羽島市の医療・介護連携の中核を担う
岐阜県南部に位置し、岐阜医療圏に属する羽島市民病院。市内唯一の病院として急性期医療を担ってきた。2014年には地域包括ケア病棟も開設、回復期との併設型の病院としての新たな役割を担う。大角幸男院長に今後の方針などについて聞いた。
◎人口減、高齢者増
岐阜県は五つの医療圏に分かれており、当院があるのは、岐阜医療圏。当市のほか岐阜市などが含まれます。
2025年までに、当医療圏の人口は推計で約4%減少。一方75歳以上の人口が約35%増加すると見込まれています。
このため、将来的には、高度急性期、急性期が過剰となり、回復期が不足する見通しです。
当医療圏の病院には病床が7236床(2016年7月現在)あるものの、そのうち5526床は、岐阜市内。約76%が岐阜市内に集中しているのが実情です。
◎羽島市の救急の要
羽島市内には、これまで、当院と民間病院の二つがあったのですが、民間病院は介護老人保険施設を併設する診療所に転換しました。このため、羽島市内には入院できる病院が当院だけになりました。
昨年7月に策定された「岐阜県地域医療構想」でも、当院は急性期を担う病院として位置づけられています。
一方、当院の救急医療センターは、内科系、外科系の医師がそれぞれ1人ずつ。看護師、メディカルスタッフを合わせて合計7人態勢で、365日、24時間、救急へ対応しています。
また、同センターでは羽島市内はもとより、南は海津市、西は安八郡、北は岐阜市、柳津町からも救急を受け入れています。
こうして当院の救急医療センターでは年間、約1万6000人の救急外来患者を受け入れ、そのうち救急車での来院は約2000人。救急外来患者の約12%、救急車での来院の約40%が、入院しています。
岐阜県の調査によると、岐阜医療圏の中で、救急搬送者数が5番目に多くなっています。
◎高まった地域包括ケア病床のニーズ
急性期の患者さんの高齢化に伴い、急性期の治療を終えた患者さんの受け入れ先が少ないことが大きな問題となってきました。
その上、DPC病院であることから在院日数短縮が必要になったのです。
このような経緯から、当院は、急性期病棟だけでは、患者さんの治療に対応できないと判断しました。
こうして、2014年7月、岐阜県内の自治体病院としては初めて、急性期病床40床を、地域包括ケア病床に転換することになりました。
地域包括ケア病床への、延べ入院患者数は、初年度の2014年度が6935人、2015年度は1万2401人、2016年度は2万1956人と増加の一途です。2016年度の病床利用率は、平均94%と高い数値で稼働しています。
地域包括ケア病床の導入が、地域の医療ニーズに合致していたということでしょう。一方で、将来的に地域包括ケア病床が足りなくなる恐れもありました。
これを受けて、2016年8月には、地域包括ケア病床をさらに急性期から転換して36床を増床。現在はこれによって、急性期178床、地域包括ケア76床で運営しています。
今後も引き続き、この地域の中核医療機関として、救急医療をはじめとする急性期と、回復期の二つの機能を併せ持つ病院運営をしていきます。あわせて、地域の医療の動向を注視していく必要もあります。
◎地域連携の重要性に着目
2002年、当院は病診連携の重要性に注目し、地域連携室を立ち上げ、私が室長を任されました。
幸いなことに、開業医の先生方は、私の出身医局でもある岐阜大学医学部第2内科の出身が多く、当初から連携がとりやすい環境でした。
羽島市や羽島市医師会とのつながりも重要です。現在、羽島市内の医師会会員の医療機関は、すべて当院の連携医療機関として登録いただいています。周辺の海津市、安八郡も連携医療機関として加わっており、現在は登録医療機関数が110件、加えて、歯科は31件、合計141件になりました。
近年は、在宅に力を入れている開業医の先生も多いため、夜間の緊急入院が増加しています。2014年には、在宅療養後方支援病院の指定も受けました。
同じ年から医療・介護の連携推進のため、地域合同の「れんこん会」を当院が主催しています。市の名産「れんこん」にちなみ、連携や懇親という意味も込めました。
医療機関のスタッフだけでなく、施設関係者、そして、最近は口腔ケアの観点から、歯科医師会の先生も会員に加わり、研修会には毎回100人近くが参加しています。「在宅へのスムーズな移行について」など、現場に即したテーマで開催するため大変好評です。
羽島市医師会などとは「羽島メディカルカンファレンス」という研修会を開催。10年以上にわたって、これまで260回余り実施しています。加えて、月1回症例検討会を開催しています。
◎初のタウンミーティング
今年度から、羽島市は、地域住民とのタウンミーティングをスタートしました。市の抱える課題などを、住民とともに考えようという新しい取り組みです。
5月のテーマは「市民病院の医療の現状」であり、私も参加し、コミュニティーセンターなど市内11カ所を回りました。特に増加する救急医療や、回復期のことを説明し、質疑応答で、市民のさまざまな意見を聞くこともでき「こんな考えもあるのだ」と実感しました。
今後も当院が急性期と回復期を併設する病院として、地域を支えていこうという思いが、市民のみなさんにも伝わったと思います。
羽島市民病院
岐阜県羽島市新生町3-246
TEL:058-393-0111
http://www.hashima-hp.jp/