地域に根差し、特色のある医療を
栗整形外科病院は、リウマチ専門医として地域の医療に貢献するとともに,グループ内に多くの施設を備えている。
武内啓理事長にリウマチ治療や四国で初めて導入した体外衝撃波疼痛治療装置について聞いた。
■体外衝撃波治療法
体外衝撃波疼痛治療とは衝撃波を患部に照射する低侵襲な治療法で、主に難治性の足底腱膜炎治療などに用いられます。
この治療法は患者さんにメスを入れることなく治療できるというメリットがあります。昨年の2月にその治療装置「ドルニエ」を購入しました。まだ全国的にも珍しい機械で、四国で設置しているのは当院だけなんですよ。
機械を導入したことで県外や松山市などからスポーツをしている若い患者さんが多く来るようになりました。患者さんの中にはアジア大会の陸上競技で銅メダルをとるようなトップアスリートも含まれます。アスリートの治療は、ただ治すということ以上にパフォーマンスを下げないようにしなければならず、とても気を使いますね。
高齢者の治療ももちろん大事ですが、若いアスリートを治療するのは刺激になります。それは医師だけでなく他のメディカルスタッフも同様だと思います。
今後、大規模病院とわれわれが渡り合っていくためには当院ならではの特色を打ち出していかなければなりません。地域に根ざした医療をしていきたいという思いは当然ありますが、それに加えて体外衝撃波治療を受けに来る患者さんの治療にも力を入れていきたいですね。
■2本の柱
この病院に来た当初から考えていたのは、いかにほかの病院と差別化し、当院ならではの強みを打ち出すかということです。試行錯誤の末に思いついたのがリウマチ医療でした。
当時からこの地域には一定数のリウマチ患者の方がいらっしゃいました。10年前にリウマチを専門にしていた同級生医師に手伝いに来てもらったことで、リウマチ患者が一気に増えました。
その後、道後温泉病院(松山市)からも医師を派遣してもらい、今ではリウマチ治療は当院の治療の柱となっています。
10年前と比べて、当院のリウマチ患者数は3倍に増加しました。今では「この地域のリウマチ治療は栗整形外科だ」と言われるまでになりました。リウマチ治療と体外衝撃波治療、この2本の柱ができたことで当院ならではの特色を打ち出せているのではないかと考えています。
■骨粗しょう症への対応
リウマチと密接に関連するのが骨粗しょう症です。今は生物学的製剤がありますが、昔はステロイドを使用していました。あくまでも症状をおさえる薬で、長期間使用すると効き目は減弱してきます。また、副作用として糖尿病や骨粗しょう症を発症します。リウマチの患者さんを診ていると、ステロイドの副作用による骨粗しょう症患者がいかに多いか分かります。
現在は、リウマチ治療と併せて骨粗しょう症治療にも力を入れています。 当院には現在8人の骨粗しょう症マネージャーが在籍していますが、他にも取得希望者がいますので、当院としてもバックアップしていく予定です。受験資格は、医療に関する国家資格を有するメディカルスタッフですが、地域で求められている医療を提供するには必要不可欠な存在だと考えています。
■転倒予防指導士の誕生
今年、3人の介護職員と1人の理学療法士が日本転倒予防学会が認める転倒予防指導士の資格を取得しました。併設する介護老人保健施設の入所者が大腿骨頚部骨折をしたことが取得のきっかけとなりました。
今後も同様の事例が起きないとも限りません。当法人には介護老人保健施設、グループホーム、サービス付き高齢者向け住宅、ショートステイなどを備えています。これほど多くの施設に高齢者が入所していれば、骨折が起こる確率は必然的に高くなってしまいます。
施設での骨折をゼロにするにはどういうアプローチをすればよいか。高齢者で骨折しやすい人は骨粗しょう症の人が多いので、骨粗しょう症対策チームをつくりました。しかし、骨粗しょう症の薬を服用していても骨折する人はいます。
昨年10月に転倒予防学会学術集会に出席したときに転倒予防指導士の存在を知りました。転倒予防指導士は転倒予防の現状と転倒後の外傷、転倒のリスク評価、運動療法について学びます。さらに、転倒に関係する疾患や認知症者の転倒予防、病院、福祉施設および地域社会での転倒予防方法について学ぶのです。
高齢者の骨折は病院の中よりも施設での骨折が多く、その予防のために転倒予防指導士が果たす役割はとても大きなものだと思います。
介護職のみならず事務職からも転倒予防指導士の取得をめざしていますが、7月30日・31日に行われた、第3回転倒予防指導士基礎講習会に当グループから介護スタッフ4人が参加し、新たに4人の転倒予防指導士が誕生しました。
■目標設定が重要
スタッフはみなさん縁あって来てくれているわけで、できるだけ長く勤めていただきたいと考えています。
そのためには業務がマンネリ化することは避けなければなりません。毎日同じ業務の繰り返しでは面白くないでしょう。
スタッフのモチベーション維持に目標設定は必須です。その目標とは達成が不可能な大きなものではなく、実現可能な目標です。
日ごろはなかなか照れくさくて言えませんが、私は「スタッフは宝」だと思っています。今後もスタッフと力を合わせて栗整形外科病院並びに関連施設をより良い病院・介護施設にしていきたいですね。