高い専門性を持ち地域に根差した病院に
2014年、兵庫県唯一の公的な精神科病院である兵庫県立光風病院(現:兵庫県立ひょうごこころの医療センター)のトップに就いた田中究院長。以来、「社会が求める精神科医療」の提供を目指し病院の改革に積極的に取り組んできた。
―2017年4月、「兵庫県立ひょうごこころの医療センター」に改称しました。
「光風病院」という名称に、私も含めて職員は愛着がありました。設立して80年以上の歴史の重みもありました。
しかし、近年、精神科医療は求められる役割が大きく変わってきています。かつては入院中心であった精神科医療でしたが、外来受診を中心とする地域移行が進んでいます。疾患があっても地域で生活をすることが当たり前なのです。
また、高齢化による認知症の増加など、疾病構造も変わってきています。当院も、医療ニーズに合わせて、精神科救急医療センター、認知症疾患医療センターなどセンター化を進め、多職種で専門的な治療を提供するようにしてきました。
われわれが新しい精神科病院を目指していくためにも区切りが必要だと思いました。「これまでとは違いますよ」という外へのメッセージの発信であり、「変わっていこう」という職員の意識統一の意味も込めました。
―力を入れたことは。
検査機器の導入を進めることでより精度の高い診断をしたいと考えています。
2016年、光トポグラフィー装置を導入しました。これは近赤外線を利用して脳血流量の変化を見る機器で、うつ病などの診断を補助するものです。
2017年1月には神戸市の認知症疾患医療センターの指定を受けました。同年に老年精神科も開設。高齢化の進行とともに認知症の診断、治療へのニーズが高まっていることに対応しました。精神科病院としては、認知症の診断、治療は今後特に力を入れてやらなければならない分野です。
同年3月にMR・RI検査棟が完成。MRI装置とSPECT(脳血流シンチグラフィ)装置を導入しました。認知症の診断に大変有効です。これらの機器は認知症の検査だけでなく、神経疾患を診断するためにも有用で、精神科の診断には大きな効果を発揮します。
機器の導入後に2例の難治性の神経疾患が見つかりました。精神疾患だと思っていても、実は神経疾患だったということもあるので、機器を適切に活用しながら診断に当たります。
―今後取り組みたいことは何ですか。
近年、児童をはじめ若年層の患者さんが増加。発達障害がある子の不登校や心身症も少なくありません。そこで私の専門分野でもある児童思春期の精神医療にも力を入れています。
「精神科の病院は受診しづらい」と感じている方も少なくありません。精神科疾患は、誰もがかかり得るものです。できるだけ受診しやすい、誰もが気軽に来院できる精神科病院をつくりたいと考えています。
その一環として、昨年、一部の診療科を除いて予約制を廃止しました。「診療時間内にいつでも気軽に受診してほしい」と呼びかけています。
また、地域の開業医の先生方や介護福祉施設の職員の皆さんとの「地域運営懇話会」を開始しました。精神科医療は、治療をする病院と生活を支える福祉や地域の連携が欠かせません。そのためにも、つながりをより強めていきたいと考えています。
職員には自分の家族、きょうだい、友達に「うちの病院は良い病院だから受診をしたら」と自信を持って勧められるような病院になろうと声をかけています。
「専門性は高く持ちながらも身近にある病院」を目指していきたいと考えています。
兵庫県立ひょうごこころの医療センター
神戸市北区山田町上谷上登り尾3
TEL:078-581-1013(代表)
http://hmhc.jp/