久留米大学医学部整形外科学教室 骨折外傷担当 白濵 正博 教授

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骨盤骨折のパイオニアに聞く「骨折治療の今」

【しらはま・まさひろ】 1983 久留米大学医学部卒業 同整形外科学教室入局 1984 聖マリア病院整形外科 1985 県立日南病院整形外科 1986 宮城病院 1988 博慈会記念総合病院整形外科医長 1991 久留米大学医学部整形外科助手 1995 米国 Pittsburgh、 Shadyside Hospital留学 1996 New York州Albany Medical Center留学 2006 久留米大学医学部整形外科講師 2011 同准教授 2015 久留米大学整形外科・骨折外傷担当教授

 久留米大学整形外科の骨折外傷グループは重症の救急多発外傷や切断などを数多く治療。とくに骨盤骨折は日本でも有数の手術症例数と治療実績を誇っている。

 日本における骨盤骨折の"パイオニア"として知られ、日本骨折治療学会の理事長も務める白濵正博教授に話を聞いた。

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◎骨盤骨折治療の開拓者

 交通事故などの重度外傷で起こることが多い骨盤骨折の治療をしようと思ったのは、1995年に整形外科学教室5代目教授の井上明生先生から「アメリカで骨盤骨折を学んでみては」と勧められたのがきっかけです。

 骨盤骨折手術は、医師の高度な技術と優秀なスタッフがそろって初めて可能となる術式です。決して見よう見まねでできるような簡単な手術ではありません。当時、国内で骨盤骨折の手術をしている施設はどこにもありませんでした。

 2年間のアメリカ留学で骨盤骨折について学び、帰国後、当院で骨盤骨折手術を始めました。次第に私に骨盤骨折治療の技術があることが認知され、全国から手術の依頼が来るようになりました。

 また講演やセミナーには、骨盤骨折に興味を持つ多くの医師が全国から集まってくれます。私の下で学んだ医師が、全国各地で活躍するようになり、現在では多くの病院で骨盤骨折の手術が可能になりました。

 良い治療を提供するには、良い材料が必要です。私は骨盤骨折手術で使う機械や骨を固定する低侵襲インプラントの開発などにも携わっています。

◎足延長術、骨延長術

 私たちは骨盤骨折治療のほかに骨延長術、足延長術にも力を入れていて、多くの実績を残しています。

 この手術は骨切りをした後、創外固定器を用いて1日1mmずつ骨を伸ばす手術で、脚長差・骨変形・低身長の人たちが対象です。骨は人間の体のなかで最も再生能力が高い組織です。iPSやES細胞などを使わずとも骨自らの力で組織を再生できるのです。

◎外傷センター設立の重要性

 インターネットの普及で、誰もが簡単に情報収集できる時代になりました。それに伴い、一般の疾患であれば、患者さん自身が該当疾患の専門病院を選ぶことが可能となりました。

 しかし、外傷の場合、そんな時間的余裕はありません。いつ、どこで外傷を負い、どの病院に運ばれるかわかりません。そして運ばれた病院によって、患者さんの運命は大きく変わってしまうのです。

 外傷専門の優秀な先生がいる病院に運ばれれば幸運です。しかし、そうではなく、手術を1週間待たされた揚げ句、専門外の先生が手術をするなどということは、患者さんにとって不幸だとしか言えません。事故などで働き盛りの現役世代が亡くなってしまう、後遺症が残るといったことは、本人にとってだけでなく日本社会にとっても大きな損失なのです

 ドイツでは、地域ごとに外傷センターが設けられています。重症外傷の患者さんを外傷センターに運び、外傷専門医が治療する体制です。

 日本でも外傷センターを整備すれば、前述のような不幸な結果を招くことはなくなるでしょう。社会復帰率も上がるし、在院日数の短縮など医療経済的にも節約できると思います。

 しかし現時点では、私たちがいくら外傷センターの必要性を訴えても、社会的になかなか理解してもらえないのが実状です。

 日本人は外傷に対して「たかが、けが」と軽く考えがちです。けがをしてもしかるべき医療機関で適切な治療を受ければ、高い確率で、けがをする前と同じ状態に戻れます。しかし今の日本では、それが十分に理解されているとは言えません。一方、欧米では外傷治療の重要性が社会的に認知されています。

 一体、この差は何でしょうか。一説では、「狩猟民族」と「農耕民族」の思考回路の差だとも言われています。狩猟民族は、けがをしてしまうと、明日の狩りに出られず死活問題ですが、農耕民族の場合、数日間作業を休んでも、それほど大きな影響はありません。また他の人に作業を頼むこともできます。農耕民族、すなわち日本人は、けがに対する意識が希薄だと言えるでしょうね。

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「第30回創外固定・骨延長学会」 会期 2017年3月3・4日 会場 久留米シティプラザ 会長 白濵 正博

◎増加し続ける大腿骨近位部骨折

 高齢化に伴い、高齢者の骨折が増え続けています。特に大腿骨近位部骨折は増加の一途をたどっていて、昨年は全国で9万人が骨折しました。厚労省の推計では2020年には約25万人に達するそうです。

 高齢者はさまざまな合併症を抱えているので一般の病院では対応できないことも多く、入院しても直ちに手術することは困難です。

 結果的に長期入院を余儀なくされ、予後不良になることも多いのです。骨折のため動けなくなった高齢者は全身状態の悪化のため生命的予後も悪くなり、早期に死亡する率が高くなってしまいます。

 近年の調査で、高齢者の大腿骨近位部骨折に対しては、早期の手術とリハビリが予後改善に重要であるということが明らかになりました。欧米では24時間以内に手術を行う緊急手術の対象です。このことからも大腿骨近位部骨折は生命に関わる緊急を要する外傷だということが分かるでしょう。

 この地域では大腿骨近位部骨折地域医療連携パスを活用し、地域の病院から大腿骨近位部骨折の患者さんを速やかに当院か聖マリア病院(福岡県久留米市)で受け入れ、24時間以内に手術をしています。手術後は、すぐにリハビリを開始し、近隣の回復期リハビリ病院に戻すというシステムを構築済みです。

◎久留米大学の骨髄炎・難治性骨折治療

 骨の感染症である骨髄炎の治療は難しく、これまでは新しい抗菌薬を用いても治癒させることは不可能でした。特に開放骨折後に生じた感染性偽関節や、広範囲骨欠損偽関節などは数回に及ぶ手術を繰り返すこともあり、治療期間も長くなり大きな後遺症を残すこともありました。

 しかし、現在は創外固定を用いたBone transport 法や抗菌薬含有セメントを用いたMasquelet 法という新しい技術、手術法を用いることで早期に完治させることができるようになりました。骨髄炎の病巣を完全に切除して骨移動、または骨移植によって再建します。また、広範囲の軟部組織欠損を伴う開放骨折に対しても、顕微鏡を用いた血管吻合による筋皮弁移植によって早期に骨と軟部組織の修復も行っています。

久留米大学病院
福岡県久留米市旭町67
TEL.0942-35-3311(代表)
http://www.hosp.kurume-u.ac.jp

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