進む臨床、教育環境の充実東北地方を支える医師へ
1975年東北大学医学部卒業、同大学院医学研究科修了。米シダーズ・サイナイメディカルセンター研究員、東北大学加齢医学研究所呼吸器外科学分野教授などを経て、2015年から現職。東北大学名誉教授兼任。
2016年4月、国内の新設の医学部としては年ぶりに1期生を迎えた東北医科薬科大学(旧:東北薬科大学)。新大学病院棟が今年1月末に竣工。臨床、教育体制の強化が進む。「東北地方の医師養成」をテーマに、近藤丘病院長の思いを聞いた。
―新病棟の特徴について。
148床の新大学病院棟の完成によって、既存病棟の466床と合わせて、国が基準として求める「600床程度」を満たすことになります。
既存の病院棟、2018年に完成した7階建ての医学部教育研究棟と連絡通路でつながっており、臨床、教育、研究の一体的な推進が可能です。
当院の使命である地域医療のさらなる強化とともに、より高度な医療、教育を実践するための環境がこれで整いました。この4月に554床が稼働することになり2020年のフルオープンを目指しています。
新棟は地上8階建て。免震構造を採用するなど、災害に強い設計としました。1階には放射線治療部門を配置し、リニアックやCTなどの機器を導入。2階はICU14床、血管造影室3室を設けました。
4階は手術部のフロアです。一般手術室、ハイブリッド手術室、バイオクリーン手術室の計9室があります。5階から7階は病室です。個室と2床室の構成としました。
診療機能については、既存の病棟から一部を新棟に移して集約しました。新たに生まれたスペースを活用して、外来の診察室を拡充する計画です。 $前身の「東北薬科大学病院」では20ほどだった診療科は、医学部の開設によって33に増えました。診療までの待ち時間の短縮化、混雑緩和のためのスペースの確保などが課題でしたが、新棟がその解消につながると思います。
―医師の育成に関しては。
本学の医学部に課せられたミッションは、東北地方の地域医療を支え、復興の核となれる人材を輩出することです。例えば、被災地域に住むみなさんの健康管理やさまざまな相談への対応は、まだまだケアが行き届いているとは言えません。そうした場で力を発揮できる、総合的な診察能力を有する医師を育成します。
救急患者に関しても、当院は1次~3次まで積極的に受け入れる方針。身近な症例を数多く経験することができます。
4月に1期生たちが4年生となり、秋から臨床実習がスタートします。院内の研修室なども整備して、さらに教育環境を充実させていきたいと考えています。
現在、当学の医学部の入学者は、東北地方がおよそ3割。ほか7割のうち多くは関東圏の出身者です。ここに集まった学生たちの「東北地方の未来に貢献したい」という思いを、とても強く感じています。
重要なのは、卒業生をどれだけ東北地方に残すことができるか?という点だと捉えています。
―どのような工夫を。
私たちとしても学生たちのモチベーションをしっかりと受け止め、引き続き東北地方で従事したいと感じてもらえる研修体制の構築、卒後のキャリア形成の支援に努めています。
特徴的なものとして、県北の2病院に設置したサテライトセンターを活用した教育や、放射線施設における安全管理の学習があります。また、東日本大震災の被災地では、被災者と過ごす体験などを通じて地域医療や災害医療を学びます。
宮城、青森、岩手、秋田、山形、福島の「地域医療ネットワーク病院」と連携し、各病院の地域における役割や重要性を学ぶ「地域滞在型」の体験学習プログラムも用意しています。
地域のみなさんから「卒業生たちの活躍を心待ちにしている」といった声を数多くいただいています。全力で期待に応えていきたいと思っています。
東北医科薬科大学病院
仙台市宮城野区福室1-12-1
TEL:022-259-1221(代表)
http://www.hosp.tohoku-mpu.ac.jp/