独立行政法人国立病院機構 紫香楽病院 大野 雅樹 院長

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長期入院患者に少しでも日々の潤いを

【おおの・まさき】 1981 滋賀医科大学医学部卒業 1985 同大学院発生分化増殖系修了 1990 米ノースカロライナ大学神経病理学留学 1999 滋賀医科大学医学部講師 2004 京都女子大学発達教育学部教授 2015 独立行政法人国立病院機構紫香楽病院院長

 紫香楽病院では、重症心身障がい児(者)医療において「新包括医療」を提唱している。診るのは病気そのものだけではない。本当に心地よい療養環境を提供できているか。面会に訪れた家族を温かく迎えられる雰囲気か。対象とする範囲は患者の「LIFE」。すなわち「すべて」だ。

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―近年の取り組みは。

 長期に及ぶ入院生活において、必要なのは狭い意味での治療や看護だけではないと考えます。

 例えば昨年の行事では日本レスキュー協会の協力を得て、3頭のセラピードッグを派遣してもらいました。これまで話しかけてもなかなか表情を変えず、コミュニケーションが難しかった患者さんたちが、セラピードッグとの交流で見せてくれた反応には、とても驚かされましたね。

 「こんなふうに笑うんだな」という初めての発見があったり、後日、イベントのことを話題にしてみるとニコニコと微笑み返してくれたり。

 患者さんたちが喜んでくれたことが伝わってきましたし、職員たちにとっても貴重な経験になったのではないかと思います。

 年間を通じて、こうした機会を提供していくことが目標の一つ。イベントはそれ自体が楽しめるものであると同時に、「当日を迎えるまで」の時間もきっと豊かなものにしてくれるはずです。今後もさまざまな企画を継続して、生活の質の向上に努めていきたいと考えています。

―地域の現状について。

 当地域でも高齢化が進んでおり、老老介護や独居の高齢者が増加しています。その中で私が強く感じているのは、家庭における介護力が弱まってきているという点です。

 重症心身障がい児(者)の多くは在宅です。医療的ケアを担うご家族が高齢になるにつれて、次第にサポートが行き届かなくなっていきます。

 その支援を目的に、当院の重症心身障がい児(者)病棟では、医療型短期入所(ショートステイ)を実施しています。利用したいという声はどんどん大きくなっており、この半年間、月に平均25日を超える利用があります。

 実際に利用されたご家族の中には「預けるのは不安だったが、安心して任せることができた」という感想を寄せてくれる方もいらっしゃいます。

 国の方針は在宅へ向いています。しかし、現実として、生活の大部分を犠牲にしなければ、介護が成り立たないケースが少なくありません。当院では神経難病のレスパイト入院も積極的に受け入れています。加えて、ショートステイ事業をはじめ、行政や福祉と連携した支援活動に一層の力を注がねばならないと思っています。

―「支える側」の育成は。

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 新生児集中治療室(NICU)などの充実によって救命できた新生児たちが増えていますが、その後も引き続き高度な医療が必要なために、長期間の入院を余儀なくされます。

 いわゆる「ポストNICU」の子どもたちを受け入れることができる医療施設は限られており、不足は解消できていません。当院の病床も限界に達していますから、増加するニーズに対して追いついていない状況が続いています。

 ハード面の制約だけでなく、医師や看護師などの人材も十分に確保できているとは言えません。この領域に目を向けてくれる若い医療者の力が必要です。

 急性期医療に関心をもっていた人が、当院での実習をきっかけに、重症心身障がい児(者)医療を将来の選択肢に入れたいと考えてくれるようになったケースもあります。

 患者さんとじっくりと向き合って、長い時間をかけて取り組む医療にも、多くのやりがいや魅力があります。それをしっかりと伝えていくことも、私の大切な役割の一つなのだと感じています。

独立行政法人国立病院機構 紫香楽病院
滋賀県甲賀市信楽町牧997
TEL:0748-83-0101(代表)
http://nho-shigaraki.jp/


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