重心医療の分野で1番の病院を目指す
外務省の参事官兼医務官として20年以上海外で過ごした経験を持つ、浅香隆久院長。移転してもうすぐ3年を迎える兵庫あおの病院で始まる新たな取り組みとは。
―病院の特徴は。
新生児医療や小児救急医療が発展し、年々高い治療効果を得られるようになりました。これまで助からなかった子どもを救命できるようになった一方で、重症心身障害児(者)の数は増えていると感じています。
当院の特徴は、全250床のうち200床を占める重症心身障害児(者)病床。これは国立病院機構内で重症心身障害児(者)病床を持つ73病院中、2番目に多い病床数です。
周産期の異常のため脳性まひや精神発達遅滞の症状があり、常に人工呼吸治療を必要とするような重症な患児を多く受け入れています。ポスト新生児集中治療室(NICU)・ポスト小児集中治療センター(PICU)としてこの地で担っている役割は大きく、県内に限らず大阪府や岡山県からも患者さんが来ます。
その他の50床は回復期病床。急性期を脱した患者を受け入れ、在宅復帰に向けた支援をしています。
通所事業として生活介護や放課後等デイサービスなどの障害福祉サービスも提供しています。
―近くには北播磨総合医療センターがありますね。
小野市は「小野長寿の郷(仮称)構想」として、市内南西部の市場地区に医療施設の誘致を行い、当院は2015年8月末に移転してきました。
向かいには、北播磨医療圏の基幹病院として急性期医療を担う北播磨総合医療センターがあります。また当院の隣接地には現在、特別養護老人ホームとサービス付き高齢者向け住宅の複合施設を建設中。完成すれば、運営母体はそれぞれ違っても、救急から回復期、療養、居住までをこの市場地区で完結できるようになります。数年後には特別支援学校などの市場地区への移転が予定されており、医療・福祉・教育の充実したまちづくりが進められています。
―長い海外生活を通して日本の医療に思うことは。
外務省に入省し、当院に診療部長として着任するまでの21年間を海外で過ごしました。スリランカに始まり南アフリカ共和国、フィリピン、ジンバブエ共和国、イギリス、ベトナム、アメリカ合衆国に約3年ずつ滞在。参事官兼医務官として各国の日本大使館に駐在しました。
社会主義的な医療システムをとる国が多いヨーロッパや、高齢者・生活保護受給者を対象としたもの以外に公的医療保障制度がないアメリカ合衆国など、医療制度は国によってさまざま。
日本の医療は、国民が加入する医療保険と税金が財源になっています。開業も、受診する医療機関の選択も自由である一方、政策医療など国の意向も反映されています。多くの国の医療制度を見てきましたが、日本の医療システムは世界的にも費用対効果の面でとても優れていると感じます。
―独自の取り組みなどはありますか。
「海外渡航者外来(トラベルクリニック)」を6月ごろに開設予定です。私の外務省勤務時代の経験を生かし、渡航先で注意すべきことや必要な予防接種について指導。帰国した方の健康面での相談にも応じます。必要があれば回復期病床での入院治療も可能です。
実施している医療機関は少ないですが、海外に支店を持つ企業に勤める方の需要を見込んでいます。日本に住む外国人の受け皿にもなっていきたいですね。
重症心身障害児(者)の医療については、病床数だけでなく提供する医療の質でも兵庫県内で1番の病院でありたい。もっと言えば日本一を目指したい。診療報酬改定や高齢化など、医療を取り巻く環境は厳しいものがあります。しかし全国に向けて医学的・社会的情報を発信していけるような地域密着型の病院を、これからも目指していきます。
独立行政法人国立病院機構 兵庫あおの病院
兵庫県小野市市場町926-453
TEL:0794-62-5533(代表)
http://www.hosp.go.jp/~aono/