常に地域を見つめてきました
2016(平成28)年1月、特定医療法人中央会は社会医療法人に認可された。
これまで一般急性期、回復期リハビリ、療養病床を中心に運営してきたが、昨年6月には地域包括ケア病棟も認可され、救急医療、さらに在宅高齢者の救急にも対応できるようになった。吉田静雄理事長に状況を聞いた。
高齢化社会と医療費の問題もあり、国は在宅へのかじ取りを進め、地域包括ケアシステム構築を都道府県に求めています。
でもこれは、地域ごとに考えなければならない問題です。当院のような、急性期から慢性期、回復期リハビリテーション病棟があり、老人保健施設や短期入所施設、訪問看護、介護ステーション、地域包括支援センター、ケアプランセンター、デイケアセンターなどを持つ法人が中心的な役割を果たすべきだと考えます。新たに何かを始めるのではなく、今やっていることを、自然の流れに沿いながら継続発展させることが大切です。
―歴史のある病院ですね。
設立が1951(昭和26)年ですから、ずっと昔のことです。私の叔父が父と一緒にやる計画でしたが、父が大学の教授になったため、叔父は苦労したようです。その叔父も1980(昭和55)年に亡くなり、その当時、大阪厚生年金病院で部長をしていた私が跡を継ぐことになりました。
以降、全国で初めて病院の上階に老人保健施設を備えたり、厚生省(当時)の指示が出る何年も前に、基準看護の体制を整えて家政婦会の付き添いをはずしたり、医療の近代化と経営の健全化に努めてきました。
時代が変わればニーズも変わります。病院の上階を、回復期リハビリ病棟と検診センターにして、老人保健施設を外部に出したんです。それが、しおえローランドです。そして地域の要求に応えるべく、なにわローランド、ショートステイローランドと、新しいローランドが増えていきました。
こうして振り返ってみますと、地域包括ケアシステムの先取りをしているような結果になっています。さらには尼崎市の「小田北」地域包括支援センターを当法人で運営しています。
―「ローランド」とはなんとおしゃれな名前でしょう。
よくそうほめられるんです。本当のことを言いますと、尼崎市の花キョウチクトウの英語読み=オレアンダーを使いたくて、でも発音しにくくて、ついローランドみたいに喋ってしまったら、それがいいじゃないかということになりました。でもよく考えてみたら「老人のランド」だから、それでよかったんです。
―心に残る思い出は。
2005年4月25日午前9時18分ごろに発生したJR福知山線脱線事故です。死者107人、負傷者562人を出した大惨事で、当院は事故現場から1・5㌔くらいの距離にあったので、100人以上の負傷者が短時間で運び込まれました。救急車だけでなく、事故現場そばの卸売市場や一般企業の車も使われたそうです。
阪神淡路大震災の経験が役に立ち、入口ロビーに救急受付を設けて、運ばれてきた人の氏名と年齢、性別などを貼り出しました。退職した看護師2人も加わり、医師総勢23人、看護師およそ30人、その他職員30人以上が手分けして治療にあたりました。ほかの医療施設からの応援や、大手企業から大量のお茶の差し入れがありました。当院での死亡者が1人も出なかったのは幸いなことでした。
社会医療法人 中央会
尼崎中央病院
兵庫県尼崎市潮江1 丁目12 番1 号
☎06・6499・3045(代表)
http://www.chuoukai.or.jp/