小ささは、強み 豊富な機会で専門医を育む
良き医療人を育成し、もって医学の発展ならびに地域包括医療の向上に寄与する―。佐賀大学医学部の前身、佐賀医科大学建学の精神にはそうある。新専門医制度のもと、どう「良き医療人」を育んでいくのか。
―今年度の専攻医の数は。
吉田和代・卒後臨床研修センター准教授(以下、准教授)
佐賀大学は全19領域で募集をかけ、51人を採用。2017年度に後期研修を開始した医師数よりも、今年度のほうが多いという結果になりました。佐賀大学で初期研修を終えた人数よりも増えています。
山下秀一・佐賀大学医学部 附属病院長(以下、病院長)
領域別に見ると、最も多いのが内科の19人、次いで産婦人科の5人。全国的に減少傾向にある外科は3人でした。
―外科が少なかった理由はなんでしょう。
病院長 福岡県での研修を希望した人が多かったのだろうと予想しています。
当大学の医学部学生を対象としたアンケートの結果を見ると、佐賀に残りたいという人が3割程度。都会志向が強く、多くは東京か福岡に行きたいと考えていました。特に福岡は、佐賀から30分で行くことができる「身近な都会」。地方よりも技術習得に有利だという固定観念があるのかもしれません。
―実際、技術習得などに違いはあるのでしょうか。
病院長 地方大学の一つであるわれわれの大学は、1人当たりの症例数が豊富です。国際学会への参加や論文執筆のチャンスも平等。多くの人が最短年数で専門医を取得してきた実績もあります。
准教授 もともと大講座制なので、例えば内科の中の循環器、内分泌など細分化された分野間での融通が効きやすく、相談もスムーズです。地域の医療機関同士のつながりも深く、協力しやすいという点も、幅広く技術を習得するという意味で、有利に働いていると思います。
―今後、さらに専攻医を増やすための方策は。
准教授 当大学医学部卒業生のうち、初期研修で残った人の8割は、後期研修もここで受けています。そこで、まずは初期研修医を増やしたいと考えています。
初期研修先選択の際、注目度が高い内科では、選択できるサブスペシャルティに当たる分野を九つ用意。選択肢を広げるとともに、早期に専門的な研修を開始できるようにしています。研修の満足度を上げることで、後期研修につなげていく。そんな良い流れがつくれたらと思います。
病院長 大学に所属する若い医師が、キャリアの重ね方を具体的に後輩たちに示そうと自主的に動いています。初期研修で他県などに出て行った人にも、自分たちのネットワークを使って呼びかけている。近い年代の人たちが現実的なキャリアを明示してくれるのは、学生らにとって魅力だと思いますね。
―佐賀大学で研修を受けている医師に願うことは。
病院長 地域の病院に出たとき、「恐れずに診ることができる実力」をつけてほしいと思っています。
私が教授を務める総合診療部の関係で言うと、佐賀は、開業医の先生がしっかりと診てくださっているので、プライマリケアで困ることはほぼない。しかし、入院が必要なぐらいの重症肺炎や、感染症でショック状態になりかけていたり、すでになっていたりする場合に引き受ける2次病院クラスの充実が課題です。少々の重症を恐れず診ることができる力が必須なのです。
専門医の育成に限らず教育、臨床、研究、みんなでカバーし合って、盛り上げられるような大学になっていきたいと思っています。
佐賀大学医学部附属病院
佐賀市鍋島5-1-1
TEL:0952-31-6511(代表)
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