全国に七つあるブロックの九州の拠点として、ブロックセンターにも指定されています。 ―アスベストによる健康被害の実態は。  過去にアスベスト製品の製造作業などに従事されていた方や、周辺の地域住民の健康被害が問題になり、中皮腫の年間死亡者数は増加してきました。2000年に700人程度だったのが2015年には1500人を超え、その後はほぼ横ばい傾向にあります。 アスベスト関連疾患の問題は、ばく露から発症するまでの潜伏期間が20〜40年かかることにあります。このことから、今後もアスベスト関連疾患の患者さんが増える可能性があることが分かります。 業種別で見ると全国の患者の約半数が建設業従事者ですが、造船業が盛んな長崎県ではその従事者が半数を超えるなど、産業構造による地域差もあります。 ―関連疾患の治療と補償制度について。  アスベストばく露による肺がんの場合は一般の肺がんと同じく、外科的手術、抗がん剤治療を行うことになります。しかし、潜伏期が長いために患者さんも高齢者が多く、体力的に治療に耐えられるかという問題があります。 また、中皮腫は予後生存率が低い病気で、生存期間中央値はステージⅠ・Ⅱで17カ月程度、ステージⅢ・Ⅳでは1年を切っています。悪性胸膜中皮腫の治療薬としてニボルマブ(商品名:オプジーボ)が2018年に認可されましたが、奏効率は3割程度。早期の発見、早期の治療が求められています。 仕事でアスベストによる健康損害を受けた労働者やそのご遺族に対しては、労災保険による補償があり、周辺住民の方にも国からの救済措置があります。 しかし、その適用条件や申請方法はあまり知られておらず、関連疾患の診断およびばく露所見については、その判断が困難なことも少なくありません。 そこで、全国の労災病院を統括する労働者健康安全機構では、医師を対象に、最新の検査方法や診断方法、労災補償制度についての研修会を全国で開催しています。アスベスト関連疾患の実態と現状を広く知らせ、さまざまな啓発活動を行っていくのも、われわれブロックセンターの重要な役割となっています。 独立行政法人労働者健康安全機構 長崎労災病院長崎県佐世保市瀬戸越2―12−5☎0956―49―2191(代表)http://nagasakih.johas.go.jp/

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地域医療の未来のために呼吸器内科医を育成

宮崎大学医学部 内科学講座 神経呼吸内分泌代謝学分野小田 康晴 助教(おだ・やすはる)2008年自治医科大学医学部卒業。五ケ瀬町国民健康保険病院、国民健康保険西米良診療所、高千穂町国民健康保険病院などを経て、2019年から現職。宮崎大学医学部附属病院・卒後臨床研修センター担当教員兼任。  「宮崎県は、呼吸器内科を備える医療機関が少なく、専門医も充足しているとは言えない」と宮崎大学医学部附属病院・卒後臨床研修センターの担当教員でもある小田康晴助教は言う。専門医の育成と研修医の心身のケアが、地域医療の未来を開くと語る、その思いは。 ─講座の取り組みを教えてください。  呼吸器内科の医師を増やし、その中から専門医を少しでも多く育てることに比重を置いています。 救急の現場で行う「ABCDE」という救命アプローチのチェック項目でも、A=Airway(気道)、B=Breathing(呼吸)と1、2番目が呼吸器関連です。それだけ生命の危機に直結する分野にもかかわらず、宮崎県は人口比率的にも専門医が少ないのが現状です。 医局の人数も、関連病院を含めて20人に満たない。関連疾患も多く、私たちの手を必要とする患者さんはたくさんいらっしゃいます。とにかく医局の人員を増やし、1人でも多くの人に専門医を目指してもらうことが第一です。 治療に軟性気管支鏡を取り入れており、特に、超音波気管支鏡を使ったリンパ節の針生検に取り組んでいます。リンパ節への転移があれば、気管支鏡検査で判別しにくい病変であっても9割5分ほどは診断が可能になりました。 ─県内の呼吸器疾患の状況については。  肺がん、肺気腫の要因ともなる喫煙率がさほど下がっていない印象を受けています。肺気腫の発症要因はほぼ喫煙。肺がんも、これまで診た患者さんの多くが高齢者または喫煙者です。まだ分煙の意識も低く、完全に禁煙するに至っていないのかもしれません。副流煙による受動喫煙の問題もあります。 「加熱式たばこや電子たばこなら大丈夫」だと言う方もいますが、何らかの健康被害があることは否定できません。通常たばこの健康被害が証明されるのに数十年かかったことを思えば、電子たばこなどの健康への影響が証明されるためには、さらに数十年を要するでしょう。県民の皆さんに喫煙の害を知ってもらう啓発活動も進めていけたらと思います。  肺がんは、毎年ガイドラインが変更されるほど、新しい治療法が出てきます。がんの遺伝子を調べる「LCスクラム」などの検査で遺伝子変異を特定し、より的確な治療薬や免疫チェックポイント阻害薬を使って生存率を飛躍的に延ばすことができるようになりました。他の疾患も新しい技術の開発が目覚ましく進んでいます。呼吸器内科の専門領域を習得すれば地域医療にも役立つので、ぜひ取り組んでほしいですね。 ─研修医の育成は。  2019年4月に、卒後臨床研修センターの担当教員になりました。まず感じたのは、研修医の必修カリキュラムの量の増加です。これまでは、内科に進みたければ内科をひたすら勉強すればよかった。現在の卒後研修プログラムでは、例えば脳外科に進みたい場合も内科、外科、救急、小児、そして地域医療などさまざまな分野の知識をまず学ぶ必要があります。 2020年度からは、新たに外来20時間の実習も加わります。働き方改革との折り合いもつけなければなりませんが、知識や技術が不十分な医師を世に送り出すのは患者さんの不利益になります。 センターでは4、5人の研修医に対して1人のアドバイザーが付きます。研修医が求められる課題をクリアしつつ、自身の「やりたいこと」を実現しながら力をつけられるようマネジメントしていきたい。医師として「現場で働く」という環境の変化についていけなくなる研修医もいますので、彼らの心身を管理するサポートも、私たちの大切な仕事だと考えています。 宮崎大学医学部 内科学講座 神経呼吸内分泌代謝学分野宮崎市清武町木原5200☎0985─85─1510(代表)http://www.med.miyazaki-u.ac.jp/home/3naika/

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第23回 日本病態栄養学会年次学術集会~栄養をつなぐ~

 1月24日から26日までの3日間にわたり「第23回日本病態栄養学会年次学術集会-栄養をつなぐ-」(会長:石川祐一・茨城キリスト教大学生活科学部食物健康科学科教授)が国立京都国際会館(京都市)で開かれた。医師、看護師、管理栄養士ら5329人が参加。今回は、理事長講演と招待講演から、一部を紹介する。 ●理事長講演「働き方改革と働く人の健康・福祉」清野 裕 氏(関西電力病院総長) 清野 裕氏 50年で大きく変化した「食」  もともと質素だった日本人の食は、この100年で多様化。洋食や中華料理なども食べるようになった。寿命は延びているもののBMI(体格指数)が増加し、生活習慣病も増えているという状況だ。糖尿病に関して言えば、東アジアの人々の糖尿病の傾向として特徴的なのは肥満度が低く、インスリン分泌が少ないことが挙げられる。  日本人の食事の回数は、はるか昔、1日2食だったが、江戸時代に3食になり、総エネルギー量が増加。1960年ごろまでは摂取エネルギー量のおよそ8割を、炭水化物に依存していた。  しかし獣肉由来のタンパク質が増えるなど、日本人の食生活はこの50年間で大きく変化した。パソコンを扱う仕事が多く日中座りっきりの生活を送る人が増えたこと、夜型のライフスタイルが当たり前になっていることもあり、結果としてファストフード店やコンビニエンスストアの利用が非常に多くなるという現状がある。  ただ、これらを否定するだけではいけない。食事の際、食べる順番に気をつけることで、血糖の上昇を抑えることができる。肉や魚に含まれている脂肪酸などは、腸管からインクレチンの分泌を促進する。その後に炭水化物を食べると、すでに分泌されているインクレチンによって血糖上昇を抑制できる。  さらに、臨床研究によって、血糖上昇を抑えるためには、「主菜(肉や魚)を食べて5分後に主食(炭水化物)を食べるタイミングが最適」という結果も出ている。この食べる順番とタイミングは糖尿病の予防だけではなくさまざまな分野での応用の可能性があると考えている。 横断的な視点で食事栄養の検討を  高齢者を見ると、加齢によって筋肉が減少するサルコペニアの方が増加。これが原因でフレイルなどが引き起こされて健康寿命が短くなることが問題だ。サルコペニアの予防や治療には、栄養と運動が必須だ。筋肉の合成にはタンパク質とアミノ酸の一種「ロイシン」が欠かせない。  現在、進めている65歳前後を対象とした研究によって、1食あたりに必要なタンパク質は20〜30㌘ほど、1日にすると70〜90㌘だということが分かってきた。若年層はその3分の2程度の摂取で骨格筋が維持できるが、高齢者はそうではない。合成能力も低下するので、骨格筋維持のためには摂取するタンパク質の量を増やさなければならない。さらに、毎食後、骨格筋が合成されるようにするためには、3食平均的にタンパク質を摂取する必要がある。   ただ、高齢者は複数の疾患を合併していることも多い。高タンパクの食事が慢性腎臓病(CKD)や肝硬変を引き起こす可能性もあるように、どの疾患を優先的に治療するかを見据えて、栄養摂取を考える「食事療法」の確立が今後は欠かせないだろう。 すでに本学会を核に22団体による協議会も設立され、「横断的な視点を踏まえた食事栄養」について検討する動きも進んでいる。栄養学を軸に、地域と病院、病院と診療所がつながり、医療と介護が連携することを期待したい。 ●招待講演「2025年以降を見据えた医療政策の動向」迫井 正深 氏(厚生労働省大臣官房審議官) 迫井 正深氏 激動の時代に生きる私たち 地域差も見据えて  医療を取り巻く環境や課題について考える上で、まず三つの要素を挙げたい。「人口の構成に象徴されるように社会が大きく変化していること」「高齢化に伴ってケアのニーズが変わってきていること」「科学技術の進歩」だ。  私たちは今、激動の時代に生きている。人口ピラミッドは、いずれ釣り鐘型になる。団塊の世代が75歳以上になる「2025年問題」もある。65歳以上の高齢者が増えていく一方で、出生率は低下し、若い人が減り、生産年齢人口が減少していく。これからの100年を考えると今はちょうど折り返し地点だ。  地域差も、医療について考える際に問題を複雑化している。(65歳以上の高齢者人口がピークになると推計されている)2040年は一つの節目と考えられている。日本の多くの地域を占める地方都市の中には、すでに高齢者の増加という現象が始まっているところも少なくない。地域ごとに丁寧に見なければ、医療や介護の政策は成り立たない。  医療や介護を取り巻く状況について言うと、働き手が減っているため非常に厳しい状況だ。2040年までをどう乗り切るのかというのが、今後の日本社会を見据えた一番大きな問題だと考えている。  高齢者の方々に、元気に過ごしていただくことを願うのは当然のこととして、年齢を重ねても健康でいられる期間を延ばしていかなければならない。さらに言えば、高齢者にも「働き手」として社会に参加してもらえるようにしていきたいと考えている。  現在進めている「働き方改革」は生産性向上のための手だての一つでもある。アメリカ、イギリス、ドイツといった国々と比較しても、日本の労働生産性は低いとされる。長時間労働の抑制、終身雇用の見直し、雇用形態の多様化などを進めていくことが求められている。  長時間労働をしている職種で見ると、そのトップを走るのは医師。現在、見直しを進めつつあり、これからも社会全体で考えていく課題だと考えている。 高齢社会の疾患の変化 ケアのニーズも変わる…

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経営状況を開示し、職員の意識を改革

医療法人 弥生会 弥永協立病院弥永 浩 院長1990年金沢医科大学医学部卒業。社会保険田川病院消化器外科、公立八女総合病院乳腺外科、久留米大学病院乳腺外科部長などを経て、2013年から現職。  久留米市の中心街に開業して60年余り、地域のために医療を提供し続ける弥永協立病院。現在は、がん治療と高齢者医療を中心に、亜急性期病院として役割を担う。就任当時は経営危機だったという弥永浩院長に、現在の病院経営について話を聞いた。 ─経営健全化に向けた取り組みは。  私が父から当院を引き継いだのは2008年。当時は経営危機にありました。父の時代は、「医療を真面目にやっていれば病院がつぶれることはない」と考えていました。しかし時代の流れの中で、それだけでは病院も成り立たなくなってきました。 現在は、毎月、経営コンサルタント、メインバンクの担当者を交えて職員と経営会議を行い、財務状況の把握に努めています。さらに、地域連携を強化し、紹介率を高めることを目的に、地域連携担当者と事務長で他院訪問も行っています。 私が引き継いで最初に行ったのは、職員の経営に対する意識改革です。当院が背負っている借金をオープンにし、病院が成り立たなくなれば、自分たちの生活も成り立たなくなることを繰り返し話しました。理解してくれる職員が増えて、最近は経営のことも考えて行動してくれるようになりました。 各部門の代表を集めて部署会議も行っています。各部門からの意見や要望を私が聞いて、可能な限り応えています。さらに、院内マナー、節約、外来業務、清掃、接遇など10の委員会を設置し、病院内の課題は基本的に委員会で話し合って決めていく態勢をとりました。  職員全員がいずれかの委員会に所属。みんな忙しいので、昼休みを削って話し合いの時間をとってくれています。一人ひとりが何らかの役割を担い、それがモチベーションにもなっているようです。 日ごろ看護師には優しさが一番大事だと話しています。患者さんは、看護師に知識とともに、優しさを求めています。看護も介護もできてこそ、看護師だと教えています。 ─病院の特色、強みは。  地域におけるかかりつけの病院としての機能だけでなく、がん治療を中心にすべての臓器の検査から、手術、化学療法、緩和ケアまで集学的な治療をコンパクトにできることが強みです。また、がん患者の心のケアを行う、がんのリハビリテーションも実施しています。 入院環境も整っているので、地域の基幹病院から回復期の患者さんを受け入れる亜急性期病院として、地域医療に貢献しています。 現在、久留米医療圏は、総人口の減少が続く一方、65歳以上の高齢化率が高まっています。今後も高齢者は増加すると予想されており、当院も受け入れが増えるでしょう。 一人暮らしの方も多く、必要であれば介護保険を申請したり、施設を紹介したり、最後までサポートします。基幹病院もそれがあるから、紹介してくれているようです。これも当院の強みの一つです。 スタッフには、自分が介護を受ける立場になったとき、どんなケアを受けたいかを考えて行動するように指導しています。実は、当院は職員の家族が手術したり、入院したりするケースが多いのです。働く職員たちが当院を信頼してくれている証拠です。離職率も低く、みんなが誇りを持って仕事をしてくれています。 ─今後の展望は。  今年、地域包括ケア病床を8床から10床に増やしました。今後は、高齢者やがん患者の治療に尽力しつつ、在宅医療体制の充実にも取り組みます。 現在、若手の職員に、学会や、地区臨床医勉強会での講演活動への積極的な参加を勧めています。当院で扱う症例は幅広く、私も含め職員たちのスキルアップになります。今後も学術活動に力を入れていきたいと思っています。 医療法人 弥生会 弥永協立病院福岡県久留米市六ツ門町12─12☎0942─33─3152(代表)http://yanagakyouritsu.com/

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