滋賀医科大学医学部附属病院 松末 吉隆 病院長

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患者さんと共に歩む医療を

【まつすえ・よしたか】 1975 京都大学医学部卒業1988 同医学部附属病院整形外科助手 2000 京都大学大学院医学研究科感覚運動系病態学講座准教授 2001 滋賀医科大学整形外科教授 2014 同医学部附属病院病院長

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◎高度先進医療を提供

 滋賀医科大学病院は滋賀県唯一の特定機能病院として地域の高度先進医療を提供するという役割を担っています。

 当院は2013年に総合周産期母子医療センターに認定されました。

 新生児集中治療室(NICU・9床)や新生児治療回復室(GCU・12床)、母体胎児集中治療室(MFICU・6床)を有し、妊娠後期(妊娠満22週)から早期新生児期(生後満7日未満)までの期間の合併症妊娠や分娩(ぶんべん)時の新生児仮死など、母体・胎児や新生児の生命に関わるような重症・困難症例に多くの医師で対応しています。

 また心臓血管外科では「No refusal policy」(断らない)を合い言葉に患者さんを断ることなく受け入れています。

 「心臓血管外科ホットライン」を開設し、一刻を争う救命救急手術に対して24時間365日対応。心臓血管外科の医師と直接電話がつながるシステムで地域の開業医の先生からの連絡を受けています。

 また、他の病院で心臓や大動脈手術が難しいといわれた患者さん、ご家族の方もご相談いただいくことも可能です。

 心臓血管外科では虚血性心疾患、心臓弁膜症、大血管疾患、先天性心疾患などの手術を年間約400例実施。これは全国42の国立大学医学部附属病院でトップクラスの症例数です。

 精神科領域では身体合併症がある患者さんに対する精神科救急を担っています。

 精神科治療中の患者さんで身体の緊急手術が必要になった場合や自殺企画者による外傷治療などをしています。

 当院は「滋賀県がん診療高度中核拠点病院」の指定を受けており、高度先進医療の提供と医師などの人材育成を担っています。

 2013年には手術支援ロボット「ダビンチ」を導入しました。

 がん患者さんは抗がん剤治療によって卵巣や精巣の機能を損なうことがあります。

 そこで当院のがん・妊孕(よう)外来では、適応可能な患者さんの卵巣や精子を治療前に冷凍保存しています。

 当院はSCU(広域搬送拠点施設)の指定も受けています。万が一、南海トラフ大地震などの広域災害があった時は、滋賀医科大学のグランドを使用し、被災者の受け入れや搬送の拠点に利用されます。

◎総合診療医を養成 

 医療人の育成も重要な使命です。高齢の患者さんは複数の合併症があることも多く、ますますジェネラリストの需要が高まると予想されます。

 滋賀医科大学では、「滋賀県地域医療再生計画」に基づき、2010年に滋賀県、東近江市、国立病院機構と協定を締結、寄附講座「総合内科学講座」と「総合外科学講座」をNHO滋賀病院(現:NHO東近江総合医療センター)に設置。地域医療の再生に向けた教育・研究・診療活動を推進してきました。

 そして、前述の協定期間終了後の2014年からは、地域医療を担う医師に対する教育及び地域医療を担う医師の養成と確保に関する研究を推進するため、滋賀医科大学地域医療教育研究拠点を大学内に設置しました。

 現在、NHO東近江医療センター(滋賀県東近江市)とJCHO滋賀病院(滋賀県大津市)に滋賀医大の教員を出向させ、滋賀医大の研修医と学生の実習を担当させています。

 NHO東近江医療センターとJCHO滋賀病院では本学の医学部5年生が全員2週間の実習を両院で受けます。

 指導は学生1人に対して指導医1人の「1対1対応」。主に地域医療に関する実習をしていてコースを11コース用意。学生(5人1グループ)が、1人ごとに毎日異なるコースをローテーションし、2週間の間に全てのコースで実習できるシステムです。

 NHO東近江医療センターでは主に地域医療に関して、JCHO滋賀病院では「健康管理センター」「介護老人保健施設」を併設する複合医療施設で、予防・診断・治療・介護をシームレスに体験できます。

 これらの研修を通じcommon disease(一般的な病気)に重点を置いた教育・指導で、 幅広い疾患を診ることができる総合診療医を養成します。

◎地域医療の担い手を育成

 文部科学省は「平成19年度新たな社会的ニーズに対応した学生支援プログラム」に地域医療を担う医師・看護師の育成をめざす地域参加型支援事業「地域『里親』による医学生支援プログラム」(里親GP)を採択。

 滋賀医科大学では2007年11月から2010年3月の期限付きで文部科学省からの補助金を受けて同プログラムを実施しました。

 補助金終了後は、里親GPに参加した学生たちや事業に参加してくださった地域の皆さまからの応援を受けて引き続き大学独自の事業として継続しています。

 地方で深刻化する医師・看護師不足を解消するには地域医療の担い手をどう育成するかが大きな課題です。

 同プログラムは地域医療を志す医学生や看護学生に対して、大学と地域が連携し、地域医療への関心を高めてもらう取り組みです。

 滋賀医科大学の卒業生には「里親」になってもらい、最初は月に2回程度、決められた課題について学生とメールで交流してもらいます。

 その後、里親の勤務先の医療施設や自宅などで学生と実際に会い、学生は進路の相談、アドバイスなどを受けるのです。

 地域の皆さまや患者さん、そのご家族の皆さんには「プチ里親」になってもらいます。

 こちらも最初はメールで交流。その後学生たちや「里親」を交えた交流会。講演会などに参加してもらい地域で生活する住民の立場から、地域の歴史や文化、医療の必要性などを直接学生に伝えるアドバイザー的な役割を担ってもらいます。

 学生の地域医療へのモチベーションを高めるという意味で、大変意義のある取り組みだと感じています。

◎痛みを緩和しQOL向上に寄与

 厚生労働省は2010年「今後の慢性の痛み対策について(提言)」の中で、今後必要とされる対策として「慢性の痛みに対する医療体制の構築」「教育、普及、啓発」「情報提供、相談体制「調査、研究」の四つを挙げています。

 そこで2011年度からの厚生労働科学研究費補助金事業の指定研究の中に「痛みセンター連絡協議会」を設置しました。

 当院は全国に19ある痛みセンターの一つに選ばれています。慢性的な痛みを持つ患者さんに対し、医師がカンファレンスをし、患者さん一人ひとりに合った治療を選択しています。

◎現代のチーム医療

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 病院理念は「信頼と満足を追求する『全人的医療』」です。

 かつて医療機関の多くは患者さんのことを「患者さま」と呼んでいました。権利を尊重し、意向に沿うことが大事だとの考えからこの呼び方をしていたのではないかと思います。

 私は患者さんに寄り添う医療の提供を目指しています。そのためには、「さま」ではなくて「さん」付けで呼んだ方がしっくりくるのです。

 患者さんに寄り添う医療を実践するために病院長就任時、病院の基本方針を「患者さんと共に歩む医療」に設定しました。

 チーム医療とは患者さんを医療者が取り囲むイメージではなく、患者さんもチームの一員に加わるというのが現代のチーム医療像ではないかと思っています。

滋賀医科大学医学部附属病院
大津市瀬田月輪町
TEL:077-548-2111(代表)
http://www.shiga-med.ac.jp/hospital/


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