患者と医療者を引き付けるマグネットホスピタルを実現
大学の要請で2市民病院が統合
北播磨総合医療センターは、2013年、三木市民病院と小野市民病院が統合してできた病院です。
統合の背景は2004年に始まった新医師臨床研修制度。二つの市民病院には長年、神戸大学から医師が派遣されていましたが、スーパーローテーションによって、大学の人材が減り、一つ一つの病院に人材を十分送り出せないようになってしまいました。
ふたつの市民病院側からすると、医師不在の診療科は、閉鎖するしかなくなってしまう。大学側からすると、一つの病院で全診療科がそろっていれば医師を派遣しやすい。そこで、持ち上がったのが、統廃合案だったのです。
そのころ私は神戸大学にいて、市民病院側に統廃合の要請をした委員の一人です。それもあって、この病院の初代院長になりました。大学と地域の市民病院が話し合い、統廃合が実現したというのは、非常に大きなことで、日本でもあまり例がないと思います。
そのような歴史がありますので、この北播磨医療センターは小野市にあるものの、三木市医師会と小野市加東市医師会の両方に属しています。
地域に根ざした先進医療をする場合、地元の公立・私立の病院、医院などの先生方の理解がないと、成り立っていきません。両医師会は連携が非常に良いため、新病院の地域連携もスムーズに進みました。
小野市、三木市の理解と行政支援がしっかりとあり、この病院を良い病院にしようという思いを共有できていますので、やりやすいですし、やりがいがあります。
高度急性期医療で地域の中核病院に
兵庫県は、10の医療圏に分かれます。ここ北播磨は、三木市、小野市、加東市、加西市、西脇市、多可町という六つの市町で成り立つエリアで、南北に非常に長い。そこで、当センターは、南部地域の中核病院を目指すことになりました。
特徴の一つは、消化器センター、循環器センター、脳卒中・神経センター、糖尿病センター、血液浄化センター、重症虚血肢センターがあり、高度医療が可能なこと。北播磨内の市民病院などからも重症の患者さんを受け入れています。
一方で、かつて三木市民病院と小野市民病院が担っていた「地域の方に気軽に来ていただける病院」という役割の継承も、大切にしています。
病院内での外来案内などは、ボランティアグループ「らくだ会」がサポートしてくださっています。看護部や事務部のお手伝いをしていただくことが多いので、部長や課長が「らくだ会」の会合に出席し、意見交換をしたり、お願いごとをしたりすることも多々あります。患者さんは、病院職員には言いにくいけれどボランティアの方には言える、ということもあるでしょう。本当にありがたいと感謝しています。
全国から研修に来る病院に
私は、スーパーローテーション以降の大学の人材不足を、身をもって経験してきました。ですから、当センターも人材に関して、いつまでも大学に「おんぶにだっこ」では、いけないという思いが強くありました。
そこで、「全国から後期研修に来ていただける病院にしたい」という目標を掲げ、全職員で努力してきました。その結果、少しずつ、全国から後期研修の先生が来てくださるようになっています。
当院で勉強して専門性を身に付け神戸大学の医局に行ってくれるようになれば、お互いに医師を派遣し合う流通性が生まれる。そんなことを考えています。
当院の魅力は、まず新しくきれいな病院で、地域完結型で全33診療科すべてがそろっている点。医局が一つのため、縦割り社会ではなく、横の連携も非常に良いというのも、研修医にとっては、良いところだと思います。自分の患者についての、相談が他診療科にもすぐにできるので、総合的な勉強ができますから。
手術支援ロボット「ダビンチ」など、最先端の設備が整っているのも、人気の理由でしょうね。
ただ、私がもっとも優れていると思っているのは指導者の質です。
神戸大学との話し合いによって統合した病院ですので、同大学から非常に優秀な人材を派遣していただけています。その方たちが副院長や診療科のトップなど重要なポジションを務めてくださっていることも、ありがたいですね。
さらに、大学で教鞭をとられてきた方々ですので、教育を大切にしますし、熱心です。
「箱」だけではなく、「人」も良い。それが研修医から人気がある理由だと思います。初期研修、後期研修で来た先輩たちが、「この病院はいいよ」と後輩に伝えてくれるのもうれしいことです。
当院は「マグネットホスピタル」でありたいと思っています。そのためには、まず医療人を引き付け、その結果、患者さんも引き付けられるようにならなければならない。現在、450床の病床に対して、医師は131人。この規模の病院としては、かなり多く、そのうち初期研修医が18人、後期研修医が25人。卒後5年以内が三分の一を占め、非常に楽しく、生き生きと勉強や診療をしています。
看護部や診療支援部にも優秀な人材がそろっており、さまざまなところ、さまざまな職種の方が当院に勉強に来ていますので、「医療人を引き付ける」ことは、できているのではないでしょうか。
当院で学んだ人たちが、近い将来、北播磨の医療を引っ張っていってくれることを期待しています。
北播磨総合医療センター開院までの歩み
- 2007
- 神戸大学から三木市・小野市統合病院構想を提案
- 2008
- 三木市・小野市が統合病院構想に合意
- 2009
- 統合病院の基本構想・基本計画策定
- 2010
- 北播磨総合医療センター企業団を設立
- 2011
- 造成工事に着手
- 2012
- 建築工事に着手
- 2013
- 三木市立三木市民病院・小野市立小野市民病院が閉院北播磨総合医療センター開院
病院概要
- 診療科
- 33科
内科、老年内科、糖尿病・内分泌内科、循環器内科、呼吸器内科、消化器内科、血液・腫瘍内科、腎臓内科、神経内科、リウマチ科、ペインクリニック内科、緩和ケア内科、リハビリテーション科、放射線診断科、放射線治療科、小児科、皮膚科、精神科、外科、消化器外科、呼吸器外科、心臓血管外科、整形外科、脳神経外科、眼科、耳鼻咽喉・頭頸部外科、泌尿器科、産婦人科、形成外科、麻酔科、病理診断科、救急科、歯科口腔外科 - 一般病床
- 450床(うちICU10床、HCU20床、SCU6床、救急10床、緩和ケア20床人間ドック5床)
- 手術室
- 9室(うちハイブリット手術室1室)
- 付帯設備
- 屋上ヘリポート(大型ヘリ対応可)、太陽光発電設備
北播磨総合医療センター
兵庫県小野市市場町926番250号
TEL:0794-88-8800
http://www.kitahari-mc.jp/