地域密着の新病院建設へ向けて 今は基盤を固める時期
7月に就任した相川竜一院長のもと「改革」が進むJCHO桜ケ丘病院。新病院の建設、開院時期はまだ定まっていないが、すでに地域の期待の高まりを感じている。「早期の実現に努めたい」と語る相川院長。その船出は、決して順風満帆ではなかったという。
―就任当時の状況を教えてください。
私が院長に着く前のおよそ8カ月間、常勤の院長が不在だった時期があり、職員の士気はなかなか上がらない状況にあったと推察します。
救急の受け入れも応需率は25%ほどでした。当院は地域医療を守ることを使命としながらも、その役目を十分に果たしているとは言い難かったのです。
「6年以内に新病院を建設」という計画はすでに決定していたものの、このままでは、開院を迎える前に経営が行き詰まってしまうと考えました。まず私がやるべきことは「徹底した意識改善・組織改革」であることを再確認したのです。
問題はどこにあるのか。それを洗い出すための試みの一つとして、あらゆる職種のスタッフとの面談を実施しました。見えてきたのは「横のつながりが希薄」であるということ。
すれ違うときには必ずあいさつをする。スタッフ間の声かけや、協力する姿勢を意識する。小さなコミュニケーションの積み重ねが病院を変える第一歩だと考えました。
―取り組みの成果は。
当院の強みを改めて見直し、伸ばしていくことを心がけました。
静岡市清水区(旧:清水市)の中心部に位置する当院は、2次救急の受け入れ、リハビリテーションの提供、地域包括ケア病棟でのレスパイト入院など、幅広く地域のニーズに応えていくことが基本姿勢です。
その中でも予防医療に力を入れており、隣接する健康管理センターでの健診のほか、健診バスによる出張健診など、積極的に疾患の早期発見に努めています。
健康管理センター内には消化器センターや糖尿病・生活習慣病センターを開設しています。糖尿病専門医や内視鏡専門医の体制を充実させ、検診から治療まで一貫して対応できるのが特徴です。専門性の高さを生かし、受診者の拡大を推進しました。
救急医療の強化も図りました。当たり前のことですが、輪番制の当番日はもちろん、それ以外の日も、当院にかかりつけの患者さんを受け入れるようにしました。
救急の応需率は約80%までに改善。経営状態も上向き、院長に就任して2カ月目にはわずかですが黒字に転じることができました。
―新病院オープンまでの間に進めていくことは。
この清水区には、当院を含めて三つの基幹病院があります。しかし、慢性的なマンパワー不足に悩まされており、救急の受け入れ体制は十分ではありません。救急患者のうち、およそ3分の1が区外の病院へ搬送されています。
例えば、3カ所の基幹病院を合わせて、循環器専門医は3人しかいません。急性期の心疾患の患者さんをお断りせざるを得ないケースがあるのですが、一刻も早く受け入れ、治療を開始することが望ましいのは言うまでもありません。新病院の実現を「清水区内で医療を完結できる体制」の構築につなげたいと思います。
南海トラフ地震の際に発生する津波の浸水想定区域の関係などで候補地の絞り込みは難航しましたが、清水庁舎・清水区役所(清水区旭町)が移転後、その跡地に建設する計画です。もちろん、災害に強い病院を目指します。
最新の医療機器などをそろえた新病院は、医療者を地域に呼び込む起爆剤ともなるでしょう。充実した機能を整備するためにも、経営基盤のさらなる安定化は欠かせません。
行政ともしっかりと連携し、少しでも早期に着工、開院できる道を探りたいと思っています。
独立行政法人地域医療機能推進機構 桜ケ丘病院
静岡市清水区桜が丘町13-23
TEL:054-353-5311(代表)
https://sakuragaoka.jcho.go.jp/