一般社団法人菊池郡市医師会 菊池郡市医師会立病院 矢野 智彦 院長
― 病院の特長と理念は。
病院理念としていつも意識しているのは「かかりつけ医の先生方と連携して、地域の皆様に信頼され、愛される病院を目指す」ということです。
当院は、菊池郡市医師会が医師会員の共同利用を目的として開設した開放型の内科系病院です。医師会病院は西日本で多く設立されていますが、1965年9月開院の当院は九州の医師会病院として2番目に開設されています。
菊池の恵まれた環境を活かして入院療養環境の快適性に配慮し、ほとんどの病室から緑の美しい景観を楽しむことができます。多床室も8平米とゆとりある生活空間を提供しています。さらに、菊池の緑豊かな自然を一望できる屋上庭園は、患者さんやご家族はもとより訪れる方々に喜ばれています。
現在、10名の常勤医師が在籍しており、看護配置は入院患者10名に対し常時看護師1名の、いわゆる10対1看護体制で運営しています。
1983年3月から、菊池市の要請で透析医療を開始しています。そのほか、救急告知病院、2類感染症指定病院などの機能も備え、医師会員むけに検体検査の実施やCT・MRIの共同利用も行なっています。
また、実際上の医療圏は菊池市のエリアにほぼ一致しますが、域内に3院ある産婦人科以外には有床診療所がないため、会員医院の病床としての役割も担っています。
病院規模から考えると各分野の専門家をそろえることは難しいため、当院の医師は専門性とともに総合医であることが望まれます。また、20キロ圏内に熊本市内の大病院群が存在しますので、外科系を中心に病院同士の連携を大切にした役割分担が必要だと考えます。
地域の皆様の在宅生活を支えるため、効果的な病床運用を図るとともに病院と診療所の絆を堅固にするよう努めていきたいと思います。
―4つの基本方針がありますね。
当院では次の4つの基本方針を柱に地域医療に取り組んでいます。
①2次医療圏の中核としての役割を果たす②地域包括医療を実現する③当院の特色を活かす④地域の健診機関としての役割を果たす。
ひとつ目の役割については、救急対応のための5つの重症室と一般病棟がそれにあたります。十分に対応しているつもりではありますが、対応困難な症状に関しては、これまで通りに専門病院との連携運用が重要です。
2番目の方針については、地域包括ケア病床をどのように活用すべきなのかという問題意識です。患者さんが安心して在宅医療サービスを受け、社会へ復帰させるためにどう支援するかという視点が大切だと考えています。
この点に関しては、菊池郡市医師会によって整備された在宅ネットワークシステムや、ヘルパー、訪問看護師、ケアマネージャー、訪問薬剤師、訪問歯科診療等の各機能との連携を深めることが必要で、当院も連携室を中心に積極的に取り組んでいるところです。
昨年、当院では27床の
地域包括病室を整備し、医局、看護部、MSW(医療ソーシャルワーカー)、リハビリスタッフと協働して在宅復帰を目指しています。現在、15名の理学療法士、作業療法士、言語聴覚士が所属しておりますが、早急に18名体制にまで増員することを目指しており、社会生活復帰のために一層の支援体制を拡充します。
在宅復帰にもっと時間がかかる方、あるいは在宅や特養等での生活が困難な方のためには、医療療養病室、介護療養病室を運用して支援していきたいと思います。
3つ目の方針としては、腎臓内科・透析センターおよび糖尿病センターがそれにあたります。48台の透析器が、柱のない開放的な空間で稼働していますが、新規の患者さんの受け入れが困難になりつつあり、今年はこの問題に早急に対処する必要があります。
糖尿病センターは、昨年、教育認定施設を取得しました。糖尿病療養指導士(CDEJ)が13名所属し、療養指導、フットケアやSAT(食事教育)システムによる食育などで活躍しています。
最後の方針である健診センターは、「心身の異常の早期発見によって、この地域の方々の健康寿命の改善に少しでもお役に立ちたい」を合言葉に活動しています。
事業内容は、施設内検診、出向検診や学校検診(腎臓、心臓、小児生活習慣病)です。諸種のオプション検査では、睡眠時無呼吸症候群スクリーニング検査や、AICSがんリスクスクリーニング検査も始めました。
医師会立病院としての設立趣意を基に、今後とも地域住民の方の健康な生活を支援し、病院としての機能をさらに充実させていきます。