独立行政法人国立病院機構 舞鶴医療センター 法里 高 院長

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「選択と集中」「分担と連携」で多死社会に挑む

【ほうり・たかし】 京都府立東舞鶴高校卒業 1984 昭和大学医学部卒業 京都府立医科大学附属病院研修医 1996大阪脳神経外科病院脳神経外科医長 1998 国立舞鶴病院(現:舞鶴医療センター)脳神経外科医長 2005 舞鶴医療センター統括診療部長 2013 同院長 2016~2018 京都府立医科大学特任教授委嘱

 1901年に舞鶴鎮守府海軍病院として創立した舞鶴医療センター。高齢化と人口減少、医師不足や偏在に、地域の病院と協力して立ち向かう。

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―病院の特徴を教えてください。

 病床数は、地域包括ケア病床50床を含む一般病床289床と精神科病床120床の計409床。京都府北部では唯一の新生児集中治療室(NICU)が6床あります。

 京都第一赤十字病院が総合周産期母子医療センター、当院と京都府立医科大学附属病院が周産期サブセンターとして、分娩後や帝王切開後に管理が必要な患者のフォローをしています。

 2008年には脳卒中ケアユニット(SCU)を開設。神経内科医4人と脳神経外科医4人がそれぞれの専門性を生かす形で血栓溶解療法(t―PA療法)などの治療に取り組んでいます。

―精神科が充実していますね。

 50床のスーパー救急、70床の慢性期病床の計120床からなる精神科病棟には、医師が8人おり、うち6人が精神保健指定医です。

 アジア・太平洋戦争が終結を迎えた1945年から1958年までの13年間、舞鶴港が引揚指定港になり、戦地である中国大陸や朝鮮半島から約66万人の引揚者が舞鶴の地に降り立ちました。

 引揚者の中には過酷な戦地での体験が原因で心の病を持った人も多く、需要に応える形で1949年に精神科病棟120床を開設しました。国立病院機構内の総合病院でこれほど大規模な精神科病棟を持っているところは他にないでしょう。

―中丹地域医療構想について教えてください

 人口10万人に対する医療施設従事医師数が全国平均233.6人のところ、京都府は307.9人。しかしそのほとんどが、人口10万人当たりの医師数386.3人の京都・乙訓医療圏に集中しています。

 舞鶴市、綾部市、福知山市からなる中丹地域内でも、医師の不足や偏在が課題になっていました。特に舞鶴市には四つの公的病院があり、人口に対する病床数が過剰。高齢化と人口減少が進む中で、分散した医療資源を再編する必要に迫られていた2004年、市立舞鶴市民病院で勤務していた内科医14人のうち13人が一斉に退職。公的病院の機能を果たせない状況になりました。

 そこで、舞鶴市などは2007年以降、「舞鶴地域医療あり方検討委員会」「地域医療再生計画検討会」などを設け、医療体制再編について話し合ってきました。

 2012年、中丹地域の公的病院を対象とした「中丹地域医療再生計画」を策定。各病院の特長を生かした疾患別センターへの特化と、病院間の連携深化によって、地域の人が高度医療を受けられる方向へ、かじを切ったのです。

 計画の特徴は「選択と集中」「分担と連携」です。当院は脳卒中センター及び周産期サブセンター、舞鶴共済病院は循環器センター、舞鶴赤十字病院はリハビリテーションセンター、舞鶴市民病院は療養型、福知山市民病院と綾部市立病院は救急医療と、機能別の強化を図りました。

 しかし高齢化が進む中で、多臓器疾患障害のうちの一疾患が急性増悪した場合に、これまでのかかりつけ医が診るのか、改めて疾患別の医療機関が診るのか、といった課題もあります。また、どの病院にも総合診療医が不足しています。

 現状の地域医療再生計画にこだわるのではなく、そのときどきで見直し、修正していく必要があるでしょう。

―人材を確保するために、どのような工夫をされてますか。

 医師不足対策と、今後さらに増えてくる女性医師確保の一環として、小学校に就学する前の子どもを持つ職員を対象に、希望する日時、時間帯で勤務できる「育児短時間休業制度」を活用しています。現在、女性医師1人がこの制度を利用し、育児と仕事の両立を図っています。

 また、65歳以上の医師を70歳まで常勤医で雇用する国立病院機構独自の制度「シニアフロンティア」による医師の雇用も取り入れています。

 今年、舞鶴市とわれわれの病院も会員となっている舞鶴地域医療推進協議会は、初めてとなる中高生対象の医療体験イベント「ミッション・イン・ホスピタル」を当センターで開催しました。医師や看護師などの仕事に挑戦する催しで、地域医療を担う仕事に関心を持ってもらうのが狙いです。これをきっかけに未来の医療人がここ中丹地域で育ってくれることを願っています。

 2006年からは、京都府立医科大学の現代GP「大学・地域一体型チーム地域医療教育」に実習先として参加しています。このプログラムは同大学の医学科5年生全員と看護科3〜4年生の希望者が対象。学生は、府内数カ所での1週間の地域滞在型実習を通して、地域医療やチーム医療を体感します。

 当院では、主催する「出張健康講座」に学生を連れていき、地域住民と話す機会をつくるなど、地域医療の魅力を実感できるプログラムを用意しています。

 若い医療者の多くに、大都市志向が見られます。それは、地域医療を知らないがゆえの「食わず嫌い」のようなものだと思っています。現代GPを通して、この地域に対する抵抗がなくなることを期待し、今後も続けていくでしょう。

 当院には1948年設立の附属看護学校があるため看護師の充足率はほぼ100%。しかし、市内の他の病院は、今も非常に厳しい現状です。府内北部の医療機関に就職し、地域に貢献する人材の育成を目標に掲げ、教育に当たっています。

―今後の展開を教えてください。

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 多死社会は目前です。緩和ケアや終末期医療、看取りについても考えていかなければなりません。

 昨年7月に病棟を建て替えた際、府北部では初めてとなる緩和ケア病床を設置しました。この4月から2人の非常勤医師による週3日の緩和ケア外来を設けています。

 現在は常勤の緩和ケア医を確保すべく交渉中で、来年4月には緩和ケア病棟の立ち上げを予定しています。

 平均寿命は延び、予防医療も非常に重要になってきます。当院の「出張健康講座」では、住民グループなどの依頼を受けて、医師やリハビリスタッフ、栄養士、看護師などが出張。各職種がそれぞれのテーマで話し、予防医療の啓発に努めています。

 私は脳神経外科医として、「脳卒中予防10箇条」を話します。脳卒中を完全に防げなくても、発症を遅らせる方法、症状をできるだけ軽くするための対策などを伝えています。

 また、当院は福井県の高浜原子力発電所から30km圏内に位置しています。そのため、原子力災害が発生して待機避難病院になったことを想定し、地域を巻き込んだ訓練を今後実施しなければなりません。精神科の患者が多いため、患者の全身状態を見極め、避難や誘導の方法についてしっかりと考える必要があるでしょう。

 今持っている機能を最大限に生かしながら、高齢多死社会に合わせて緩和ケアやがんの集学的治療の充実を図り、これからも舞鶴市民の健康を支えていきます。

独立行政法人 国立病院機構 舞鶴医療センター
京都府舞鶴市字行永2410
TEL:0773-62-2680
https://www.hosp.go.jp/~maizuru/


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