愛媛医療生活協同組合 愛媛生協病院 有田 孝司 名誉院長

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早期介入でアレルギーマーチの進行を止める!

【ありた・たかし】 1985 愛媛大学医学部卒業 1988 愛媛生協病院小児科医長 2003同副院長 2004 同院長 2016 同名誉院長

 JR松山駅から車で約20分の愛媛生協病院には、愛媛県全域からアレルギー疾患に悩む患者が集まってくる。アレルギー治療の歴史は古く、患者会「愛ある会」は来年で発足30年目を迎える。子どものアレルギーの現状ついて、有田孝司名誉院長に話を聞いた。

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―小児科・アレルギー科の特徴を教えて下さい。

 「小児科・アレルギー科」は、子どものアトピー性皮膚炎・食物アレルギーを専門としています。

 また、ハウスダスト・ダニによる気管支喘息やアレルギー性鼻炎、スギ・イネ科・カバノキ科などの花粉症、イヌ・ネコの動物アレルギーなどに対して、国内にない治療エキスは米国から輸入し、アレルゲン免疫療法を積極的に行っています。

 1988年6月に小児科を開設し、同時にアレルギーの診療を開始しました。新規患者数は初年度から毎年1000人ペースで増え続け、開設して3年目には飽和状態になってしまいました。やむを得ず、その後十数年は新患の受け入れを重度の食物アレルギー患者に制限し、軽症の患者は、日本小児アレルギー学会に所属する他の医療機関につないでいきました。

 現在は3歳未満の小児と紹介患者に限定して新患を受け入れており、アレルギー外来の管理数は約400人、アレルゲン免疫療法を実施中の患者は約180人です。

―アレルギー診療を取り巻く現状は。

 気管支喘息は、ロイコトリエン拮抗薬と吸入ステロイドの登場で、重症患者が激減しました。

 アトピー性皮膚炎は、1990年代のステロイド忌避の風潮を受けてガイドラインが整備され、「発症・悪化因子の検索と対策」「スキンケア」「保湿剤とステロイド剤やタクロリムス軟膏などの抗炎症剤の外用療法と抗ヒスタミン薬の内服の薬物療法」という標準治療で、多くの患者がQOLを保ちながら治療できるようになりました。

 当院では、アレルギー専門医が対症療法のみならず、アレルギー疾患を発症した抗原を突き止め回避する、根本的な治療をしています。抗原を回避できない場合はアレルゲン免疫療法を行い、過敏性を軽減して治癒を目指します。

 アレルギー診療は、抗原を特定・回避するための生活環境の聞き取りや食生活指導に時間がかかります。それにも関わらず、9歳未満の食物経口負荷試験と気管支喘息を除いて、診療報酬上の点数や指導料などがないので、病院経営上のメリットがあるとは言えない状況があります。

―食物アレルギーの治療について教えて下さい。

 乳幼児に多い食物アレルギーの感作経路は、抗原を食べる、あるいは母乳を介する「経口感作」が主だと長年考えられてきました。

 しかし、2008年に加水分解コムギを含有する石鹸の使用により、多くの成人女性が即時型の小麦アレルギーを発症。食物が経皮的にも感作されることが明らかになりました。

 2008年に英のロンドン大学GideonLack教授は、口から入ったたんぱく質は、消化管の腸間膜リンパ節で食物に対して耐性の方向に働く一方、湿疹など傷付いた皮膚から食物アレルゲンが侵入して、皮膚の所属リンパ節でアレルギーを誘導するという「二重アレルゲン曝露(ばくろ)仮説」を発表しました。

 通常は表皮タイトジャンクション(TJ)バリアの内側に存在している、抗原提示機能を持つランゲルハンス細胞。活性化するとバリアを破壊することなくTJをすり抜けて、角質層直下まで樹状突起を伸ばします。こうしてTJバリアの外側で樹状突起の先端からアレルゲンを捉えることを、2009年、慶應義塾大学皮膚科学教室が確認しました。

 アトピー性皮膚炎の皮膚では、表皮TJバリアを超えるランゲルハンス細胞が増えていて、表皮バリアの弱さのために、外界のアレルゲンと反応することが明らかになりました。

 湿疹を介して食物アレルゲンの感作が進む。つまり、積極的にスキンケアを行い皮膚の状態を改善することが、食物アレルギーの治療と予防、ひいては「アレルギーマーチ(アレルギー素因のある人が加齢とともにさまざまなアレルギー疾患を発症すること)」の進行を止める上でも重要です。

 食物アレルギーの治療として「除去食」が行われますが、除去する食アレルゲンの特性を理解するとともに、卵・牛乳・小麦については、食物経口負荷試験の反応閾値から、消費者庁の「加工食品中アレルゲン含有量早見表」を参考に食べられる加工食品を選択するなどの工夫が必要です。

 成長期である小児には除去食によって必要な栄養素が不足しないように、定期的に身長・体重を測定し、成長障害をきたさないよう配慮します。また、複数の食品を除去する場合は、栄養士による栄養摂取量の評価や指導をします。

 現在、小児アレルギーの専門医療機関では、症状を観察しながら計画的、積極的に原因となっている食物を摂取することにより耐性を誘導する「経口免疫療法」の臨床研究が活発に進められています。専門の医療機関の間でも一定の方法が確立していないのが現状ですが、有望で有効な治療であると思われます。

―食物アレルギーの予防法はありますか。

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 食物アレルギー発症を予防するための食物除去や母乳栄養、加水分解乳が有効であるという十分なエビデンス(証拠)はなく、妊娠中・授乳中は普通の食生活を送るのが良いとされています。

 また、食物アレルギーの発症を心配して離乳食の開始時期を遅らせる方がいますが、それは推奨されていません。

 乳児期早期からの保湿剤によるスキンケアについては、アトピー性皮膚炎を30〜50%程度予防できる可能性が示唆されてきました。しかし、いまだ食物アレルギーの発症予防効果は証明されていません。

 顔面や四肢など肌が露出しているところに保湿剤を塗って湿疹ができるのを防ぐ。お菓子の粉などが直接肌に触れないようにする。この二つを徹底し、離乳食を開始するまでに顔面や頸部をきれいな状態に保つことが重要です。

 そのために、家族全員が食事や間食前後に流水で手を洗う。食べこぼしは速やかに除去する。食卓に座って食事をする。調理時に粉が舞わないように注意する。入浴後やオムツ交換は清潔なウレタンマット上で行うなど、食物抗原になりやすい物質が皮膚に直接触れないように指導しています。

―独自の取り組みを教えて下さい。

 1988年9月に、「愛媛アレルギーと食べ物を考える会(愛ある会)」が発足しました。食物アレルギーの子を持つ親同士が不安や悩みを共有する場としての役割はもちろん、食物アレルギーを持っていても楽しく生活できるように支える活動をしています。

 子どもたちの中には、重度の食物アレルギーのために外食をしたことがない子どもや、給食を食べることができない子どももいます。そうした子どもたちのために、安全な食事を用意してクリスマスパーティーや、キャンプを行っています。

愛媛医療生活協同組合 愛媛生協病院
松山市来住町1091-1
TEL:089-976-7001(代表)
http://www.e-seikyo-hp.jp/


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