新病院建設工事が完了
「強みを生かしてさらなる進化を」
◎赤十字の使命を担うために
5年半の歳月を要した新病院増改築工事が、11月末にようやく終了しました。
これまで、本館、別館、西館と三つの建物がありました。その内の一つの西館は1968(昭和43)年建設で、耐震性に問題があり、実際に2009年の駿河湾地震では、壁面や床にひび割れが生じるなど、建て替えは急務でした。そこで、西館と渡り廊下でつながっていた本館の建て替え工事をすることになったのです。
工程を4期に分け、施工しました。第1期は3号館建設。第2期は西館の解体と1号館北側建設。第3期は本館西側解体、1号館南側建設。第4期は本館東側解体と、外溝整備です。
診療を継続しながらの工事だったので、建物の半分を工事、残り半分で診療。工事が終了したら、これまで診療していた場所を工事するという難しい作業を強いられました。
とても困難なミッションを完遂してくれた山下設計や戸田建設には、たいへん感謝しています。
新病院の救急外来は以前の1・7倍、救急病棟は3倍に拡充するなど救命救急センター機能を強化しました。院内バリアフリー、病室の拡大などで快適性が向上しました。
新たに完成した1号館は地上8階、地下1階建てで、制震構造。3号館は地上10階建ての耐震構造です。
災害発生時には1号館1階のエントランスホールから外来スペースまでをトリアージスペースにします。また会議室、廊下などは診療スペースとして使用できる環境を整備しています。
東海地震は、いつ起きてもおかしくないと言われています。その時に病院機能が損なわれるようなことがあってはなりません。静岡県の災害拠点の役割を担うことが、私たち赤十字病院の使命なのです。
◎充実の教育体制
「救命救急」「地域連携」「災害医療」「教育・研修」この4項目のさらなる強化を掲げています。
まず「救命救急」の要である救命救急センターでは24時間体制で高度医療を提供。「断らない診療」を実践しています。その結果、昨年の救急車の応需率は95%で市内救命救急センタートップです。
二つ目の「地域連携」について言うと、当院は地域医療支援病院の指定を受けた急性期病院です。地域の医療機関から紹介された患者さんや、救急搬送された患者さんに対して専門的な治療をして、症状が安定したら、かかりつけ医、リハビリ病院、在宅などにつなげる「地域完結型医療の懸け橋」の役割を担っています。
三つ目は「災害医療」。前述したように災害救護活動は赤十字の使命です。地震や台風などの大規模災害への迅速な救護活動。県の災害拠点病院として県内および近県で発生した際の傷病者の受け入れやDMATの派遣など、災害救護活動の中心的役割を果たします。
最後に「教育・研修」です。当院は医師臨床研修病院として、年間20数人の初期研修医を受け入れています。来年度は研修医の募集定員13人に対して、35人もの応募がありました。
研修医に対する教育モットーは「主治医になれる研修医」です。当院の臨床研修プログラムは総合内科および救急科研修に重点をおいたものです。「どんな救急患者にも柔軟に対応できる医師」「専門医としての強みをもちつつ、患者さんを総合的に診療できる医師」の育成を目指しています。
看護師育成に関しては、赤十字精神に通じる看護理念のもと「患者さんひとりひとりの"その人らしさ"を大切にしたケアの提供」を目指すとともに、全国の赤十字共通のキャリアラダーに基づいたキャリア形成を支援しています。
2014年から看護方式にPNS(パートナーシップ・ナーシング・システム)看護を導入しました。看護師2人がパートナーになり、お互いの特性を生かした看護体制をとって安全で質の高い看護を提供しています。新人看護師とベテランを組ませることで、新人は安心して仕事に取り組めるというメリットもあります。
毎年多くの新人看護師が入ってきますが、その多くが当院の看護体制に魅力を感じて来てくれています。
◎「強み」を生かす
当院は長所を伸ばして強みを生かそうというスタンスを取っています。
2015年度実績で静岡市内5病院(静岡赤十字病院、静岡済生会総合病院、静岡市立静岡病院、静岡厚生病院、静岡県立総合病院)で整形外科を外来受診した患者のうち、当院を受診した人の割合は、5病院のなかでトップです。
産婦人科は産科専用病床(30床)の運用と県中部でトップクラスの助産師在籍数(正職員33人)による手厚い診療体制が整っています。市内5病院の中で入院、外来のシェア率がトップです。
神経内科は常勤医師7人と市内でもトップクラスの体制で診療しています。こちらも入院、外来ともにシェア率トップです。
血液内科はクリーンルームを16床配備。入院シェア率トップです。
救急科は市内救命救急センターの救急車応需率がトップです。今後も、これら5部門の強みを生かしていこうと考えています。
◎院内で学会開催
11月19日に「第34回日本染色体遺伝子検査学会総会・学術集会」を主催しました。静岡県で初めての開催で、会場は当院を使用しました。最近の臨床系の学会は派手になりすぎている傾向があります。会場がどこかではなく、内容こそが大切です。
来場者にも「アットホームな学会だ」と好評でした。新病院のお披露目にもなりましたし、大成功の学会だったと思っています。
◎目先の損得を考えずに
新年あいさつで職員に「自分が幸せに感じられるようなライフスタイルを選択してください」と言いました。
仕事をするからには働き甲斐をもってほしいですね。幸福感というものは人間関係から生まれるものです。宝くじで一等が当たったからと言って、必ずしも幸福だとは限りません。人から感謝されることで幸福を感じるものです。
環境は自分の力だけでは変えられませんが、考え方を変えることはできます。若い時は目先の損得を考えず、がむしゃらになってほしいですね。「何でこんなことをしなければならないんだ」と思う前に体を動かすことです。その努力は必ず報われるはずです。
日本赤十字社 静岡赤十字病院
静岡市葵区追手町8-2
TEL:054-254-4311(代表)
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