琉球大学大学院医学研究科放射線診断治療学講座 村山 貞之 教授

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治療選択の幅を広げる放射線医療が持つ可能性

【むらやま・さだゆき】 1981 九州大学医学部卒業 同放射線科入局 1987 米チューレーン大学 1989 米ワシントン大学 1997 九州大学医学部附属病院放射線科講師 1999 琉球大学医学部放射線医学講座(現:琉球大学大学院医学研究科放射線診断治療学講座)教授

 「放射線科医が増え、診療・研究・教育ともに良い環境ができてきた」と語る村山貞之教授。沖縄県の中核病院として先進医療の実践はもちろん、地域の医療機関との連携や、リサーチマインドを持つ医師の育成に力を入れている。

◎公衆衛生面で特徴ある風土

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 沖縄県は疾病の発症要因などが他の都道府県と比べて異なる点も多く、公衆衛生の面で特色が多い地域と言えます。

 胃がんの罹患(りかん)率が47都道府県の中で最も低い沖縄県。本土では、ピロリ菌が産生する病原因子は発がん性の高い「東アジア型CagA」ですが、沖縄県では発がん性の低い「欧米型CagA」が多いことが影響していると言えます。しかしなぜ「欧米型CagA」が多いのか、その原因は分かっていません。

 メタボリック症候群の該当者数は、人口10万人対比で男女ともに日本一。大腸がんや乳がんの罹患率も年々上昇しており、風土や歴史だけでなく、欧米型の食生活が大きな影響を与えていることは決定的です。

 口腔・咽頭がんなどの頭頸部がんの罹患率も全国平均の1.7倍と高く、東南アジアに多いヒト乳頭腫ウイルス(HPV)が沖縄に多いことが原因とされています。

 放射線診断治療学講座では、腫瘍性の病変から動脈瘤、血管奇形などの非腫瘍性病変まで、幅広い疾患に対し、CTやMRIなどの放射線診断、核医学、放射線治療を一貫して行っています。

 幅広い疾患に対応するためには他科との連携が必須です。定期的に合同カンファレンスを実施して密な連携を図っています。

 放射線診断医は診断後にレポートを書くだけでなく、各診療科の医師から要望があれば個別で読影結果を説明します。いつ求められても、合理的かつ理論的に説明できるように、当医局ではリサーチマインドを持つ医師の育成に力を入れています。

◎行政と協力して放射線科医を増やす

 1982年に放射線医学講座が新設され、今年で開講37年目になります。県内の関連病院には15人の放射線治療医を含む、当医局の出身医師を中心とした約80人が在籍し、沖縄県の放射線医療を担っています。毎年4人ほどのペースで入局してきており、現在大学には21人の医局員が在籍しています。

 1999年に私が教授として着任した当時の医局員数は13人でした。県内の関連病院で勤務する放射線科医を入れても全体で25人、放射線治療医にいたっては3人しかおらず、放射線科医不足は深刻でした。

 この状況を重く見た沖縄県は、2014年、放射線治療医を増やし、さらには市民にも放射線治療に関する知識を付けてもらうことを目的とした「先端医療実用化推進事業」に着手。医療者を対象にした放射線治療に関するセミナーと、市民を対象とした放射線治療に関する市民公開講座を開催しています。

 医療者を対象にしたセミナーでは、当院や関連病院の放射線治療医が、実際の症例の紹介、疾患・部位ごとの治療および照射方法、他科との集学的治療について、紹介のタイミングなど実践的な内容を複数題で講演します。

 これらの取り組みの成果もあり、放射線科医の数が人口10万人に対して全国平均約4人のところ、沖縄県は平均5.7人まで増加しました。

 医療者が理解することで、がんを治す方法の一つとして放射線治療を提案できるようになり、患者の治療選択の幅は確実に広がっています。

 特に婦人科疾患分野においては放射線治療を積極的に導入。子宮頸がんの場合、ステージ1、2では外科的手術を選択するのと放射線治療を選ぶのとで治療成績があまり変わりません。放射線治療によっても根治することができるので、患者に治療法を選択してもらっています。

 放射線治療も放射線と抗がん剤を併用する「化学放射線療法」も、外来による治療が主流になってきており、1日平均80人が外来で治療を受けています。放射線科病床6床には、自宅が遠方などの理由で通院が困難な患者や、血管内治療(IVR)を要する人が多く入院しています。

◎最新鋭の機器での放射線診断・治療

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 沖縄県の中核病院として24時間365日体制で読影を行っています。「読影オンコール」と呼ぶ体制が開講当初から根付き、若手の医師が当直しているときに難しい症例が来ても経験を積んだ読影医に画像を送信または病院に来てもらうことで、的確な画像診断が可能です。

 2011年には強度変調放射線治療(IMRT)、2012年に定位放射線治療(SRT)を開始。正常部への侵襲を抑え、病変部に集中して高線量のX線を照射できるようになりました。

 敷地内にある機能画像診断センター(FIMACCC)には、PET/CT装置が1台あり、1日平均11件、年間2400件のPET検査をしています。他の医療機関でがん治療を開始する前に、腫瘍の広がりと進行度合いを見極めるために紹介されてくる患者が、PET検査件数の3分の1に当たる約800件に上るなど、近隣の病院との連携もうまくいっています

 放射線診断はどの診療科の医師でもしていますし、ある程度はできます。しかし、確固たる基礎がないままに放射線診断を行えば、重要なものを見落としかねません。裏を返せば、高い技術を持った放射線診断医がいれば病院全体の医療の質の向上につながると考えています。

 幸いにも毎年たくさんの入局者が入り、医局員の数も増加しています。診療・研究・教育ともに良い循環ができてきたとも感じています。リサーチマインドを持つ優秀な放射線科医をより多く育て、輩出し、この地域の医療に貢献していきます。

琉球大学大学院医学研究科放射線診断治療学講座
沖縄県中頭郡西原町上原207
TEL:098-895-3331(代表)
http://www.ryukyu-radt.com/


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