地域と共に歩む内科併設の精神科病院の役割
=メンタルクリニックと精神科訪問看護ステーションをオープン=
2014年にこの病院に来て2年。昨年、理事長職を引き継いで1年が過ぎました。
共和病院は2018年に創立60周年を迎え、その記念事業の一環として、3病棟のうちの2病棟を統合し、新病棟の建設を進めています。当法人は職員参加型の病院経営を目指していますので、建設の進め方もそれぞれの部署の責任者を中心に、建築業者と一緒に月2回の建築委員会を開催しているところです。
近隣には南生協病院、藤田保健衛生大学や刈谷豊田総合病院があり、ここ大府市には国立長寿医療研究センターがありますが、市立病院がありません。そのため、当病院は精神科病院でありながら、内科(医療・介護療養病棟)も併設し、精神科が240床、内科が80床、そして訪問診療、企業健診など、地域に根差した医療を行っています。
また当病院は2000年、愛知県で22番目、知多半島地域で最初の日本医療機能評価機構の認定病院となり、翌年には特定医療法人認可を受け、ガバナンス(病院の運営管理システム)を強化した病院づくりをしてきました。超高齢社会を迎え、「治す医療から支える医療」という地域包括ケアシステムの流れの中で、在宅医療と共に、内科を併設した精神科病院はこれからも重要な役割を担うことになると思います。
精神科病院の未来像
当院の精神科治療への取り組みとして、早くから、家族会の発足、病室の格子の除去、児童思春期への対応、デイケアなどを開設し、開かれた精神科病院としてこの地域に溶け込んでまいりました。しかし、「治す医療から支える医療」という地域包括ケアシステムの波は、当然ながら精神科医療にも及んでいます。国際的にも日本の精神科病院における病床数の多さや長い在院日数に対する批判がある中、国内でも「病院が患者を抱え込んでいるのでは」という声も聞こえてきます。国も積極的に長期入院患者のアウトリーチ(地域移行)を促していますが、地域で支える受け皿がないのが現状です。
さらに、精神障害者に対する差別や偏見もあり、地域で受け入れる体制作りは容易ではありません。
私は地域医療に携わる前、ケニアのスラム街で無料医療活動をしながら、20年間、エイズに関する仕事をしてきました。エイズが発見された当初に見られたエイズ患者に対する偏見や差別も、30年が経った今、かなり薄れてきました。エイズと精神障害とは基本的に異なる病気ではあるものの、これまでの経験を生かして、精神障害者に対する偏見や差別のない地域づくりを目指したいと思っています。
地域になにが必要か
地域で精神障害者を医療・福祉からなる多職種チームで支えるACT(AssertiveCommunityTreatment=包括的地域生活支援プログラム)がありますが、こうしたチームと利用者との間に密接な相互関係が生まれた結果、障害者の自律性をそいでしまっているのでは、という指摘もあります。アウトリーチにおいて重視されるべきは、障害者の自律性の尊重であり、患者さんにとってどんな姿が幸せなのか、ノーマリゼーションはどうであるかは、患者さんによってさまざまだと思います。患者さんにとっていちばん安心できる場所、空間を見極め、時に地域で生活し、時には入院で治療するという個人単位でのケアサイクルがあればいいと思います。こうした理念に基づき、当法人では1年前から、医師を含めた多職種チームで病院と地域を結ぶ精神連携コア会議を定期的に開催し、精神科領域における地域包括ケアシステムの構築をめざしています。
メンタルクリニックと精神訪問看護ステーションを開設
こうした試みの延長線として、現在、当法人は2つのクリニックと8つの在宅支援関連事業所を有していますが、新たに当院の最寄り駅であるJR共和駅前にメンタルクリニックと、そして知多地区に精神障害者への訪問を中心とした訪問看護ステーションを開設しました。
クリニックは利便性の高い駅前であることから、発達障害の方や企業でのストレスチェックで治療が必要な人が通学や通勤の帰りに通いやすく、当院のドクターが診察にあたりますから、病院との連携において患者さんは大きな安心を得られると思います。さらに知多地域に開設した訪問看護ステーションでは、周辺地域で増えるニーズに応え、医療・看護・福祉に機動的な連携が取れるようになりました。
特定医療法人共和会 共和病院
愛知県大府市梶田町2-123
☎0562・46・2222(代表)
http://www.kyowa.or.jp/