第40回九州手外科研究会/第11回日本創傷外科学会総会・学術集会
2019年2月と7月に、長崎で形成外科に関する二つの学会が開催される。世話人はどちらも長崎大学の田中克己教授だ。それぞれの学会の内容とそれに向けての意気込みを聞いた。
第40回九州手外科研究会
九州手外科研究会は、手の外科に特化した研究会で、九州・沖縄地区の手の専門家が集まり、手の疾患に対する治療に関して意見を交換する場です。これまでずっと整形外科の主催だったのですが、今回初めて形成外科が担当します。
手は腹部や背部などの非露出部とは異なり、人目に触れます。単に傷がふさがり、以前と同じように動かせれば良いのではなく、見た目に傷が目立たないようにするなどの治療も必要です。ただし、重症外傷の場合は、見た目よりも生命維持、機能維持を優先させます。それでも、そこをどう克服していくかにスポットをあて、もう一歩進んだきれいな手に回復させる方法を検討します。
長崎大学には外傷センターが設置されており、手を含めて、「動かす」「歩く」といった体の機能を健康な状態に近づける手助けをしています。整形外科と形成外科の医師が受傷初期から治療にあたることで、「最初からこうしておけばよかった」といった後悔をさせない。そんな取り組み方を、今回の研究会で広めたいですね。
2021年には第64回日本手外科学会学術集会をこちら長崎で開催することになりました。今回の学会を3年後の大会に生かすつもりです。
第11回日本創傷外科学会総会・学術集会
日本創傷外科学会総会・学術集会のテーマは「創傷外科を繋(つな)ぐ~継承と発展~」。特別講演の講師には長崎大学に縁のある先生方をお呼びしました。
1人は、今年3月まで当大学の「原爆後障害医療研究所」教授で、現在は福島県立医科大学の副学長を務めている山下俊一先生です。原爆やチェルノブイリ・福島の原発事故、私たちが普段扱うエックス線など、医療に関わる放射線について講演いただきます。
もう一人の講演者は、相川忠臣名誉教授です。専門は生理学ですが、医史学についてもよくご存じで、「医は長崎から」をテーマにお話しいただきます。日本の西洋医学は長崎から始まったとされています。創傷の手当てを含め、どのように医学が進歩を遂げてきたかといった内容が扱われる予定です。
教育講演には法医学の池松和哉教授にご登壇いただきます。テーマは、細胞レベルで捉えた外傷の見解など。頭部挫傷一つでも、どんな道具で、どう受けた傷か。殴られたのか、落ちたのか。時間はいつ頃か。それらを外見や組織診断でどう結論を導きだすのかといった内容です。形成外科の臨床には直接関わらなくても、知識が何かに役立つことがあるでしょう。私も楽しみにしています。
一般的な傷への対応力向上を
市民公開講座で一般的な擦り傷や切り傷の対処法をお伝えする予定です。どんなときに病院に行くべきか、それまでにどう処置するべきかなど、市民が正しい知識を持つことで、傷への対処法も病院の患者数も変わります。
傷にも、いろいろな種類があります。外傷や糖尿病・血行障害によるもの、褥瘡(じょくそう)など。治療も多様化しています。傷ができた環境を知ることも重要な要素です。
野外なら破傷風など命に関わる感染症の危険がありますし、同じ傷でも、年齢によって対応は変わりますから、そこも注意すべきポイントです。病院に来るまでに最善の処置ができるよう啓発していくことも、形成外科医の使命であると思っています。
長崎大学大学院医歯薬学総合研究科形成再建外科学
長崎市坂本1-7-1
TEL:095-819-7200(代表)
http://www.med.nagasaki-u.ac.jp/plastics/