もっと外へ"やってみよう"を支えたい
「精神科病院=閉鎖病棟」が"当たり前"だとされていた1963年。福井記念病院は、全開放型の精神科病院として設立された。その後、閉鎖病棟も開設したが、患者の人権を尊重した治療の流れが今日まで受け継がれ、積極的な地域移行にもつながっている。
―病院の特徴と目指す医療の姿は。
病床数は448床で稼働率は9割程度。高齢化による認知症患者の増加に伴い、1992年に認知症治療病棟、2005年には身体合併症病棟を開設。ストレスケア病棟や思春期ユニットも設置し、あらゆる精神科疾患、年代に対応しています。
かつては長期入院のイメージが強かった精神科病院ですが、現在はどこも早期発見、早期治療による入院期間短縮に注力。当院も例外ではありません。今年6月には、「スーパー救急」の認定を受け、より高度な急性期医療に取り組んでいます。3カ月以内の集中的な治療で患者さんになるべく早く地域に戻ってもらう。それこそが、これからの当院が目指していく方向です。
2017年には、サテライト診療所となる「青山会津久井浜クリニック」を京急久里浜線津久井浜駅近くに開設しました。「ものわすれ外来」「児童思春期外来」を設けています。
それまで1300人ほどだった病院の外来患者の半数近くがクリニックに移行。今後、急性期患者の入院は病院、外来はクリニックと、役割分担をさらに明確にしていく予定です。
―地域に戻る患者の「受け皿」づくりにも力を尽くしていますね。
訪問看護を2006年に開始。2016年には法人内に訪問看護ステーションを開設しました。精神的なケアを必要とする、自宅で療養されている方と高齢者施設に入所している方、合わせて月に150人ほどを訪問しています。
通院が困難な患者さんやご家族の心身の負担の軽減や安心感にもつながるでしょう。「患者さんを待つ医療」ではなく「地域に出かけていく医療」の充実を図っていきたいと思います。
―社会福祉法人の理事長も兼任されています。
2011年、当青山会グループ内の社会福祉法人「クオレ」の理事長に就きました。グループホーム、就労継続支援B型事業所などを運営しています。
今、新たなグループホームを建設中です。コンセプトは「身ひとつで気軽に入居できる」。駅のすぐ近くで、買い物などの利便性も高い場所。家具や家電だけでなく、箸や茶わんなどの食器もグループホーム側が用意します。
患者さんにとって、グループホームでの生活は一つのチャレンジです。場合によっては、うまくいかなかったり、再び入院が必要になったりすることもあります。しかし、少しずつでも挑戦しなければ、社会復帰は見えてこない。患者さんの能力を引き出すためには「だめでもいいからやってみよう」と思える場が必要なのです。
この試みがうまくいったら、別の場所にも同様のグループホームを広げていくつもりです。さらに、家族と生活している人向けの自立に向けたショートステイの開始も予定しています。
―新専門医制度初年度。精神科専門研修プログラムの基幹施設でもありますね。
当院を基幹施設として、精神科研修施設群を構成。同じ法人内の「青山会関内クリニック」「青山会津久井浜クリニック」、アルコール依存症治療を得意とするグループ病院「みくるべ病院」のほか、県立精神医療センター、県立こども医療センターなどと連携しています。
今年は3人の専攻医を迎えました。民間病院の特色を打ち出しつつ、高い専門性を持った医師を育てていきたいと考えています。
医療法人財団青山会福井記念病院
神奈川県三浦市初声町高円坊1040-2
TEL:046-888-2145(代表)
http://www.bmk.or.jp/fukui/