地域との信頼関係を土台に本来の役割を果たす
今年、開院70年。理念に掲げる「病気の予防、医療、介護サービスを提供し、地域の皆様に親しまれ、信頼される病院」を目指して奮闘してきた。4月、6代目として就任した吉田武史院長が見る現状、これからのイメージは。
―節目の年ですね。
2014年、運営母体がJCHO(独立行政法人地域医療機能推進機構)へ移行し、埼玉社会保険病院から「JCHO埼玉メディカルセンター」に改称。4年が過ぎて、ようやく地域のみなさんになじみのある名前になってきたのかなと思います。
当院の始まりは1948年に開設した「社会保険埼玉中央病院」です。近隣の患者さんの中には「私はこの病院で生まれたんですよ」という方がよくいらっしゃいますし、幼い頃に入院していた子が、医学生となって研修で当院に戻ってくることもあり、いつの時代も親しまれてきた病院なのだと実感します。
これまでの長い歴史の中で、急性期医療を柱にしつつ、ニーズに応えることで機能の幅を拡大してきました。附属施設として健康管理センターとJCHO埼玉老健があり、ショートステイ、通所リハビリテーションも提供しています。
この10月、訪問看護ステーションを開設。急性期後の患者さんを在宅でもフォローできる体制が整いました。予防医療から急性期医療、そして在宅まで。一貫して頼っていただける病院として、質の向上に努めていきたいと思います。
―現状はいかがですか。
駅から徒歩で約3分の好立地ということもあって、当院は外来患者さんがとても多いことが特徴です。1日当たりの外来患者数は、多い日でおよそ1200人。収益のバランスとしては外来が4割、入院が6割ほどです。
当院が地域に根付いていることを示す数字とも言えますが、395床の急性期病院としては、望ましいバランスではありません。このような現状にあって当院の本来の役割である救急医療、重症患者の受け入れを維持するために、開業医の先生方との連携強化に力を注ぎました。
外来患者が多いのは、初診時の選定療養費の設定にも要因があったのだと思います。当院は2160円に設定していたのですが、他の医療機関の紹介状をお持ちいただいた場合でも、患者さんがお支払いになる金額はほとんど変わらなかったのです。
今年4月に私が院長に就任して以降、開業医の先生方に、当院の外来のスリム化が地域医療にとって必要であること。また、入院や精密検査が必要な患者は私たちがしっかりと受け入れることなどを伝え、機能分化について理解してもらうよう努めました。
事前に準備を整えた上で初診時の選定療養費を5400円に設定しました。現在、軽症者の受診は徐々に減少しつつあります。
このような決断に踏み切れたのも、過去数十年にわたる医師会や近隣の病院との定期的な勉強会などを通して、「顔の見える連携」という土台が築かれていたからこそだと思います。
―力を入れていくことは。
埼玉県は、2016年末時点で10万人当たりの医師数が全国で最下位。厳しい状況に直面しています。
当院にとっても医師をどう確保していくかは重要な課題。研修医の教育プログラムの充実を図るなど、埼玉メディカルセンター独自の魅力をいかに構築し、発信していくかが今後の大きなテーマだと捉えています。
また、引き続き地域の期待に応えられる病院として進化していきたいと思います。例えば、センター化による消化器疾患に特化した体制の整備に向けて動き始めているところです。
私の専門である難病のクローン病や潰瘍性大腸炎に対して、質の高い医療を受けたいと望む患者さんも多く、しっかりと耳を傾けたいと思います。
独立行政法人地域医療機能推進機構 埼玉メディカルセンター
さいたま市浦和区北浦和4-9-3
TEL:048-832-4951(代表)
https://saitama.jcho.go.jp/